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商人貴族~僻地で始める国家改革~  作者: ふぃん
第7章 ラプラスは地獄を見た 中編  最狂王レオ
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撤退(2)

見晴らしのいい平野。ここ2か月の雨によってすっかり湿原に変わっていた元平野。

ここでついにレオと東辺境伯が激突した。


レオ軍の長所はほとんど消え去っていた。地面がぬかるんで不安定になっているため、馬に乗って戦えない。大雨で武器が腐り、弓矢のような遠距離の攻撃ができない。しかも、ここ数か月の大雨で疲れ切っているし、東辺境伯側は兵力が2倍以上ある上に地の利もある。


しかし、レオの兵士たちは誰一人として絶望していなかった。


「うぉらああ」


クーレオが一喝して斧を振ると敵が数人まとめて吹き飛んだ。

城で十分に精気を高めていた辺境伯軍であったが、逆にレオ軍によって押し返される。レオの兵士たちは常備軍だ。彼ら一人一人が騎士と同等の実力を持つため、傭兵や徴兵、志願兵を中心としている東辺境伯軍に対して兵力差をものともせずに戦っていた。


「むう。さすがはレオの兵士たちだ。長雨で十分に弱らせることができたと思っていたが、、」


辺境伯は馬上で渋い顔を見せる。


「アーク様!私の真後ろの2歩先の位置に居てください。私がどんなに動き回ってもです。」

「分かった。」


人数的にレオの側で戦う必要がない人間などいなかった。全員最前線である。当然、アークたちのところにも敵が殺到する。ユリアはアークを守りながら敵を倒していく。アークから見るとユリアはまるで踊っているようだった。

頼もしい。アークはユリアから離れないように必死について行きながらも、彼女が美しく舞っているのを見惚れながら眺めていた。



次第に辺境伯の軍に動揺が広がる。

なぜ勝てないのだ。しかも押され気味だ。兵士一人当たりの実力に大きな差があるのだ。


敵がこのように士気を下げ始めたらレオたちにとってチャンスだ。もう一押しすれば戦線は崩壊するだろう。


わああぁぁ


レオの兵士たちが気合を入れ直した時、左の方向からかすかに声が聞こえた。そして、多くの人影がこの戦場に向かってくるのが見えた。


新しい部隊だ。


敵か味方か。

いや、味方であるはずがない。レオに味方などいないのだ。


辺境伯が興奮しているのか、少し上ずった声で言う。


「いやあ、焦ったのう。まさかこのまま押し切られるかと思ったわい。だがな。わしはここに来る直前に部隊を二つに分けたのだ。レオがどこに逃げたのか分からなかったからな。だがこれで安心だ。」


そして勝ち誇ったように剣を空に掲げ宣言した。


「終わりだレオ。」


「陛下!このままでは全滅です。撤退のご決断を。」

アークは最前線で戦っているレオに進言する。


「ああ、そうだな。」


おそるおそるの進言だったが、レオは意外とあっさり頷いた。

武人に進言は無駄だったか。アークに言われるでもなくレオは分かっていたのだ。


「おいテメエら。隣近所の奴とじゃんけんしろ。勝った奴は俺と一緒に離脱。負けた奴は敵を10人殺すまで付いてくるな。俺の家でまた会おう。」


戦場に一言そう絶叫し、レオは離脱した。アークとユリアもレオのあとを追って離脱する。

そして、レオと入れ違いのように辺境伯の別部隊が戦場に合流した。


戦場はますますの激戦となった。しかし、戦場に残っているレオの兵士たちは半減して約千人である。徐々に辺境伯側が優勢になってきた。


それでもレオ軍は崩れない。とっくに10人の敵を倒したにもかかわらず、依然残って戦ている者や、本来はレオと離脱するべきなのに残って戦う兵士たちがいた。


「しつこいのお。さっさと崩してレオを追いたいんだが。」


辺境伯が少し苛立ちながら戦いを眺める。


「じゅうろーく、じゅうしーち、じゅうはーち」


突然、辺境伯の耳に子供の声が響いた。そして、兵士たちをバタバタと倒して一人の少年が辺境伯の前に立つ。彼の顔は血で真っ赤に染まっているが、すべて返り血だろう。


「じゅうくー。もう前が見えないや。」

「なんじゃ子供か。」

「子供じゃないよ。レオポルドだよ。おじちゃんを倒すとちょうど20人だから、最後に殺して離脱しようかな。」

「ふん。ガキが。」


辺境伯を守ろうと騎士たちが前に立ちふさがる。


「領主様。ここは私が。」

「いや、自分でやる。人殺しは定期的にやらんと腕が鈍るからのう。」


辺境伯は侮っていた。

所詮は子供だ。それに自分の腕にはまだまだ自信がある。



辺境伯は馬を走らせた。

すると少年は目にもとまらぬ速さで弓矢を取り出す。


てっきり斬り合いになると思っていた辺境伯はあっと驚いたが、少年は弓を捨てた。よく見ると弓が壊れている


「脅かしやがって。」


「死ねえええ」


辺境伯は槍を構えて突進する。若い頃は盾さえ貫いた槍だ。敵兵を何人も刺したまま戦い、串刺し公と呼ばれた男である。この槍を防いだ者は記憶にない。


だが、レオポルドは槍に刺される直前、くるっと回転して槍をかわした。


「なにい!?」


体が小さな彼だからできた回避だ。そして、馬と衝突しそうになりながらも飛び上がる。辺境伯とレオポルドの顔がお互いの口臭が分かるほどに近づく。


レオポルドはニヤッと笑う。


「弓がなくても矢って使えるんだよね。これあんまり知られてないけど。」


そして、手に持った矢で辺境伯の首を突き刺した。


「ぐあああああああ」


辺境伯は馬から転げ落ちた。


「領主様ーー!!!」


「まあちょっと寿命が縮まった不運なことだと思って。よし、離脱っと。」


悲鳴を上げて駆け寄ってくる騎士たちを見ながら、レオポルドは余裕な表情を見せて離脱しようとする。


「待て。」


突然足首を掴まれた。

息も絶え絶えな辺境伯がレオポルドを捕まえたのだ。そしてそのまま引き倒され、羽交い絞めにされる。瀕死とは思えないほどの怪力だ。


「なっ首を刺したのに。」

「少しくらい息があっても良いではないか。」

「は、離せ!離して!離してよ!」


レオポルドは手に持った矢で辺境伯を突き刺しながら必死に抵抗したが、辺境伯は力を緩めない。そしてにかっと快活に笑ってレオポルドの耳にささやいた。


「お前も道連れじゃ。」

「いやだー!いやだー!死にたくないーーー!」

「なあに。ちょっと寿命が縮まった不運なことだと思って。のう?」


子供のように嫌がるレオポルドが追いついてきた騎士たちによって刺され、ボロ雑巾のようになったことを確認して、辺境伯は息を引き取った。



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