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第十章 神は試練を与え給う Ⅰ

「そうそう。この試合に勝てば、勝利給を弾むとお嬢さまが言っていた。皆、励めよ」

「はい!!」

 さらに威勢の良い返事が返ってきた。


 時間が来て、ピッチに出る。バジョカ大王やシェラーンにヴァサン、ガルドネ、多くの観衆が見守るコロッセオ。

 その昔、古代と呼ばれた時代は、剣闘士グラディエーター が グラディウス をもって闘って。その闘いはエキサイティングで、多くの人々の心を惹きつけ、熱狂させた。


 時が経ち、異世界からスポーツ、サッカーが取り入れられて。人々はそれにも熱狂するようになった。

 観衆のどよめきがコロッセオを包み込む。特にそれぞれクラブを応援しているサポーターの熱狂たるや、他の観衆のどよめきを押しのけるような絶叫でもってピッチの選手を迎えた。


「やるぞ!」

 前半と逆の陣地にて、双方円陣を組んで後半で勝つと意気込み、円陣を解きそれぞれのポジションにつく。

 ぴー! と笛の音がし、


「はじめッ!」

 と、センターのボールをテンザーから蹴って後半が開始された。

 ギュスノーヴはやはりボールを後ろに下げて、それをシェラネマーレが取りにゆくという展開からはじまった。


 龍介は積極的にボールを追い、ジェザも加勢しふたりで追った。

 ボールはギュスノーヴの選手の間を行ったり来たりし、テンザーは相変わらずセンターに位置していた。

 そうすれば、シェラネマーレの選手たちは後ろに下がってゆく。


「小癪な真似を」

 一度ならず二度も同じことをするのか、と思いながらも。テンザーは駆け、ギュスノーヴの選手たちもボールをパスしながら前に出ようとするが。


 ボールの動きを予測し、相手選手間に入って、ボールを持つ選手に迫って。龍介はやや強引にボールを奪った。

 どよめきが強まる。

 相手選手は転倒しそうになったが踏ん張って、取り戻そうと迫るが。咄嗟にジェザにパスした。


「リズムを変えられる事に弱いみたいだな」

 堅守速攻を旨として試合をするせいか、後ろで守ることに比べて前に出る時のリズムはどこかぎこちなさがあった。

 そういう欠点を抱えているが、そんな相手に手こずっている自分たち。


(やっぱりこの試合は裏天王山だなあ)

 と、ふと思った。ひとりひとりの技量はあり、監督もしっかりした戦術観を持っているし。クラブも試合に備えてしっかり準備もしているはずなのだが。本番で生かせない。技量や戦術観以外のところに原因があるのだろう。

 が、そんな論評はお呼びではない。

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