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強行突破

 次の日、早朝。

 

 寝る時はとても気持ち良かったです。

 それとは逆に寝起きは最悪でした。


 酷い揺れで頭を壁にぶつけて起きました。


「な、何ですか!?」


 この揺れは尋常じゃありません。

 私は着替えて船橋に向かいました。


 私が到着するとすでにディアスとドラズさんがいます。


「ど、どうしたんですか!?」


 前方には真っ黒い雲が広がっています。


「千代ちゃんの示す方向に進んだら、こうなったのさ」


「大丈夫なんですか?」


「……船長、どうだい? あんたの意見に従うよ」


 レンリスさんは船橋の真ん中の席に座っている初老の男性に尋ねます。


 あの人が船長さん?


「この船なら越えられるでしょう」

と船長さんは答えます。 


「それは何よりだ。しかし、今まで天空都市を発見できなかった理由が分かったよ。私たちだって、好き好んで乱気流の中には飛び込まない。普通は避けて通るさ」


「ということはこれは結界の一種? もうエルバザールの領域に入ったのですか?」


「まだ入ってない」

と千代が答えました。


「あの雲はエルバザールを守る結界の余波みたいなもの」


 余波ですって!?

 じゃあ、本当の結界はどれほどなんですか!


「面白くなってきたね。各員、しっかり持ち場を守るんだよ!」


 レンリスさんが船内放送で叫びました。


 直後、雲の中に突入し、船が大きく傾きます。


「いいね、冒険っぽくなってきた。探知装置に何か反応はあるかい!?」


「今の所ありません!」と船員が答えます。


 こんな状況なのにレンリスさんは楽しそうでした。


「よし、なら最大出力で抜けるよ! 動力部、頑張っとくれ!」


 船を中も外も慌ただしくなります。


 船体が何度も大きく揺れて時間がとても長く感じます。

 それでもやがて光が見えました。


「乱気流抜けます!」


 船員が叫んだ直後、船は雲を突破しました。


 これで安心、と思った矢先です。


「な、何ですか!?」


 また、私たちの前方に真っ黒い雲が現れます。

 しかも今度の黒い雲は時々光を帯びていました。

 どうやら雲の中で雷が発生しているようです。


「エルバザールはあの中」


 千代が黒い雲を指差しました。


「まったく、とんでもない所に来たね」


 レンリスさんは笑っていました。


「前方に高魔力反応を検知! 結界を確認!」

と船員が報告します。


「棟梁、突入して宜しいですか?」


 船長の言葉にレンリスさんは即答で「行きな」と言いました。


「えっ、ちょっと待ってください。あの中に飛び込むんですか!?」


 さすがにあの中は無事では済まない気がします。


「私らを、この船ヒューベリアを信じてくれ。動力部、聞こえるかい!?」


 通信魔道具から「聞いてます」と返答がありました。


「船全体にヒューベリアに防御障壁魔法展開しとくれ!」


 レンリスさんの指示の直後、船全体に魔力が流れたのを感じました。


「さて、行くよ!」


 そして、船は結界の中へ強行します。

 その瞬間、とんでもない衝撃に襲われ、危うく投げ出されそうになりました。


「防御障壁正常! ヒューベリアに損傷無し!」


「上出来だ。一気に抜けるよ!」


 船は強引に雷雲の中に進み、突破しました。


 しかし、私たちの期待は裏切られます。


 雷雲の先には何もありませんでした。


「一体、どういうことだい?」

 

 レンリスさんの視線が千代に向きます。

 

 千代が説明するより前に

「棟梁、これを見てください」

と船長さんがレンリスさんを呼びました。


「なんだい、これは?」


 驚くレンリスさんの後ろから私たちも覗き込みます。


 それはこの船の進行図のようでした。

 雷雲に入る前は真っ直ぐ進んでいたのに、入った瞬間に船は方向感覚を失っていました。

 私たちはどうやら反対側に出てしまったみたいです。


「方位制御盤はどうだったんだい?」


「以上はありませんでした」と船員が答えます。


「結界が全てを曲げている」


 その疑問に答えたのは千代でした。


「どういうことだい?」


「エルバザールは外敵に発見されない為に結界を張っている。結界に突っ込んでも方向を変えられて、弾かれる」


「なるほどね。そうだと分かったら、やることは一つだよ。ヒューベリアはこの位置を維持! 砲塔、聞こえるかい!? 0時方向に魔法大砲発射用意!」


「魔法大砲了解!」


 どうやらレンリスさんはここも強行突破をするみたいです。


「香ちゃん、あたしたちも出来ることをやるよ」


 ドラズさんは甲板に出る扉に向かいました。


「えっ、どういうことですか?」


「香ちゃんには障壁を破壊する方法があるだろ?」


 ドラズさんは私の刀に視線を向けます。


「そういうことですね。分かりました」


「ディアス、あんたはアレを持ってきな」


「分かりました」、と言い、ディアスは走っていきました。


「香ちゃん、ドラズ、気を付けなよ。雷雲の中よりマシだが、風は強いよ」


「はい!」


 私とドラズさんは甲板に出ます。

 少し距離があるのに雷雲の圧力が凄いです。


 直後に船の砲塔から砲撃が開始されました。

 それが効いているかは正直分かりません。


「師匠!」


 ディアスが大筒を持ってやってきました。


「それがとっておきですか?」


「大筒はあたしが作った以外は変わったところはないよ。特別製なのは砲弾の方さ。この砲弾にはガンウォールの角を使ったのさ。威力は試してないから、分からないけどね」


 なんだか、ヤバい気がしますけど、魔法結界を突破するにはそれくらい必要ですね。


 ディアスが構えました。

 次の瞬間、爆発音と共に砲弾が発射され、着弾しました。


 雷雲に小さな穴が出来ます。

 その先に何か島のようなものが見えた気がしました。


「もう一息だね。ディアス、次だよ!」


「師匠、人使いが荒いです。これ、一発、撃つたびにかなり魔力を消費するんですよ」


「気張りな! 男だろ!」


「僕は女です! 怒りますよ!」


 そう言いながら、ディアスは次弾の準備をします。


「さて、あたしたちもやろうかね」


 ドラズさんは戦斧を構えました。

 私もミノワの抜きます。


「魔陰我流攻法ノ五『ハチマンヅカ』!」


「魔陰流特法ノ二『サツウゼン』!」


 驚きはしませんけど、ドラズさんも斬撃を飛ばせるんですね。

 

 私たちの斬撃がさらに穴を広げて、そこに船からの砲撃を加わります。


「ディアス、仕上げだよ」


「もう、これを打ったら、僕、魔力は無くなりますからね!」


 ディアスはもう一度、大筒は放ち、倒れます。


「さて、船内に戻るよ。ほら、しっかりしな」


 ドラズさんはディアスを担ぎました。

 私もドラズさんの後を追って、船内に戻ります。

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