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目隠しをされ車に乗り込んだ私たちは数時間後、彼らの目的地に付いたようだった。隣にいる藤沢果歩が緊張していることが分かる…目隠しを外された時見た光景は衝撃的なものだった。


「ここ…研究所?」


研究所なのは確かだ、確かなのだけど…似ている、似すぎている…私があの頃いた研究所に。でも少し違う気がする…あの研究所は組織が制圧して今でも常駐している人がいるのだ。

ここは違うと分かっていてもあの場所だと思ってしまいそうだ…恐らく、隣に藤沢果歩がいるのもあるのだろう。


「…ちょっと、あんた大丈夫なの?」

「…え?」

「顔色、悪いけど」

「…大丈夫」

「あいつら、私の名前も死神の事も知ってた…どういうことよ。あんたの親が何かしているんじゃないの?」


ああ、そうか。彼女は本当のことをまだ知らないのか。同じ実験体同士、ここの奴らは敵なんだがな。そんなことを考えていたら一人の男がやってきた。


「初めましてだな」

「…誰よあんた」

「私はこの研究所で所長をしている者だよ」


所長か。


「君たちのことは各研究所から探し当てた資料で知ったよ。特に死神に関する資料は見つけるのに苦労したよ…本名や出身地などがまるっきり不明だったからね、でもこれほどまでに力の強い実験体をあの研究所はどうやって手に入れたのか」

「…」

「…どういう、事よ」

「何がだい?」

「死神は、研究者の娘で…遊びで実験体たちを殺していたって」

「それはどこからの情報かな?彼女は研究者の娘では無いと思うよ?だって彼女も実験体だからね」


嘘と事実が混じっているが正気を保つことで精一杯で訂正する気にもなれない。


「そ、んな」

「さて、これから君たちには私の実験を手伝ってもらうよ…最初は藤沢果歩くんからやってもらおうか」


この顔は父に似ているところがある、つまりひどい事をするのだろう…私は彼女の前に出た。


「おや?」

「彼女には…手を出さないで」

「ほう」


彼が私に向けて手を出した、その姿が夢の中の父と重なった瞬間、恐怖で力を加減ができなくなった。


「ぐあぁッ!」

「暴走!?」


慌てて力を押さえ込むが放出された闇の能力は所長へ向かっていった。


「うわぁッ!…て、手がッ!私の手がぁぁぁぁぁぁぁ!!」


闇能力が手を切り離したのだろう。


「気をしっかり持って!落ち着いて、深呼吸をして」

「ッ!…」


心臓がドクドクと激しい鼓動を続けているのが分かる、そんな私を抱きしめて力を抑えてくれている彼女の温もりも感じられる…深呼吸、深呼吸。


「くっ…ッ…」

「見つけた!2人とも無事か!?」


ドタドタと騒がしい中圭佑の声が聞こえた。


「圭佑さん!私は無事です、でもこの子力が暴走してるの!」

「暴走!?陽和!陽和、大丈夫か!」

「けい、すけ…」


意識が朦朧としている中で圭佑の焦った表情が見えた。


「夕陽!陽和の力が暴走している!」

「陽和」

「ゆ、うひ…」

「ああ、助けに来た…力は頑張って抑え続けているな」


ふわりと夕陽に抱っこされた。


「果歩、そのまま陽和の力を抑えておいてくれ」

「分かりました」

「そのまま走れるか?」

「走れます」

「分かった」


それからの記憶は曖昧だ。夕陽と陽和、そして藤沢果歩の必死な声が聞こえていたがいつの間にか意識が無くなっていて目を覚ました時は自分の部屋だった。それと同時に右手が暖かい…見ると藤沢果歩が手を握りしめながら伏せて寝ていた。起こさないように起き上がりその寝顔を見つめる…歳は私の一つ下で15歳、改めてよく見ると美人だと思う。肩ぐらいまである黒髪は触ってみるとサラサラしている…このままで撫で続けるのもいいかもしれない。


「ん…ん?」


あ、起きた。


「…ん?…あ!」


ガバッと起きて私を見た、ものすごい驚いた表情をしているが…撫でいたからだろうか。


「おはよう」

「お、はよう…って!目が覚めてたの!?起こしてくれれば良かったのに!」

「…ごめん」

「あ、謝らないでよ!」


彼女は本当に藤沢果歩なのだろうか…私を憎んでいたはずなのに。


「あの…えっとね」


彼女も自覚があったのか気まずそうな声で言った。


「ボスから全て聞いたの…お母さんとお父さんの事も、貴方の事も。知らなかったとは言ってもひどいことを言ったのは本当のことだから…ごめんなさい」

「…仕方のないことだったから、大丈夫。あの、暴走止めてくれてありがとう」

「ううん、こっちこそ守ってくれてありがとう」


彼女はそう言って笑った、やはり彼女には笑顔が似合う。


「あの、あのね…陽和って呼んでもいい?」

「うん…私も、果歩って呼んでいい?」

「うん、うん!よろしくね陽和」

「こちらこそよろしく、果歩」


果歩とはとても仲良くなれそうだ。


「ボスから聞いたんだけど、陽和って16歳なんでしょう?私は15歳だから歳も近いし仲良くしてやってくれって言われたの」

「この外見だから驚いたでしょう?」

「うん!もっと年下だと思ったもん」


だろうな。


「でも、雰囲気は年上って感じがするの」

「へぇ…」


そうだったのか…そう思っていた時夕陽とボスが入ってきた。


「目が覚めたのか」

「良かった」

「ボス、夕陽も…心配かけて、ごめんなさい」

「陽和に付いていた監視から直ぐに連絡が来ていたからな、おかげであの研究所もすぐに制圧することが出来た。陽和の力の暴走を止めてくれて、果歩にも感謝している」

「い、いえ…そんな」

「ありがとう果歩」


恥ずかしがっている果歩が可愛い。


「ひ、陽和…恥ずかしいからやめて」

「可愛いのに」

「無表情ながらに動作が可愛い陽和に言われたくないっ」


…動作?


「仲良くなったみたいで良かった」

「陽和、ぜひお友達になってください!」

「うん…よろしくお願いします」


友達…友達かぁ…うれしい、初めてだ。


「良かったな陽和」

「うん」


夕陽に頭を撫でてもらう。


「…夕陽に撫でてもらう時、陽和の表情が一瞬変わる気がするな」

「お父様、夕陽も表情が変わるのよ?」

「ですです、長年一緒にいる俺たちでも驚きですからね」

「これもひとつの成長ね」

「都姫さん、摩耶、圭佑も」


都姫さんと摩耶と圭佑が中に入ってきた、摩耶は側にやって来て抱きしめられた。


「陽和、心配したわ」

「心配かけてごめんなさい」


今回の件は本当に色んな人に心配をかけたようだ。自分が油断したのだから仕方ない…これからも修行あるのみってところだな。


「そうだ、陽和にひとつ報告がある。果歩だが、陽和達第1班に所属してもらうことになった」


元々能力が強い果歩をそのままにして置く予定はなく、会議で第1班入りが決定したとのこと。その後私達の誘拐が分かり、救出されて私が寝ている間に果歩は私の事を全て聞いてずっと私の側に居たんだとか。ちなみに、全てを聞いた時果歩は号泣してたらしい…感性豊かな友人だな。


「だ、だってっ…あの痛さは分かるもん…それを陽和は生まれた時から味わってきたのでしょう?…うぅ…保護されて良かったよぉ!」

「…果歩も、良かった」


泣きつく果歩を撫でてあげる。


「くすくす、姿だけなら泣いている姉を妹が宥めている光景ね」

「まあ1歳上とはいえ陽和が上だもんな」

「うぅ~…」

「よしよし」


終始、この部屋に笑みが絶えなかった。



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