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学祭ホリック  作者: 葉月希与
第四章 真実に詐りを織り込んで
13/27

J 無意識に人を躍らせる概念的意識

「どうかされました?」

 突然声が掛かる。その方を向くとサユリが首を傾げるようにしていた。どうやら、部室でボーッとしていたようだ。

「…え」

 俺は少し惚けた声を出してしまう。

「いえ、ボーッとしていましたので…」

 サユリは笑みを浮かべたまま言う。

「あぁ、悪い…、あと三日で文化祭かって思って」

「…何もしてないのに」

「晃仁さんは何も準備とかしてないですよね」

「いや…、今更だけど、何かしたほうがよかったかなぁって思ったんだよ」

 事実、美樹には何もしなくていいと言われてはいるのだが…。

「…ダメ人間」

「他の人が楽しく準備している傍らで呆けてるなんて、まさしくですね」

 そこまで言うか。

「でも、無気力人間ですから、あまり本気ではないでしょうね」

「…冷め過ぎてる」

「そうか? そりゃ、美樹ほどハイテンションとかにはならないけど、盛り上がってはいると思うけど…」

「…熱に当てられてない」

「そうですね。仲間はずれになった子みたいです」

 今度は二人して哀れむような視線を送ってくる。

「なんだよ、熱って」

「お祭りって聞くと人は無意識に盛り上がりますよね? それが熱です」

「…それで皆が盛り上がる」

 活気とか熱気とかみたいなことだろうか。

「うーん。まぁ、間違いではないですけど…」

「…類似語みたいなとこ」

「でも、確かに、俺はあんまそういうのにはならないかもな」

「…人間が熱に当てられると、私たちみたいのも盛り上がる」

「えぇ、とても楽しくなりますね」

「そういうもんなのか」

「力も強まりますし…」

 え? 今妙なセリフが聞こえたような。

「いえ、なんでもありません」

 サユリはそう言ってにっこりとする。

 キーンコーンカーンコーン。

 その時、下校を促すチャイムが校舎中に鳴り響く。俺は鞄を持ち、部室の扉から廊下へと出る。

「じゃ、俺帰るから」

「えぇ、また今度」

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