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(四)-2
悦子には聞いたことのある声だった。恋人の青井岳だった。
「岳!」
悦子がそう言った。
すると、発砲音が一回鳴り響いた。悦子の右隣にいた芙美恵が倒れて壁にもたれかかり、そのままの状態で地面に崩れ落ちた。
悦子がそちらを見ると、芙美恵は頭を撃たれていた。狙撃だった。
「三人だけか」
岳が尋ねて来た。「そうだ」と悦子は答えた。
「もっと大勢引き連れて来てくれることを期待したんだがな。思い通りにはいかないか」
「何を言っている!」
「ちなみに俺の名前は青井岳ではない。錦江隼人だ」
(続く)




