↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
商人貴族~僻地で始める国家改革~  作者: ふぃん
第7章 ラプラスは地獄を見た 中編  最狂王レオ
PR
81/286

王都の大火

ミカンダで大学が設立されて本格的な教育が始まった頃、王都ホリヌスは燃えていた。


きっかけは些細なことだった。王都に残っている民衆が苦しい生活に耐えきらずに反乱を起こしたのだ。反乱と言っても200名程度の小規模な暴動だった。


この暴動はレオの兵士たちにあっという間に鎮圧されたが、その過程で火事が起こった。炎は風に乗って王都は炎に包まれた。


この悲劇的な災害を王宮から眺めていたのはレオだ。彼はワインがたっぷりと入ったグラスを掲げながら、炎に包まれている市街地をうっとりと眺めていた。そこへクーレオが慌ただしく報告に来る。


「すぐに鎮火にあたらせます。」

「そう急ぐ必要はない。」

「はい?」

「美しい光景だな。」


レオはごくりと飲み干したグラスにワインを注ぎながらクーレオの方に振り返る。窓から差し込んでくる炎の光がレオの横顔を不気味に照らした。


「お前は『炎の海』という言葉を知っていると思うが、海を見たことはあるか?」

「いえ、、、」

「俺はある。一面が穏やかで下が見えないほど深く、果てが見えないほどに広い。その自然の雄大さに胸を打たれたものだ。」

「はあ。」

「『炎の海』とはよく言ったもんだな。確かに果てが見えず、オレンジの色が一面に広がっている。美しい。あまりにも美しい。だが、夜景は一層美しいんだろうな。」


そう言いながらレオは燃え盛るしばらくうっとりと眺めていたが、一つ頷いた後「決めた!」と大きな声を出した。


「おい。夜まで火を消すな。今夜はこの炎で晩餐を取ろう。消火しようとする民がいたら殺せ。」

「か、かしこまりました。」


鶴の一声でレオの兵士たちは消火活動を停止した。それどころか消火しようとする市民を妨害し、火が燃え広がるのをそのままにしておいた。

当然のことながらたちまち火は燃え広がった。はじめのうちはひとつの区画で燃えていた火は1か所、また1か所と燃え移っていく。


数時間経つ頃には王都の東半分が炎に包まれていた。

焼け出された民衆は逃げ惑い、消火しようとした市民は殺された。道路の脇にはあっという間に人々の死体が折り重なった。



そんな中、王宮に一人駆け込む少女がいた。皇女マリーである。

レオが王都に来てから教会に身を寄せていたが、消火活動を一向にしようとはしない兄に我慢できず抗議にやって来たのだ。


マリーが王の間に来た時、レオは幹部たちと宴会をしていた。


「レオ兄さま!」

「ん?ああ。カサブランカではない方の妹か。」

「マリーです。いい加減に覚えてください。」

「何の用か。」

「現在、町が燃えています。この王宮からも見えるでしょう!」

「おう。それがどうかしたか?」

「兄さまの兵士が鎮火しないどころか、次々に家を燃やしています。一刻も早くやめさせてください!」

「どうしてだ?」


何でもないように淡々と会話を続けてくるレオに対して、マリーは徐々に顔が青くなってくる。全く話が通じない、というより自分とは別の世界の人間といったような印象を持ったのだ。


「どうしてって、、あなたの兵士は火事に乗じて家に上がり込み、強盗や虐殺も起こっているのですよ!」

「ああ。暴動の芽を完全に積むために疑わしいやつは全員殺せと命じている。その過程で家の財宝は奪ってもよいとした。兵士たちのモチベーションになるからな。」


あまりにも予想外の言葉にマリーは唖然とした。そんなことのために強盗をされたらたまったものではない。


「モチベーションって、、あなたはそのためだけに虐殺と強盗を」

「おい!」


レオの大声が響いた。

マリーはビクッと体を震わせる。


「お前は説教を言いに来たのか?用件をさっさと話せ。」


誰かに怒鳴られたことなどこれまで一度も経験したことがないマリーはもう泣きだしそうだった。あまりの恐ろしさにレオの顔を見ることができないが、それでも必死に訴えかける。


「わ、私は皇女であり神に仕える身として現在の火事と兵士の横暴を止めていただきたく、、」

「分かった止める。」

「えっ」


思わず顔を上げたマリーの顔面に何かが当たる。レオが食べかけていた果物を投げつけたのだ。


「とでも言うと思ったか?そんなこと言われただけで大人しく止めるのならば、初めからやっているわけがないだろう。」

「私は説得のために!」

「だからあ」


レオは苛立つように語気を荒くする。物事の捉え方が根本から違う二人ではうまく会話にならない。


「ダメだダメだと言うだけで説得できるわけがないだろう。お前は皇女の立場だったから自分の言うことをみんな聞いてくれる人生だったかもしれんが、交渉というのはそうじゃねえんだよ。俺に止めさせてほしければ、何らかの材料を提示しろ。俺が止めさせるメリットはなんだ?」


一気にまくしたててくるレオにマリーは何も言い返すことができない。

押し黙ってしまったマリーを見て、レオは心底呆れたようにため息をついた。


「俺はお前のことを寡黙で知的な妹だと思っていたのだがな。ただの無口な馬鹿だった。」


マリーの心が凍り付いた。それと対照に頬は屈辱でかっと赤くなる。怒りと悲しさと自分への情けなさでマリーの気持ちはぐちゃぐちゃになってしまっていた。


「し、失礼します。」

「ああ。お前も気を付けろよ。」


泣き声にならないように必死に抑えた声を出しながら退出しようとするマリーにレオは何でもないように付け加えた。


「民を守ろうとする姿勢は立派だが、他人事だと思っているようだ。犯されないように気を付けろよ。俺の兵士は馬鹿だから王家の紋章とか分からんぞ。」


その言葉に思わずマリーが振り向く。

マリーの顔がおかしかったのか、レオとその部下たちがどっと笑った。笑い転げている部下もいる。


「そんなに怯えた顔をすんなって。おい、そこの女。教会にまで送り届けてやれ。俺の大事な大事な妹だからな。」


笑いすぎて少し涙が出ているレオだが、同時に心底軽蔑にしたようにマリーを見ると、女の部下に命令した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。