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師弟対決

「なんだ、機械人形を相手に家族ごっこでもしているのか?」


「千代は人形じゃありません」


「こいつらからは生き物としての反応を感じない。いくら斬っても怯まず、感情がない」


「千代たちは私たちは違います。でも、生きているんです」


「お前とは昔から価値観が合わないな。なんだ、その二刀流は? 昔みたいに俺の真似をしているのか? 魔力の使い方が下手なお前じゃ、二本の刀は扱えないと教えたはずだが?」


「いつまでも昔の私だと思わないことですね。……師匠、昔よりしゃべるようになったんじゃないんですか?」


「……こっちに来てからジンブの言葉を使わなくなったからな。懐かしいのかもしれん。(うつり)に免じて、見逃してやってもいいが?」


 それは慈悲からではなく、私には戦う価値がない、と言いたそうでした。

 確かに私は師匠に勝ったことなんて一度もありません。

 勝負にならなかったことは認めます。

 でもそれは昔の話です。


「舐めないでください。ここであなたを倒して、ケジメをつけます」


「やってみろ。あまり絶望するなよ」


 師匠も刀を抜きました。

 しかし、腰に掛けた刀はもう一本あります。


「刀を二本、使わないんですか?」


「お前程度に二刀流は必要ない」


「…………後悔させてあげます。魔陰双流攻法ノ一『ヌキサキ』!」


 二本の刀での連撃を繰り出して、師匠に攻めかかります。

 押し切るつもりでした。


「えっ?」


 師匠は表情を変えずに私に接近しました。

 私の刀を、自分の刀で受けることもせず、避けて私に接近したのです。


 私は一旦、距離を取ります。


 直後に師匠の刀が私のいた場所を空振りました。


「いい判断だ。もし、あと少し退くのが遅れていたら、首が飛んでいたな」


 私は自分の首から出血しているのを感じました。

 大したことはありません。

 掠った程度です。


 でも、私の心は大いに騒めきました。

 アイラにだって、ガンフィールにだって見切られなかった『ヌキサキ』を初見で簡単に対応されたんです。


「お前、ガンフィールを斬ったのか?」


 師匠は恐らく、私の刀に残っていたガンウォールの魔力を感じたのでしょう。

 私がガンウォールと交戦したことに気付きます。


「だとしたら、何ですか? 師匠が負けた相手に私が勝ったことに驚きましたか?」


「別に驚きはしない。確かに俺は負けた。だが、もし魔力が半分も残っていたら、俺が勝っていただろう」


「えっ?」


「ガンフィールと戦う前にあいつの直属の近衛隊を斬りまくったからな。我ながら情けない。あの程度の敵に負けるなど……」


 師匠が嘘を言っている様子はありません。

 昔から見栄などは張らない人です。

 本当に竜人族の、しかもガンフィールの精鋭と戦った連戦の末、ガンフィールに負けた。

 だとしたら、一騎打ちなら、あのガンフィールに師匠は勝っていたということですか?


「で、お前は何人がかりでガンフィールに勝ったんだ?」


「えっ?」


「お前程度じゃ、ガンフィールに勝てないだろう」


 それは真実です。

 だから、何も言い返せません。


「師匠は本当に口数が増えましたね。勝った気にならないでください!」


 私は攻めました。

 受けるのは苦手です

 勝てるとしたら、攻め続けるしかありません。


 それなのに…………


「確かに少しは強くなったようだな」


 師匠には一度も刀が当たりません。


 鍔迫り合いにもなりません。

 師匠は簡単に私の攻撃を躱して、私に攻撃を与えてきます。


 私は一方的に魔力と体力を消耗していきました。


 嘘です……

 こんなはずありません!

 私は姉様が死んでから、必死に修行して、魔陰流の奥義も体得して……


 それにリザちゃんやディアスのおかげで、さらに強くなりました。

 ドラズさんは、私が持つにはもったいないくらい素晴らしい刀を二本もくれました。


 

 しかし、師匠は私の努力や支えてくれた人たちの思いを無情に打ち崩します。



「ぐっ……」


 師匠の刀が私の脇腹を斬りつけました。

 この傷は深いです……


「所詮、お前はその程度か……」


 師匠が私に向けた眼差しは失望でした。


「うわあああぁ!」


「また向かってくるか?」


 嘘です。

 こんなはずありません。

 私は強くなったんです。

 苦戦は承知の上です。


 でも、こんな一方的なはずありません!

 こんな遠いはずありません!


 こんなのあんまりです……


「魔陰双流攻法ノ三『ドンリュ……」


「愚かな弟子よ」


 師匠の動きが見えませんでした。

 直後、私の体に焼かれたような痛みが走りました。


 三、いえ、四刀の攻撃を受けたみたいです。


「なんで……? なんで、まだこんなに差があるんですか!」


「なんでだと? そんなの簡単だ。お前は自分しか見ていない。相手の動きを見ていない」


「そんなことありません! 私は師匠の動きを見て……」


「お前は魔力の流れを見ているのか?」


「えっ?」


「身体強化魔法は動く前に必ず魔力を使う。相手の魔力の流れを感じ、相手の動きを先読みする。それが出来ない相手など恐れるに足りん」


 相手の動きの先読み?

 魔力操作の苦手な私にそんなことは……いえ、出来ないこともないです。

 私は魔力操作の達人を知っています。


 リザちゃんは動いている敵にも正確な攻撃をしていました。

 リザちゃんの戦いの時の感覚は、私の中にリンクや同調(シンクロ)を通じてあります。

 ぶっつけ本番ですが、やってやります。


「まだ戦うか、愚かな弟子よ」


 言われてみると師匠の魔力の流れが少しですが分かります。

 後はいきなり実践できる力量があるかですね。


 こんな時だからでしょうか?

 ハヤテたちのことを思い出します。

 騒がしかったけれど、楽しかった日々。


 いつかまた再会しようと言って別れたあの日のこと。


「そうです。私はあの場所に帰るんです……!」


 私はもう一度、刀を構えました。


「魔陰双流攻法ノ四『ショウリンザン』!」


 ミノワの飛ぶ斬撃とイワジュクの高速剣撃の合わせ技。

 それを師匠の魔力の動きに合わせます。


「ほう……やればできるじゃないか」


 私の一刀は初めて師匠に届きました。

 師匠は頬を斬りつけられ、出血します。

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