もう一人の“柚山紗香”
モニターに映る静止画。
そこにいる少女は、紛れもなく柚山紗香にそっくりだった。年齢は10歳前後。表情は硬く、無言のままカメラを見つめている。
「……私じゃない。でも、私に……似すぎてる」
紗香がつぶやいた。
祐一も画面を凝視しながら、慎重に言葉を選ぶ。
「もしこれが——君の“クローン”だとしたら?」
「あるいは、双子……?」
玲奈が補足するが、紗香は首を振った。
「母は私を一人しか産んでないって……言っていた。小さい頃からずっとそう聞かされていたの。双子だったなんて話、聞いたこともない」
モニターが自動で再生モードに切り替わる。
映像の中では、少女が何かの装置に座らされ、医師と思われる数名が血液を採取していた。
そして、その血液を別室へと運び、巨大な培養装置に注入する。
その装置のラベルには——
《Project OROCHI:試作復活個体収容室》
「……“オロチ”?」
祐一が小さく呟いた。
画面が切り替わり、黒江博士の声が響く。
「被験体α-07、反応良好。血液から抽出した因子により、石化個体“Spino-Gamma”に生体反応が発生。今後も継続的に因子を採取・補充する必要がある——」
「スピノ……スピノサウルス……」
玲奈が口を覆った。
祐一が即座に推理を口にする。
「この子の血液を使って、石化したスピノサウルスを“生き返らせよう”としていた。だとすれば、この少女——つまり君に似た子は、“キー”だった」
「でも、なぜその子じゃなく、私が今まで……生きてきたの?」
紗香の声はかすれていた。
「……わからない。けれど、君が事務所を継いだ“そのタイミング”で、この計画も再起動しはじめているように見える」
その瞬間、端末に新たな通知が表示される。
【警告:封印状態にあった“Spino-Gamma”が反応を開始しました】
三人の間に緊張が走る。
祐一が即座に動いた。
「この研究所、まだ“機能”してる。……急ごう。何かが目覚めようとしてる。だが、それは——まだ完全ではない」




