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学祭ホリック  作者: 葉月希与
第四章 真実に詐りを織り込んで
17/27

幕間2

◇   ◇    ◇


 まずい…、非常にまずい…。

 そう言いたくなるほど現状は最悪だ。全てはさっきの瘴気の塊だ。あの中に混じってきたものに晃仁の意識が持って行かれ、しかも持って行かれる寸前に潜り込ませたものの片方が発見されてしまったのだ。

「…完全に捕まえた。だから、抵抗は全て無駄」

 少女はこちらに不敵な笑みを浮かべながら言う。

「だからって諦めるわけにはいかないわよ。このままじゃ大変なことになるんだから」

 私は少女を簡易結界で閉じ込めて、時間を稼いでいた。だけど、さすがに私の力も吸い込まれているからかなりきつい…。

「…だったら、潰れちゃえ」

 少女が手をグッと前に出すとまた瘴気の塊が飛び出し簡易結界に激突する。

「く…っ」

「美樹ちゃん」

 遥華が後ろから心配そうな声を上げる。

「だ、大丈夫。遥華は晃仁に専念して…。こっちは意地でも食い止めてみせるから」

「……うん」

 遥華はまだ少し心配そうな声で呟く。

「…そっちのに手伝ってもらったほうが懸命だと思うけど」

 少女が少し薄ら笑いを浮かべながら言ってくる。

「うっさいわね、あんたなんて、本来の力があれば私一人で大丈夫なのよ」

 事実そうなのだけど、さすがに、力を少し持って行かれてるとちょっときつい。そんな弱音はこの場では絶対に吐けない。

「でも、それが出せない以上あなたは私を消すことはできない」

 少女はそれから怪しい笑みを浮かべながら、

「…それに…、この力を元々持ってた人間はもう戻らない」

「あんた…、何をしたの…?」

 私の声は自分でも解るほど低くなっていた。冷静を保たないといけないこの現状には最悪の状態だ。

「…あなたが想像している通りのこと」

 その言葉を聞いた瞬間、私の手から力が少し抜けた。

「美樹ちゃん!」

「…、…っ!」

 後方の遥華の声で私は目の前に迫る触手のような瘴気の塊に気付いて、急いで眼前に壁のようなものを作った。だけど、その触手は簡単に壁を貫通し、私を弾き飛ばした。

「美樹ちゃん、大丈夫? 落ち着いて、まだ残ってる(・・・・)から」

 倒れている私に遥華がそう声を掛ける。

「……遥華、大丈夫なの?」

 私はゆっくり立ち上がりながら言う。

「うん。まだあるから」

「……。…なら、希望を捨てるわけにはいかないわよね」

 私は遥華の明るそうな表情を見てからもう一度少女の方へと向く。

「…無駄なのに」

 少女はそんな私を見て呟く。

「完全に駄目になるまでは諦めるわけにはいかないのよね」


    ◇    ◇    ◇


 正直、美樹ちゃんでは既に限界に達していると思う。なにせこの現状がひどすぎるから。

 まず、晃仁さんの意識が持って行かれてる時点で美樹ちゃんは容易に手を出すことができない。なぜならこのまま浄化とかしたら晃仁さんまで消えてしまう危険があるから。

 そして、もう一つのほうが美樹ちゃんを苦しめる結果になっている。それは、晃仁さんを救うためにも混ぜ込んだものが相手に見つかってそこから美樹ちゃんの力が少しずつ奪われていっているから。

「…晃仁さん……」

 私は晃仁さんの額付近に手をかざす。美樹ちゃんのためにも今私ができることをしないといけない。

 この現状を打破するには本人になんとかしてもらわないといけない。それに、私としてもなぜ彼女がこんなふうになっているのかを知らないといけない。

「……あったとすれば、最初の方。あるいは…、後半ぐらい」

 ただ、相手に見つからないように、バラバラにしていかないと。

「もし、これで駄目なら全てが終わってしまう…」


    ◇    ◇    ◇

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