旧領民たち(6)
第4都市の町長は冒険者代表のリシュー、副町長は商人代表のハウサになった。
どちらを町長にするかはかなり迷ったが、これからしばらくは第4都市を開拓しなければならないため冒険者が中心になるということ、リシュ―は冒険者だけではなく商人たちからも人望があることからリシュ―を町長にすることにした。
出発式でアークはリシュ―に頭を下げる。
「じゃあ第4都市のことよろしく頼む。何かあったら、すぐに第1都市まで知らせてくれ。領主として最大限の援助を約束する。」
アークは領主としてあちこちを飛び回ることが多い。第1都市にはテュールが常駐しているので、彼に対応してもらうことになる。
リシュ―は特に緊張することもなく、いつも通りにへらへらしていた。
「まあ、冒険者という職業は『何でも屋』みたいなものだからさ。心配しなくていいよ。職人の人が来てくれる前に、簡易的な港と家屋を造ればいいんだろう?幸い冒険者も多いから何とかなりそうだよ。」
「リシューは本当に頼もしいな。改めてミカンダに来てくれてありがとう。」
「ふふ。どうしたんだい?しんみりと本心なんか語っちゃったりして。君らしくないじゃないか。」
いつもの調子でからかってくるリシュ―にアークは少し本音を語りたくなる。駆け出しの商人だった頃、大変なことやつらいことがあった時はいつもリシュ―に話を聞いてもらっていた。
「俺もだいぶん疲れていたのかもしれない。いきなりこんな田舎に領地が変えられて、そこから息つく暇もなく改革、改革、改革だった。久しぶりにリシューに会えて少し甘えたくなったのかもしれない。」
「そんなことか。アーク君にはこのリシューお姉さんが付いているからもう心配しなくていいよ。」
からかっただけなのに急に本音を語り始めたアークに少し驚いたようだったが、彼女はアークを優しく慰める。領主の頭をポンポンする冒険者はなかなかいないだろうが、ためらわずにリシュ―はアークを撫でた。これも当時と変わっていない。弱っているときにこれをされた少年アークはあっさりとリシュ―に堕ちてしまったのだ。
「よしよし。今までよく頑張ったねぇ。」
「そこまで子ども扱いするな。」
「なんだい。甘えたくなったと言ったのは君の方じゃないか。」
アークはしばらく顔を彼女にうずめながら周りを確認する。
よかった。ミネルヴァは来ていない。
リシュ―とすっかり犬猿の仲になってしまったミネルヴァに、今日の出発式には参加しなくていいと言っていたのだが、やっぱり来ていないようだ。もしこれが見られていたら、また大変なことになっていただろう。
そして出発式も無事に終わり、総勢50名の第4都市開拓団は馬に乗る。他の都市に比べてとても人数は少ないが、みな商人や冒険者として実力が十二分にあるものたちだ。リーダーがリシュ―であることもあり全く心配していない。
見送るアークに対して先頭のリシュ―が手を挙げた。
「ほんじゃあ行ってくるよ。」
「ああ。みんなと第4都市をよろしく頼む。」
アークは開拓団が見えなくなるまで見送っていた。




