第33話 エンタメ配信で勇者パーティに追いつけ!起死回生のバズリア。
<<【バズリア】エルミアと一緒に筋トレしよう【これであなたも物理エルフ】>>
「あなたの悩みを杖でぽかん! ご覚悟! 物理エルフ、バズリア所属のエルミアです!」
配信画面には岩山フィールドに佇むエルミアが映し出されている。
【コメント】
「エルミアちゃん、やっほー!」
「今日はダンジョン配信じゃないの?」
「筋トレ?」
「僕も物理名人になりたい!」
「皆さん、集まってくださり、ありがとうございます。今日は私の普段の筋トレを大公開しちゃいます」
エルミアは今日の企画を説明すると、ぐっと可愛らしくガッツポーズをして見せた。
「一緒に鍛えて、沢山強くなりましょう!」
【コメント】
「おー、新しい」
「一緒に筋トレしたい!」
「エルミアちゃんみたいになるぞー」
「準備してくる!」
コメントの反応ににっこり笑うと、エルミアは岩山から巨大な岩石をひょいと持ち上げた。
「それではまず、ダンベル代わりにその辺の石をお借りします!」
エルミアは生真面目な様子で丁寧に説明しながら、完璧なフォームで腰をかがめた。
「これを持ったまま――まずはスクワット100回です!」
【コメント】
「脳 筋 エ ル フ ★」
「早速、真似できなくて草」
「せんせー、岩がないです!あっても持てないです!」
「私は一緒にやるわ、エルミアちゃん!@マッスル女将」
「なんかついていけている奴がいて怖い」
「あれ、あっ、た、確かに皆さん、周りに岩がないですよね!?」
エルミアはおろおろしながら、ひとまず岩を地面に降ろす。
ズシイイイン――と重い音が周囲に響いた。
「ええと、私は、何もないときはその辺の倒木や荷車などをダンベルにしていました!」
【コメント】
「????????」
「だめだ、ナチュラルに狂ってやがる」
「可愛いからオッケーです」
「いっそ社長をダンベルにしよう」
「軽すぎるのでは?」
「で、では、今日は一般的なトレーニングから始めましょうか!」
あせあせと、エルミアは荷物から本を取り出す。
「社長さんから、もし困ったら参考にするように、本を預かっていたんです」
【コメント】
「社長有能!」
「ようやく筋トレが始まるぞ!」
「でも、エルミアちゃんルーティンは普通に知りたい」
「筋トレしながら、お話希望!」
「ふふふ、分かりました! では、ご参考までに、私のトレーニングについてもお話しますね。一番鍛えられた実感があったのは、海割りランニングで――」
その後、実際に海を拳で割りながらのランニングを披露した配信は、大いに盛り上がった。
◇ ◇ ◇
<<【バズリア】スラ子のお宝鑑定【あなたの家にも何かあるかも!?】>>
「今日も商売繁盛や。バズリアのお財布担当、スラ子やで!」
【コメント】
「スラ子の配信きた!」
「グッズ買ったよー!」
「お宝鑑定って何だろう」
「枠乙です」
「ふっふっふ。今日は、青空市場にお邪魔してるわ。ここでは冒険者だけでなく、一般の人も、自由に不用品を販売できるんやで」
スラ子は賑わっている市場の様子を画面に映して、説明する。
ちなみに、責任者に撮影許可はきちんと取ってある。
「うちも行商人時代、修行としてよくお宝発掘をしていたんや。今日も掘り出し物、探していくで!」
【コメント】
「楽しそう」
「なんかわくわくするね」
「こんな市場知らなかったなぁ。うちの近くでもしてるかな」
「お宝欲しい!」
「お、早速、発見や! みんな、見て見て!」
スラ子が売り場の前で立ち止まると、ずらりと並ぶ商品の一つへ手を伸ばす。
それは、古ぼけたブローチのようなものだった。
中央にくすんだ赤い石が付いた、簡素な細工のものだ。
――2000G、と値札が付いてある。
【コメント】
「なんか錆びてない?」
「これ2000Gは高い気がするよ」
「2000Gあれば、もっと綺麗なの買えるよね」
「でも、スラ子がわざわざ手に取ったんだよ。何かあるんじゃ」
「ふふ、コメントの君、なかなか鋭いな! スラ子賞をあげちゃうで!」
ニッと笑うと、スラ子はそのブローチに魔力を送り始めた。
「この石は確かに普通に見るとくすんでいるけど、こうして魔力を送ると――」
スラ子の魔力に反応して、ブローチの中心の石がきらきらと輝き始めた。
くすんでいた石は透き通るような色味へと変化し、光を反射して幻想的な揺らめきを見せている。
【コメント】
「おおー」
「めっちゃ綺麗!」
「これ、何か見たことあるな。なんだっけ」
「すごいすごい。きらきらしてる」
「これは魔鉱石の一つ、ガレリウムの結晶や。地底ダンジョンのごく一部でしか発掘されない希少品で、魔力を通すと輝くのが特徴とされているんやで」
ふふんと胸を張りつつ、スラ子は解説する。
「魔力を通さなければただのくすんだ石だから、こうして一般の品に混じって売られていることがあるんや。ガレリウムを輝かせるには、それなりの魔力が必要やからな」
説明しているスラ子の背後に、ぬっと長身男の店主が姿を現した。
「でも、実際にはこれひとつで、5万Gの価値はくだらない――」
「分かりました。では、5万Gに変更します!」
「ぴぎゃ!」
突然、背後からかかった声にびくりとして、スラ子は振り返る。
「なんやて!? そんな横暴な!」
「だって、本来価値のあるものなんでしょう。だったら値札を変えます!」
「そんなんずるいわ! あかんて、あっ、あああっ……!」
店主によって引き上げられていくブローチに、スラ子はがくりと膝をつく。
【コメント】
「スラ子かわいそう…」
「いやでも、店主の気持ちもわかるような」
「ドンマイ。グッズ買っておくから!」
「勉強になったよ。ありがとう」
「ぐぬぬ。こうなったら、スラ子は負けへんで! さっきよりもっと凄いお宝、絶対に見つけたる!」
ざっと立ち上がると、スラ子は天に向かって拳を突き出した。
「よし、みんな、行くで! お宝捜索続行やー!」
◇ ◇ ◇
<<【バズリア】カリーナのお悩み相談【コメントで受付中よ】>>
「私の魅力に跪きなさい。カリーナよ」
ファンシーに飾り付けられた部屋の壁を背景に、椅子に腰かけるカリーナが画面へ映し出される。
【コメント】
「カリーナちゃん、ファンです!!」
「姉御と聞いて」
「可愛いお部屋」
「お悩み投稿しようかな」
「ドキドキ」
「今日は私が悩み相談をする――って不審者に言われたんだけどね。何、本当にそれだけでいいわけ? まあ、良いわ。アンタたち、じゃんじゃんコメント寄越しなさい!」
ふう、と息を吐きながら、カリーナが手にしている紙を持ち上げる。
「まずは一件、事前にきていた悩み相談に答えるわね。ええと、なになに――私には好きな人がいますが、その人に婚約者がいることが分かりました。彼は本命は私だと言ってくれますが、婚約を止める気は無さそうです。愛は感じるのですが、二股状態に疲れてきてしまいました。次の恋を探すべきでしょうか、と」
【コメント】
「ガチ相談じゃん」
「次に行った方が良いと思う」
「浮気は良くないかな」
「おせおせー。奪い取れー」
「良いわ。回答してあげましょう」
質問文を読み終えると、カリーナは眉を寄せてからバン、と机をたたいた。
「今すぐ別れなさい!!」
【コメント】
「男らしい回答で草」
「いや、実際そうだと思うよこれは」
「気持ちいい」
「わかる」
「彼の本命が誰かとか、そんなの関係ないわ。二股継続の時点で、アンタ、大事にされていないのよ。本当に大事な相手に、そんなことするはずないもの!」
カリーナは怒りが収まらない様子で、机をバンバン叩き続けている。
「アンタだって、気づいているんでしょ? だからこんな相談してきたんでしょ? 別れちゃいなさい! 自分の気持ちを偽ったって、良いことなんてないんだから」
ぐっと拳を握り締めると、カリーナは語気を強めた。
「私だって、自分の気持ちを大事にしたら、道が開けたの。アンタにだってできるはずよ。頑張りなさい!」
【コメント】
「姉御!!」
「付いていきます!!」
「背景のファンシー部屋とのギャップに笑う」
「あの、私も質問良いですか?」
「良いわよ。じゃんじゃんしてきなさい」
【コメント】
「カリーナちゃんは、好きな人はいるんですか?」
「ぴぇ」
予想外の質問にカリーナは思わず奇声を発した。
【コメント】
「めっちゃ気になる」
「知りたい、知りたい」
「まさか社長!?」
「いや、エルミアちゃんだよね」
「教えて―!」
「ばばばばば、馬鹿じゃないの、アンタたち! それはお悩み相談じゃないでしょ!」
カリーナは真っ赤になって声をあげる。
こうして、配信は楽しく続いていくのだった。
Fever Gage ★★★★★★★☆☆☆




