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第13話:ま、負けてたまるか!



 私とロージーは、毎日のように秘密の通路を使って、マンセルの塔にいるリアム様の元へと通った。




 王妃様のおかげで、国王側にはバレる事なく侵入出来ている。お父様ももちろん、国王には内緒にしてくれている。むしろ、最近はものすごく心配してくれており、




『何かあれば、私を頼りなさい』




と、私を全面的にバックアップしてくれる体制でいてくれた。




 なんて素晴らしい父親なんだろう……ッ! ルシア4歳、中身は35歳、感激してます! どこの世界でも親は子供を大切にしてくれる……あ、例外もあるか……。国王が脳裏に浮かぶ……。




 そんな父の事もあってか、兄様達の怒りは徐々に静まっていき、リアム様のお世話係について、ここの所、何も言わなくなっていた。


 兄様達も遠回しにだが、私を心配してくれているようで……私の手が荒れているのを見て、『王都で今人気らしいぞ』と、ハンドクリームを贈ってくれたり、『そんな平民過ぎる服はやめろ』と、王都1番のブティックのデザイナーに作業用の服を作ってもらいプレゼントされた。


 なんだかんだ妹には優しい兄達。だけど、高価過ぎて使うのが勿体ない……。使わないと兄達が悲しむので、ありがたく使用させて頂いてますが……。




 王妃様とのやり取りも、上手くやっている。私が、毎日王妃様に会っていると怪しまれる事はもちろん分かっているので、文通でリアム様の状況をお伝えしている。その日にあった事を手紙にして、王妃様の"魔法の鳥“に運んでもらうのだ。この"魔法の鳥"は小説でも出て来る。




 小説では、リアム様が聖女リーシャへ向けた、(おぞ)ましく恐ろしい言葉でつづった愛の手紙をカラスのような黒い小鳥に運ばせていた。


 王妃様の鳥は、尾っぽが長く優雅な立ち振る舞いの鳥で、王妃様の瞳の色をしていた。どうやら人によって、鳥の種類や色は違うようだ。




 手紙の内容は、リアム様の事だけではなく、看守の働きや、塔の環境についてなど、気付いた事全て報告する事になっている。


 私はできるだけ詳細に、嘘偽りなく手紙へつづるようにしていた。






 通い始めて1週間。なかなか難関の多い任務だと気がつき始めた……いや、初日で気付いてはいたんだけど……。




 1つ目は、看守達の事だ。ラルフさんは良いのだが、ハンスと残りの2人が、大問題児達で頭を抱えている。




 ハンスは初日の通り、私やロージーをかなり見下してくる。『貴族だから貧弱なんだ』とか、『望みはないんだから、もう諦めたらどうだ? お嬢ちゃん』と、イケメンなのに嫌味ったらしい顔で馬鹿にしてくる。損しているのに気付かないのかしら?


 しかも、毎日掃除をしている私達の事などお構いなしに、部屋を散らかし、汚したい放題だ。このぉお……ッ! いつもニヤニヤしやがって……掃除してるのが、分からんのか、このカモシカ男がぁあーー!!


 と、毎日が脳内ブチ切れモードである。もちろん表面上は笑顔よ。




 さらに、残りの2人というのが、かなりの曲者。夜番と昼番の入れ替わる日が1週間に2回程あるようで、残りの看守であるアレントとエーヴェルともお会いした。なんと表現したら良いか……。とりあえず、今の所、"さん“付けはしない事に決めている。もちろん心の中で。




 まず、アレント。アイツは女の敵だ……。女好き女たらしの優男である。金髪ウェーブのミディアムヘアに、新緑の瞳のアイツが微笑んだら最後。そこからストーカー並みに絡まれるのだ。だからアイツとは目を合わせてはいけない……。


 この仕事も、ギルドで見つけ、報酬が良いと言う事で申し込み、採用されたそうだ。そのお金は、全てレディー達に注ぎ込んでいるらしい。


 4歳児の私にまで色目を使ってくるので、たまったもんじゃない! ロージーには手を出そうとしてくるから、私が守ってあげないと……!! 別の意味で、大変だわ……。




 そして、エーヴェル。コイツは、なんでも面倒臭がる、やる気ゼロ男だ。話しかけてもぼーっとしていて、反応がない。だが、地獄耳のようで、ロージーとの小さな話し声も聞こえているらしい……。


 ある時、塔の一階にある秘密の出入り口のある部屋を掃除しようとしたら、エーヴェルがソファで寝ていた。


『エーヴェルさんがいるから、掃除出来ないわね』


と、ロージーにひそひそ声で伝えた事があった。すると、エーヴェルが突然起き上がり、のそのそとやる気なさそうに近付いてきて、


『それ、本人に直接言ったら? 感じ悪い人達だね……』


と、欠伸をしながら言われたのだ。


 ……いや、貴方は見張りもせず、1階の部屋のソファで寝てただけでしょ? それに感じ悪いのはアンタだよ。


 心の声は、もちろん奥底に仕舞っていますわよ。


 しかも、ああ言えばこう言う奴なので、下手に話しかけられない。何故って、そりゃあ私の腹が立って仕方ないからだ。


 灰色の髪に、紺色の瞳……よくある異世界ファンタジーでは、まるで主人公のような風貌なのに、あのやる気のない目を見たら、モブでも仕方ないと思ってしまう。




 とにかく、ラルフさん以外の看守達、性根腐ってやがる……ッ! しっかり働けよ!




 そして、2つ目の難関……。私の体力の無さだ。この恐ろしい螺旋状の階段は、半分もいかないうちに息切れをしてしまう。4歳児は当たり前だが、ロージーでさえも上り下りはかなりキツいようだ。




 何度も心の中で叫びました。


(エ、エレベーターが欲しいぃいーー……ッ)


 ってね。エレベーターを考えた人、本当に大正解! 天才だわ!! この世界なら魔法があるんだし、作れるんじゃないの?? 今度、王妃様にでも提案してみようかしら……。




 階段を上がっている間は、どこを見ても石造りで、変わり映えのしない景色が続く。それが、さらに疲れを倍増させてくるのだ……。マジで勘弁してほしいです。毎日、推しに会うための愛のパワーで、気力振り絞って上ってます……!


 上り終えたら、休憩は必ず取ってるけどね。


看守達も、ラルフさん以外は上るのを嫌がるようで、なかなか上に上がってこない。さすが監獄の階段……とでも言うべきか……。




 最後に、1番ショックで大きな難関なのが……『推しの拒絶』だ。




 ……"拒絶“という言葉を思い浮かべるだけで、泣けてくるわ。




 まず、毎度食事を作るが、食べてくれない。次に、掃除や食事をしながら話しかけるが、全く反応してくれない。さらにさらに、僭越ながら、お風呂に入らせようと説得を試みたが、全く動こうとしてくれない。そこで身体を拭かせてもらおうとしたが、触れようとすると拒絶される……決して、下心じゃないからね!




 と、やっていて心が折れそうになるぅうぅーー!! 涙が出ちゃうでしょ……。




 そんな中、私が通い出してから2回、呻き声を上げ、苦しむ推しの姿を見た。私が檻の中に入って近付こうものなら、リアム様の身体から、謎の黒い稲妻みたいなものが、私に襲いかかってくる。


 鞭のようにしならせた稲妻は、私には当たらず地面を叩きつけ、弾けるように消えていく。




 推しよ……そんなに近付かれるのが、嫌なのか……。それとも、黒い呪文のような痣が、私を拒絶しているのか?


 とにかく見ていて、辛いのなんのってッ……!(涙)






 ……っていうかさ、思っていた以上に、面倒な事…ゴホン、大変な事が多過ぎない……? 漫画やアニメみたいに、スムーズにいかないことはわかってたけど、結構ハードよ?




(……)




 いえ、良いわ……良いわよ……ッ。全てやってやるわッ!




 看守達よ、見てなさい……うまく丸め込んでやるんだから……!! ふふふ……。




 あとは、体力作りすりゃ良いんでしょ! 伯爵令嬢とか気にしない! 身体を鍛えて、ムキムキになって、階段の上り下りなんて簡単にやってのけてやる!! あ、ちょうど良いわ! 前世からやってみたかった、乗馬を習おうかしら。体幹を鍛えれば、身体の軸も鍛えられて綺麗に筋肉が付くかもしれない。




 そして、リアム様!! 貴方が心を開いてくれるまで、私は諦めません。ルシアと、莉奈(りな)の、名に賭けて! 推し愛パワーなめんなよぉおーーー!!




 全ては、推しと私と、ついでに国の未来の為!!




「負けて、たまるもんですかーー!!」




.

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