第十章 神は試練を与え給う Ⅲ
「ゴオォォォルウウゥゥゥゥーーー!!!」
ピエロDJは叫び、観衆やサポーターたちも絶叫した。
「やったぜ、さすがはオレたちのテンザーだ!」
「テンザーに任せりゃ怖いものなしだぜ!」
「やられた……!」
「あんな見事にロングシュートを決められるなんて」
などなど、双方のサポーターたちは色差をはっきりさせた反応をしていた。
龍介やジェザ、リョンジェたちはテンザーが仲間たちと得点を喜び合うのを唖然として眺めながら歯噛みし。ルーオンの蹴り上げたボールを受け止めて、真ん中に置いて、
「切り替えろ!」
「また取り戻すぞ!」
と仲間や自分を鼓舞して。
ジェザのキックで試合が再開された。
龍介も「やるぞ!」と自分に言い聞かせるが、その一方で、
(なんてレベルが高いんだ!)
と、驚かされてもいた。もちろん悪い意味での驚きだ。
自分が飛ばされたのは、セリエAやリーガエスパニョーラ、プレミアリーグにブンデスリーガなど、ヨーロッパのトップリーグのような、とんでもないところだ、と。
(これで裏天王山なんて、ほんとうに、とんでもないところだ!)
果たして自分は、そんな、とんでもないところで助っ人として役に立てるのか。不安を禁じ得なかった。
しかし、やるしかない。弱気に飲まれるな! と自分に言い聞かせて鼓舞し、ピッチを駆けた。
シェラーンは2対1にされて、無言で固唾を飲んでピッチを見つめるしかなかった。
ヴァサンは静かに微笑み。バジョカ大王はうんと頷く。
ガルドネはいつの間にかピッチの脇に降り立ち、静かに試合を眺めている。
レガインとドドパらベンチの面々は、絶望の叫びをあげたいのをこらえて。必要とあらば、指示を飛ばす。
ルーオンも必要とあらばキーパーの視点でコーチングの声を出す。
サポーターたちも声を励まし声援を送り続ける。
シェラネマーレの選手たちは、力で押すパワープレーでギュスノーヴのゴールに迫った。
しかし、閂と称されるほどの堅守を見せつけられて。どうにかシュートを放っても、すんでのところで止められてしまう。
ボールは飛んだ。
シェラネマーレの選手たちは多少強引にでもボールを奪い、シュートを放ってボールをゴールに飛ばした。
飛ばすたびに、誰かが立ちはだかって、弾き飛ばされた。それを拾って、また無理くりにでもシュートを放って、弾かれて……。
その繰り返しだった。
時計は無情に時を刻むのみだった。




