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【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?【改訂版】  作者: 綾雅(りょうが)魔王様コミック発売中!
本編

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第48話 秘密の共有をいたしましょう

 夕食まで一緒に過ごし、名残惜しそうにテユ様が王宮へ戻られました。空へ舞い上がった金の竜を見送り、姿が見えなくなるまで手を振ります。


「少しは恋人に近づけた?」


「そうね。少しだけ」


 フランカに笑って返す。朝の不安が嘘のようでした。


「恋に時間は必要ないからね」


 リオ兄様の言葉は当事者の重さがあって、納得してしまいましたわ。初対面の日に一目惚れしたフランカ、彼女の性格を見極めて好きになったリオ兄様。確かに時間は必要ありませんでした。


 私が一夜で恋をしても間違っていないのだわ。婚約破棄から始まって竜の復活や王家の没落など、盛り沢山の一夜でした。私の1年分以上の濃さなんですもの。


 私はもう平気――リオ兄様やフランカのお荷物になったりしないわ。好きな方に嫁ぐことができそうですから、覚悟は決まりました。


「ねえ、リオ兄様」


 何を隠してらっしゃるの。私に知らせずに動くお兄様を、ずっと見てきました。もう私の心配はいらないから、教えて欲しいのです。私はもう、守られるだけの子供じゃありませんわ。


 言葉より雄弁に、覗いた瞳に語りかけます。目を逸らそうとしたリオ兄様の頬に手を添えました。


「後で話すって仰ったのはリオ兄様でしょう?」


 夜の帳が降りた屋敷で、すでに自室に引き上げたお父様は知っているのかしら。


「私だけ知らないなんて嫌よ」


 王宮で、私達を残して何をしていらしたの。夜明けまで王宮にいらしたのは何故?


 根負けしたのか、兄の瞳が揺らぎました。


「分かったよ、僕達の負け。フランカはお茶の用意をしてくれる?」


 リオ兄様は家族なので構いませんが、フランカが婚約者の自室を夜に訪ねるのは体裁が悪いのです。昨夜に引き続き、私の部屋を使うことになりました。


 客間でもいいのですが、やっぱり落ち着かないから自室の方がいいでしょう。


 並んでベッドに腰掛けました。左からフランカ、リオ兄様、私の順です。リオ兄様がごろんと後ろに寝転び、両手を広げました。


「ほら、おいで」


「子供の頃みたいですね」


「懐かしいわ」


 よくこうやって昼寝をしました。幼い頃と同じように、兄の腕を枕に寝転がります。淑女教育が始まっても、こうしてよく一緒に昼寝をして叱られましたわね。


「淑女と紳士は同衾しない! でしたっけ?」


 厳しかった侍女長の口調をフランカが真似すると、自然と笑みが溢れました。そして気づきます。この体勢だと互いの顔を見なくて話ができますわ。


「僕から話そう」


 リオ兄様が切り出した話は驚きの連続でした。


 昨夜より前から話は始まります。王太子と私の婚約を解消しようと、派閥を増やしたこと。フランカと協力して、知恵を出し合ったこと。王太子の浮気や悪行を調査したこと。


「この後の話を聞いたら、ティファは僕を嫌いになるだろうね」


 昨夜の話に入る前に、リオ兄様はそんな言葉を呟きました。ここで「いいえ」と否定しても、きっと疑うのでしょう。それだけ酷いことがあったのなら、余計に知らずにいたくないのです。それらは私のために起こしてくださった行動ですもの。


 だから選んだのはこの言葉です。


「何があってもリオ兄様は、私のお兄様よ」


 重い沈黙の後、リオ兄様は再び口を開きました。僅かな時間は覚悟を決める時間だったのでしょうか。聞き終えたら、笑い飛ばして差し上げます。


 昨夜は婚約破棄の後、テユ様が乱入して騒然となりました。竜が舞い降りた現場で、リオ兄様の姿が見えなくて。あの時間、フランカもお父様も赤い竜の案内をしていたとか、貴族の打ち合わせと誤魔化しました。


「逃げた伯父上を追いかけたんだ。宝石類を抱えて、自分だけ城から逃げようとした卑怯者を捕まえてた」


 一緒にいられなかった理由だよ。そう付け加えるリオ兄様の完璧な笑みに、私は頷きます。


 伯父様がどうなったのか、王子やカルメンの今後も、きっと私に知らせるおつもりはないのね。何も知らずにお姫様でいて欲しいなら、私はそれで構いません。籠の鳥のように不自由に見えても、私を猫から守る籠なら、大人しく囚われるのも悪くありませんもの。


「その後は……」


「先に私が話すわね」


 フランカが遮りました。兄の向こう側にいるフランカの姿はほとんど見えません。分かるのは、こちらに向いて寝転がってることくらい。


「私はフランシスカになる前の記憶があるの」


 思い浮かんだのは、カルメンが叫んでいた「前の世界」と言う単語でした。きょとんとして見つめても、兄の横顔が見えるだけ。


「リオ兄様は知ってたのね?」


「相談を受けたよ」


 短く答えた兄の頬をぺちっと音をさせて叩きます。こっちを向いたところを、今度は形の良い鼻を摘まんでやりましたわ。


「狡いわ! 2人だけで話すなんて」


「ふふ、ごめんね」


 前に話していた前世の記憶というのが、これなのかしら。摘まんだ鼻に私の指の痕がついてしまって、そっと撫でておきました。強く摘まみすぎたみたい。


「前に生きてた時の記憶があって、私ったら前の人生を合わせると倍くらい生きてるわ」


「やだ、お父様と同じくらい?」


「もう少し若いわ」


「父上はおいくつだっけ?」


 くすくす笑ってい言い合ったところで、一番重要な話が出ました。


「竜の方々と昨夜お話してきた。彼らは共通の意識という概念があって、その輪に入ると知識や経験を共有できるんだ」


 ぱちくりと目を瞬き、少し考えてみる。知識や成功体験、失敗の原因が共有出来たら、勉強や研究が凄く捗りますわ。同じ失敗をしなくなる上、結果もすぐに伝わりますもの。ですから竜の知識は豊かで、魔法などの複雑な仕組みを知っているのだわ。


 彼ら自身も長生きだから、きっととんでもない量の知識が蓄えられてるのでしょう。

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