最後の選択
地下室の空気が、ますます重く感じられた。祐一と紗香は、制御パネルの前で必死にボタンを押し、スイッチを切り替えようとしていた。だが、執事の言葉が耳に残り、焦燥感が二人の心を締めつける。
「お前たちには、無駄な努力だ。」執事の冷徹な声が響く。
「どうして…こんなことを?」紗香は問いかけた。彼女の目は必死に制御パネルを操作する祐一に向けられていたが、彼の手も震えている。
執事は、静かに歩み寄りながら、笑みを浮かべた。「人類は何度も過ちを繰り返す。しかし、我々がその過ちを正すことができれば、すべてが新しい時代へと進化するのだ。」
祐一は、執事の言葉に耳を傾けることなく、ただひたすらにボタンを押し続けた。「それが、他人の命を犠牲にしてまで進化させる価値があるのか?」
執事は、無言で祐一を見つめた。その視線には、何もかもを超越した冷徹さが漂っている。
「命を救うことができるなら、何でもやるべきだ。それが、私たちの選択だ。」祐一は、きっぱりと答えると、再びボタンを押した。
だが、制御パネルから何も反応は返ってこなかった。祐一は、力を込めて押す。だが、それでも、装置は止まらない。むしろ、その回転速度が増し、周囲の空気がますますひどく震えてきた。
「これじゃ、間に合わない…」祐一は、焦りの色を隠せず、つぶやいた。
紗香は、冷静に頭を働かせながら言った。「これが動いている原因は、あの古代生物の復活にあるはず。執事が石化したのも、その生物と関係があるはずだわ。」
「その生物が目覚めると、世界が壊れるんだろう…」祐一は息を呑んだ。「でも、どうする…」
その時、ふと、祐一の目に光るものが映った。地下室の隅に、見覚えのある古い書類が束になって置かれているのが見えた。紗香もその光景に気づき、すぐに駆け寄った。
「これだ…この書類!」紗香は、それを手に取ると、素早く中身を確認した。「ここに、装置の起動方法が…!」
「それは、どういうことだ?」祐一が駆け寄り、書類を覗き込んだ。
「これが…装置の起動コードの一部。そして、停止コードも記されている。」紗香は、ページをめくりながら説明した。「でも、完全に停止させるには、最終的に生物が封じられていた場所のコードも必要ね。」
「封じられていた場所…?」祐一は、眉をひそめた。
紗香は頷きながら言った。「あの生物、地下深くに封じられていたはず。それが復活することで、装置が起動したの。」
「どこだ?その場所は?」祐一は目を輝かせた。
「それが…ここに記載されているのは、古代の遺跡に関することよ。」紗香はしばらくページをめくり、ついにその場所を指し示した。「これだ。地下に埋められている封印が、場所を示している。」
「地下…深く?」祐一はその言葉に驚きつつも、すぐに考えた。「分かった、すぐにそこを目指す!」
だが、執事の声が再び響いた。
「無駄だ、全てが決まってしまった。」執事は、静かに歩み寄りながら冷たく言った。「君たちはもう、手遅れだ。古代の力は、止められない。」
その言葉に、祐一の目に決意が宿った。「いや、まだ終わっていない。お前の計画を、止める。」
執事はその言葉に微笑んだ。「君が何をしても、私は止められない。だが、君たちには選択肢が一つある。」
「選択肢?」祐一が尋ねた。
執事は静かに答えた。「私がすべてを終わらせる前に、君たち自身でその装置を使って、自分たちの命を犠牲にするか。それとも、この世のすべてを失っても良いと覚悟を決めるか。どちらかだ。」
その言葉に、祐一と紗香は静かに顔を見合わせた。
「どんな選択でも、俺たちは一緒にいる。」祐一は言い放った。




