あの日の電話
省きます。
『もしもし?』
『ああ、月見里?』
『何よ。私に何か用?もしかして告白?』
『なんでそうなる。』
『いいわ、で、何?』
『2つだけ月見里の意見を聞かせてくれ。』
『何よ、私の意見でもいいならさっさと聞きなさい。』
『相変わらずだな。』
『なによ、もったいぶってないで早くしなさい。』
『一つは、もし月見里に気になる男性がいたとする。』
『私、そんな人いないわよ。』
『仮定の話だ。』
『仮定でもありえないわ。』
『じゃあもし恋する女子Sさんがいたとしよう。そのSさんはH君の事が少しだけ気になるとする。』
『うん、それで?』
『その女子Sさんはその男子Hくんの何を見て、それが恋だと確信すると思う?』
『そんなの知ったこっちゃないわ。』
『そうか、無理には聞かない。』
『けど、あえて言うなら、その男子が懸命に頑張る様子を見たときじゃない?』
『頑張る姿…』
『何あんた、誰か好きな人でもいるわけ?』
『いや、そんなのいない。』
『どーだか?』
『それともう1つ聞きたい。』
『何よ。』
『前の入部テスト解決の時。俺は月見里の秘密を見破った。その時月見里はどう思った?』
『最悪だったわ、なんで馬鹿なあなたに、私の正体がばれなきゃいけないのかと思ったわ。』
『そういうことじゃない。』
『じゃあ何よ。』
『いい思いをしたか?それとも俺が許せない程に憎らしかったか?』
『はっきり言っていいのかしら?』
『ああ…』
『はっきり言って、いい思いはしなかったわ。』
『そうか…』
『けどね、』
『?』
『私は事実には向き合わないといけないと思っているの。推理小説でも事実は大事。弟の事も、私がミステリ作家である事も、だからあなたにすべてを打ち明けた。』
『………そうか、ありがとう。』
『人は事実から逃れることは出来ないのよ。』
どうも水無月中です。
前作と続き、今作も土日で連載を終了させるハードスケジュール。
本当なら、先週思いついた別の作品を書こうと思ったのですが、なかなか考えがまとまらず、前に書こうかな、と思っていたストーリーを書かせていただきました。
本作の事件は、実際に起こった事件を少しだけ引用させていただきます。新聞にも載らなかった小さな事件です。
このストーリーの事件は実際の事件より9割は偽装です。犯人はいまだわかっておらず、警察も調べる気がないようです。
このシリーズは日常の謎、青春ミステリをカテゴリとして書いている作品ですが、前作が日常の謎、今回は青春ミステリとして書かせていただきましたどうだったでしょうか?
次回作もよろしくお願いします
水無月旬でした。