第十章 神は試練を与え給う Ⅱ
ジェザは相手選手をかわしながらドリブルし、素早く近くに来たギャロンにパスし、自分はさらに前進する。
龍介も同じように前に進み出て、相手選手間に紛れ込むようにゴール前に位置する。
ギャロンは右サイドを駆けるリョンジェにパスし、そこからまた、その前にいるリジルにパスされる。
ギュスノーヴの選手も黙っていない。前に立ちはだかり、進路を妨害し、ボールを奪おうとする。
ゴール前に詰めているのでピッチを転がして味方に渡すのは難しい。が、すかさず迫る影があった。
龍介だった。この中で一番小柄ながら、素早さにかけては一番のようで。まるで猫のような素早い駆け足でギュスノーヴの選手を避けてスラロームでリジルの近くまで来て。
リジルも頼むぞとボールを託すように龍介にパスし。
ギュスノーヴの選手が林立しながら迫るのをスラローム走行で避けながらドリブルし、ゴール前に迫った。
スペースなどない。ギュスノーヴの選手は龍介に迫り、取り囲む。それでも、針の穴のような小さなスペースを目ざとく見つけて、ピッチを滑るようなシュートを放った。
が、相手ゴールキーパーもさるもので、素早く身を倒してボールを掴んだ。
シェラーンは「ああ」と漏れるような吐息で残念がり。ヴァサンは冷静に観戦し。バジョカ大王は笑顔でにこにこと観戦している。
異世界人の龍介もどうにかこの世界のサッカーに対応できるようになっている。
(まだまだ、迷いがあるのう)
ガルドネは少し憂いて龍介を、空から眺めていた。
ギュスノーヴのゴールキーパーからディフェンスへ、ミッドフィルダーへ、ボランチへとボールがパスされ。
前へ、前へと進み。シェラネマーレの選手が後退するより早く、テンザーは駆け。そこに上手くパスが飛んでくる。
上手く受けたテンザーは、まだ距離はあるがルーオンとの間に選手がいないのを見て。このまま行けばオフサイドを取られると判断し、シュートを放った。
ボールは猛烈な勢いでゴールへと飛ぶ。
ルーオンは身構えて、ボールの軌道を読んで、右に飛んだ。が、ボールはそんなルーオンの伸ばされた手の少し上で、バーを直撃した。それから跳ね返って反対方向に飛べばいいのだが、これがそうはいかなかった。
ボールはバーに当たって真下に落ち、ピッチで跳ね返ってゴールの中へ飛び込み、ネットを揺らした。
着地したルーオンは唖然とボールを見つめて固まり。一瞬時が止まったような錯覚を禁じ得なかった。
しかし固まったままではいけないので、ボールを拾い、腹いせのように思いきり蹴り上げた。




