糸口
いやいや待て待て。
ガチで隠れチート?黒なんて色をごちゃ混ぜにするか、闇属性の加護を受けてないと出てこないよ。まさかの闇属性微レ存?てか本編でも魔物にしか出てこないじゃん闇属性。わたし薄紫色の髪だし、マジで本編で匂わせも何も無かったんなんなの。
しかもサラやお父様の話ぶりからして、聞かなきゃ話さない「隠してるつもりはないが聞かれなかったから言いませんでした〜」っていうアレでしょ。絶対。そんで本人も自分の力について知らず、いざとなった時に「こ、これが私の力・・・?!」ってなるパターン。
まぁリベルサはそんな展開にならないでデットエンドしちゃったけど。
聞く限り魔力は増え続けるらしいし、これひょっとしたら自滅パターンあり?制御しきれないでバーンと派手に。
ただでさえ本編が不穏なのに、いやまず、なんとかしてお母様を治したらこの先面倒くさい事になるんじゃ・・・。
考えれば考える程、平穏からビジョンが遠ざかっていく。
まぁお母様を救わないという道は一切無いが。
「うそでしょぉ・・・」
「本当ですよ。無属性です」
「え?」
「いや、私も初めて見るのでちょっと戸惑っているんですが、無属性です」
・・・んーなんか話が噛み合ってないな。
サラは困った顔で私を見てるし。
次いで鳥のさえずりが小さく聞こえた。
今何してるんだっけ。
あー、魔力判定中だった。
サラから黒髪だの金色の瞳だのの話を聞いた後、色変わり記念ということでとりあえずやってみよう!の方向に切り替わり敷地内の湖にて判定してもらっています。
ちなみにナイトレイ家はとんでもなく広かった。
屋敷を囲む壁の内側だけで、草原があって、森があって、湖がある。更に壁の外側に広がる敷地は私有地で、なんと街も丸々一つあるらしい。
・・・・私のお父様すごぉい。
そりゃあリベルサの鼻も高くなるわけだ。親の力だけどね。
いやぁ父親が一国の主宰だなんて、凡の凡人の私には未知の次元ですね。
ちなみに湖まで馬車で10分もかかったよ屋敷の敷地内なのに。広すぎ。
わざわざ湖に来たのは、そこがいわゆる聖水だからだそうです。温室に植えてある花々は不純物が無い、魔力を豊富に含んだ水じゃないと枯れてしまうらしく、聖水の湧く土地に屋敷を建てたんだとか。
驚いたのはそれだけじゃなくて、ただのメイドだと思っていたサラはエルフのクォーターだった。これは馬車に乗っている時に聞いた話である。
確か、エルフは魔力の扱いが繊細で、人間には難しい魔法も楽々と使いこなしてしまうらしい。しかし、排他的で多種族との交流を嫌う一族のため人と交わることはほとんどないという。
クォーターとはいえサラの魔法の操作はピカイチだ。晴れの日の裏庭で白いタオルがよく空を泳いでる。
話を戻して。
そして気になる判定の方法は、草と水を媒体に儀式をする簡単なもの。
「ではお嬢様。先ほどお教えした言葉を言ってください」
「うん」
指先に触れる葉と冷たい水の感触を感じながら頭の中の言葉を復唱する。
「我、加護無き者。今場の誓いをもって御身に魔力を与えん」
『今だけだけど魔力あげまーす。加護ないのでもらっても大丈夫ですよー』(意訳)を媒体通して周りの妖精に言っているだけ。そしたらバーゲンセールみたいに妖精が集まって、好みだったらもらってくれる=媒体に反応がくる。という仕組みになっているらしい。
ちなみに基本的な属性は9種類。炎、水、草、風、土、雷、氷、闇、光。
闇と光以外の属性は人類皆多かれ少なかれ持っていて、判定で“〜属性です。“なんて言われるけど、それが得意ってだけで他の属性が使えないわけではない。水属性の人も火をつけるくらいは出来る。ただ、光属性は王族の血筋のみ持っていて、闇以外の全ての等しく属性を使用する事ができるらしい。反対に闇属性・・・は実例が少ないから分かんないけど、たぶん絶対光と並ぶチート属性だろ、と前世の頭の良い人たちは言っていた。なんか次回作で闇キャラ出てくるみたいな話があったけど、その前におっちんじゃったので分かりません。
反応の仕方は、水が蒸発するのか、草が沈むのか、凍りつくのか、成長するのか、浮かび上がるのか、濁るのか。魔力を持っているなら何かしらのリスポーンがある。・・・のだが。
現状、目の前にはくるくる回る葉っぱに、揺れるだけの水面。ちなみに手を離してもこの現象は続いている。
・・・なにこの変な反応。さっきまでのワクワクはすっ飛んで行っちゃいましたよ。
サラいわく、この状態は純粋な魔力が流れているだけならしい。言い換えれば属性を持たない魔力。
かろうじて揺れているから風かなとも思ったが、手をかざしても何も触れない。
「き、極めて特異な属性ですね。無属性・・・」
テンションが下がった私を見かねてフォローを挟んでくれるのはありがたいが、ごめん。特異であっても悲しい。無って、無なんだって。
「無属性となると、精霊が属性を持つ前の純粋な魔力。また、神様が使う魔力そのものなのである意味原始の魔力とも言えますね。透明であるというのは何にも染まりやすい、かつ、何になるにも抵抗がない・・・と言いますか」
なるほど。無属性の魔力は何からにも好かれるらしい。好き嫌いを出さない万能フードみたいな。
もしかして黒髪だったのは闇属性からの加護か、光属性以外の加護もらって混ざった故に、黒髪になりましたみたいな。
でも、属性をもたないのは最初の二神だけだ、って歴史の先生(攻略対象)が言ってたような。
この世界の動植物は二神によって作り出され、精霊は1番に生み出され、最後に生み出されたのが人間。精霊はそれぞれの環境に影響されて変質し、属性を持ち妖精を生み出した。その後に出てきた人間は、多かれ少なかれ魔力を保持しているが、他の動植物のように使うための器官がなかった。だから私たち人間が魔法を使うためには上位存在である精霊、妖精この二つの存在からの加護を受けないといけないらしい。
ある諸説によると、精霊が属性を持ったことで人間にも影響して、さまざまな属性が混ざり合った魔力になったのではと。
各属性に一体しか存在しない精霊からの加護は力が強く寵愛と呼ばれる。一方、そこら中に存在しているらしい妖精から受ける加護はある一定の数にならなければ加護とならず威力も脆弱である。
人間にとっての外付け魔法行使器官、それが加護。
と、ここまでのゲームの説明を思い出す間約5秒。
まぁ光以外の加護受けちゃっているらしいのは正直おっかなびっくりだけど、これはこれでチート生活を楽しめば・・・・・いやまて。過去漁りまくったチート系ラノベは必ず厄介ごとに巻き込まれるという定番がついていた。家族救ったり、友達助けたり、国救ったり、しまいには世界も救う的な。
いやぁなんともめんd・・・初めてのチートキャラは私には早すぎたようだ。
それにしても何にも染まりやすくて馴染みやすくて精霊に好かれやすいなんてあからさまなチート・・・
いやまてよ。
何にでも・・・・・・・?
染まりやすい・・・・・?
馴染みやすい=抵抗感ゼロ
・・・・・・・・。
「あっ!」
あれー、これってもしかして。
もしかしてのもしかして。
閃いちゃったよ。
使えそーじゃないですか。
お母様の治療に。