第十二話 死の丘を歩く
お久しぶりです。こんにちは
月曜と土曜
余裕があれば水曜にも投稿します
まずは1番近くの建物に入る。入り口は所々タイルが剥がれかけているがそれでも原型は保たれている。
階段は崩れかかっているが登れない事はない。人が住んでいるところに入ったら気まずいので1番くずれていそうな部屋のドアを開けた。開けるとドアは砂のように崩れ落ちた。
入ると外壁が崩れ落ちていて雨晒しの状態だ。所々には草が生えていてこの文明が滅んでから永い刻が経ったことを思わせる。
元々はオフィスとして使われていたようで植物に侵食されつつあるパソコンや机が放置されていた。
まだ使えそうなCPUなどを回収しながら歩いているとパソコンや机が積み重なり、砦のようになっている場所があった。 人が住んでいるのかもしれないと思い中を覗くと1人の男がいた。
目に輝きが無いが強い精気を放っている。
男が言葉を放つ。
「嬢ちゃん、何の用だい?」
「いえ、この街の教会から依頼がありまして冒険者として参りました。今はこの街の情報を集めているところです。」
「いいだろう、久しぶりに敬語を使ってる奴を見たぜ。ついてきな」
案内されながら元オフィスを出る。
目的地へ向かう道中色々なものを見た。
車を飲み込んでいる大木。ジャングルと化した商店街。6階から上が崩れているマンション。ガラスが全て割れたガラス張りのビル。ほぼ湖になっている大通り。地上から見える地下鉄だったもの。
どことなく中学生時代滞在していた日本ににている。
「この街で1番の鉱山はここだ」
彼が指差した先の建物を見て、私の持っていた疑念は確信に変わった。
崩れかかった大時計、荒廃したモニュメント、隣にある建物から見えるバスだったもの。
ここは私が住んでいた街の最大の駅、博多駅だ。
「どうして…博多駅が…?」
「嬢ちゃん、ここの言葉が読めるのかい?」
「え?」
「ここの言葉はモルト語と言って大昔に使用されていた言語なんだ。 長い間解読不能だったが最近解読されたばっかりでね、モルト語が読める者は珍しいんだ。」
博多駅だった建物に入る。中は薄暗く、エレベーターは機能していない。改札は植物に覆われて本来の仕事を終えている。ホームには電車が残されていた。もしかしたらモーターが残されているのかもしれない。ホーム下に降りて確認すると車輪やモーターは全て残っている。ただ電気が通ってないので使えはしない。
車内は朽ちてクッションの無くなったシートや吊り革があった。もう夕方で西陽が車内に差し込んでいる。
中央教会は天神パルコがあった所に建てられている。帰ってすぐに夕食の時間になった。
夕食はパンとスープという質素な物だったがそれでも美味しく感じる。
夕食の後、明日の作戦を立てることにした。
イーゲルに正面から戦っても跳弾して倒せなさそうなので関節部分に銃弾を当てるしか無い。
展開される小さいロボットは撃って確かめる。最後はマチェットで終わらせたい。
フィアンマは防御力が高いそうなので上空から火炎弾を撃ち続けてもらう。
これでいけるだろう。
夜、1人でもう一回外に出ることにした。
昔、私が住んでいたマンションがあった所には何があるのだろう。中央教会から明治通りを西へ歩き500メートル程のところで右に曲がる。
あるかどうか…。
あった…。
聳え立つマンション、住んでいた頃の面影は残っていない。部屋からは木が伸び、崩れて無くなっている部屋もある。
中に入る。エレベーターは機能しないため階段を駆け上がる。8階の角の部屋が私が住んでいた部屋だ。
ドアはすでに無くなっている。大きなトカゲみたいな魔物がいる。部屋の主は私なので倒す。
マチェットを抜いて襲いかかってきたトカゲの足を切り落とす。素早く振り返って。着地でバランスを崩したトカゲの頭にマチェットを振り下ろす。トカゲは絶命した。中はかなり悲惨な状態で、冷蔵庫は倒れキッチンのシンクや浴槽には魚が泳いでいる。外壁は崩れ、床には芝が生え、雨が溜まりリビングに池ができている。
小さな生態系ができ、小さな生命が力強く生きている。
人間が造り環境破壊と言われたたものが永い刻を経て自然の一部となっている。そこに軽い感動を覚えた。
ソファだった所に腰を下ろし目を閉じると近くでカエルの声が聞こえる。目を開けると目の前に興味深そうにこちらを見ているカエルがいる。
「よっ」
「ゲコッ」
声をかけるとちゃぽんと音をたてて、カエルはリビングの池に飛び込んだ。
静かな部屋に水の音が響く。
耳を澄ませ座っているとどこからかフィアンマがやってきた。フィアンマは私が何をしているか分からなくて心配そうにしている。大丈夫だよと声をかけると安心したのか膝の上で寝息を立て始めた。
部屋の中に時折り吹いてくる夜風が気持ちよく寝てしまいそうになる。
少し飛んで来るか。翼を広げ、走って8階の部屋から飛び出す。夜風に攫われ体がふわっと浮く。
赤坂の上空をゆったりと舞いながら東へと飛ぶ。廃墟の西鉄グランドホテル上空を通り、もう灯りの灯る事はない日本3大歓楽街の一つ、中洲を飛び去る。北へ方向転換し、まるで世界樹かのようになっているポートタワーを旋回する。博多港は干上がり、海があるはずの場所は砂漠が広がっている。地上に降り、博多港ベイサイドプレイスの食料品店に入る。店内は荒れていてドアを開けると大きめのネズミが逃げていった。
店内の棚に商品は既に無く倒れた棚もある。
ポートタワーは木が覆っていて大木の一部となっている。上の方は鳥の棲家となっているようで小鳥から1メートルほどの大型の鳥まで多種多様だった。
さらに東へと飛び吉塚に着く。
吉塚駅は錆びつき所々駅舎に穴が空いている。
見ていると上に気配がする。見ると大型の鳥が襲いかかってきていた。
今日はもう殺したくない。飛び立ちマチェットを抜いて斬りつけようとするとすぐに逃げていった。
こないだのゴブリンに比べて殺気が低い気がする。動きもゆっくりしていた。もしかしたら魔物も生きることに必死なのかもしれない。こんな事を考えた。
魔物は人間からが1番栄養を補給できる。故に命懸けで人間を襲おうとする。多少飢えているくらいが1番凶暴化しそうだ。しかし、ここのような生きていくだけで限界な場所だと他の動物で飢えを生きながらえ人間を見かけるとあわよくば食べれるかもしれないと思い、襲いかかる。しかし抵抗されると命を失いたくないからすぐに逃げる。
これこそ本当の平和なのかもしれない、ここが苦しい場所である事は変わらないが。
吉塚駅で少し休憩して戻ることにした。
昭和通りを西へ進み天神の郵便局跡を飛び去る。郵便局は崩れ、上の方が野ざらしになっていた。
自宅だったところでフィアンマは相変わらず寝ている。
起こして教会まで歩いた。舞鶴公園だけはありし日と変わっていない。石垣も綺麗だ。
新天町の中を通る。新天町はアーケードの天井が割れ間から星空が見える。シャッターは壊され中は綺麗に残っている店舗もある。
新天町を抜けると中央教会が見える。遅くなったので怒られないか心配しながらドアを開けると、案の定少し不機嫌なアデリーナさんが出てきた。
「こんな時間までどこ行ってたんですか!?危ないですよ!」
「ちょ、ちょっとそこらへんを…」
「具体的に!」
「昔住んでた家があったのでそこに…」
そう言った瞬間アデリーナさんの表情が輝いた。
「昔住んでたってどういう事!?詳しく話して!」
「えっと…」
私が転生したということや昔ここに住んでいた事を話すとアデリーナさんは興味津々に聞いてくれた。
話終わり満足気な顔で部屋に戻る…ことは出来なかった。
帰りが遅かった事をしっかり説教され、少しふてくされて部屋に戻った。フィアンマはいつの間にか部屋に戻っている。
マチェットを手入れしベッドに潜り込む。すぐに意識が闇に落ちていく。
なんで福岡市を選んだって?
そりゃあ私の地元だからだよ