今年は幕歴417年です
今年は幕歴417年です
幕歴417年が終わろうとしている。
ソ連にとって幕歴417年は特に記念すべき年とはいえないが、西暦では2020年というある種の節目の年にあたる。
そこで新しい年を迎える前にこの10年間の世界の動きを振り返っておきたい。
2010年代の世界情勢はソ連の西方拡大、アメリカの衰退、そして中国の台頭という大きな3つ潮流があったと言える。
まずソ連の西方拡大を取り上げる。
ソ連の西方拡大が始まったのは、1996年のロシア進駐からである。
経済破綻から内戦状態に陥ったロシアでは、大量破壊兵器がテロリストに手に渡るなど、その混乱はソ連にとって座視できるものではなかった。
岩里政男大老は武力介入を決意し、350万の大軍でロシア内戦を強制終了させた。
1999年7月には、ロシアは分離独立したベラルーシやウクライナと共にソ連の構成国となった。
主権国家としてのロシアはここに終わったが、2007年にはロシア共和国からアレキサンドル・プーチンが大老に選出されるなど、ロシアはソ連の主要な構成国として存在感を発揮している。
プーチン大老は、元スパイという異色の経歴の持ち主であったが、そうであるが故にその判断力や決断力は極めて高く、人を見る目があった。
プーチン大老に請われて5カ年計画奉行に再就任したヴィクトル・オーブッチの手によって、ソ連は2011年までに世界的な景気後退からいち早く脱出することに成功している。
オーブッチの経済対策は、減税と財政拡大というオーソドックスなものである。
ただし、規模はそれまでの経済対策は規模が異なり、年間国家予算の3倍という途轍もない規模の国債発行であった。
このような財政拡大が可能だったのは、オーブッチの経済手腕への絶対的な信頼とプーチン大老の豪腕があってこそであり、他の組み合わせでは決してありえなかったと考えられている。
オーブッチが特に重視したのは、人口増加率の高いフィリピンへの公共投資の拡大とバクー油田の再開発だった。
前者においては、フィリピンの人口が1億2千万人に達しており、なお拡大が続いていることから、あらゆるインフラが不足していた。
フィリピンはソ連最大の南方領土だが、工業化は遅れており、長きに渡って稲作中心の農業地帯だった。
しかし、レイテ宇宙港が開かれると周辺にソ連の航空宇宙産業が集積し、その波及効果はフィリピンの長閑な田園地帯やジャングルを急速に先進工業地域に作り変えていった。
さらに安い人件費を武器に企業誘致が順調に進んだことで21世紀以降、フィリピンはソ連経済にとって重要な地域に発展しつつあった。
ソ連加盟後のロシアの速やかな経済的復興と併せてフィリピンの経済拡大はリーマンショック脱出において重要な役割を果たしたと言えるだろう。
フィリピンの経済発展を実現した立役者はフィリピンの小プーチンの異名をとるドワンゴ・ドゥテルテである。
ドゥテルテは毀誉褒貶が激しい人物だが、経済発展や治安維持においては非常に優れた手腕を発揮した。また、ソ連大老選挙出馬に意欲を示すなど、2020年現在でもソ連における政治・経済の南方シフトを主導している。
後者のバクー油田の再開発については、ロシア時代の経済破綻で設備更新が滞っており生産縮小が著しかったことから、大規模な公共投資は必要不可欠だった。
バクー油田の再開発は1996年のロシア進駐時点から、駐留経費の獲得のために重視されていたが、経済対策として2007年以後に大規模な予算が編成されて、パイプラインの増設が進められた。
近代化され生産量が回復したバクー油田の主な石油・天然ガスの輸出先はヨーロッパ諸国だった。
東ヨーロッパ諸国は元々東側陣営であり、経済的にもソ連に近しい地域であることから、燃料資源の輸出はソ連にとって東側陣営の再編成という側面があった。
2014年に実現した経済相互援助会議の再開は、ソ連によるヨーロッパ東側陣営再編成の総決算と言える。
西側マスコミからコメコン復活と騒がれ、ソ連による経済支配のレッテルを貼られた経済相互援助会議の再開だが、実態としては西側の過激自由主義経済(西側呼称:新自由主義経済)に付き合いきれなくなった東欧諸国が本来のあるべき道に立ち返っただけと言える。
ロシア内戦後にロシアの高圧的な支配から解放された東ヨーロッパでは、それまでのロシア型社会主義から急速に資本主義化が進んだ。
しかし、資本主義化の実態はほとんどが過激自由主義による国家財産の私物化(民営化)であった。
00年代には社会主義陣営の総本山であるソ連においても、ジュンイチィーラ・イズムィコ政権によって過激自由主義経済が推進されており、00年代は過激自由主義が世界的な潮流となった時代と言えるだろう。
国有財産を掠め取ることで私服を肥やした新興財閥は政治と癒着し、特権階級を形成していった。
新興財閥の懐に収まった国営企業では効率化の名の下に恣意的な賃下げや首切りが横行し、労働者の賃金が株式の配当に振り向けられるなど、富の不平等が著しく拡大した。
労働者の賃金が、不労所得である株式配当に振り向けられるなど、社会主義時代には考えられないことであった。
さらに世界的な経済後退で景気が悪化すると東欧各国では失業率が著しく増大し、国民の不満が爆発した。
結果として、ソ連の支援を受けた社会主義政党がリーマン・ショック後の東欧で再び政権与党に返り咲き、景気後退を克服したソ連と経済相互援助会議を再開することになった。
また、コメコン復活に大きく影響したのが世界的な油価の暴騰であり、ソ連からの同盟国価格での燃料資源の売却提案は絶大な効力を発揮した。
1円でも安い燃料がほしい東欧各国は、諸手を挙げてコメコンに復帰したのである。
2014年の経済相互援助会議の再開には、キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ルーマニアが参加した。
さらに2015年からはギリシャ、ユーゴスラビア、イタリアといった南欧の親ソ国家も参加することになり、ロシア内戦の混乱で縮小した欧州東側陣営はドイツを除けばば1989年のラインまで回復することになった。
さらに同年には休止状態であったワルシャワ条約機構も復活し、全体会議がワルシャワで開催されている。
会議場に威風堂々と現れたプーチン大老の自信に溢れる姿は、ソ連の西方拡大の象徴とも言えるだろう。
ソ連の西方拡大に対して、北大西洋条約機構は裏切り者のドイツを加盟国に加えるにとどまり、勢力の拡大に失敗している。
北欧諸国も資源ビジネスのためにソ連との関係を重視し、NATO加盟には否定的だった。
それどころか、見方によっては著しく勢力を弱体化させていると言えた。
なぜならば、ソ連の燃料資源輸出は東欧や南欧にとどまらず、東側陣営から離反したドイツやフランス、イギリスといったヨーロッパ主要国にも拡大していたからである。
ヨーロッパ諸国がソ連への燃料依存を拡大したのは、2010年代初頭に中東を席巻したアラブの春による油価の暴騰である。
長く親米政権が続いたエジプトの親軍独裁政権が倒れると連鎖的に中東各地で民主化革命が続いた。
そのほとんどが内戦という形で各地に破壊と混乱をもたらすことになったのは、ご承知のとおりである。
アラブの春に対して、西欧諸国やアメリカ合衆国は、当初は好意的だった。
革命勢力を掲げた民主化は、西側の基本的なイデオロギーだったからである。
これがイスラム革命であったらもう少し違った反応を示したかもしれないが、2001年のバクダッド核爆発以来、イスラム勢力は中東でさえ白眼視されるようになっていた。
アラーのために120万人のバクダッド市民を巻き添えにして自爆した過激イスラム主義勢力はイスラム教に消えない十字架を背負わせたと言えるだろう。
しかし、混乱が拡大し、革命の熱気がサウジアラビアに及ぶと西側各国(特にアメリカ)は手のひらを返すことになる。
サウジ革命を仕掛けたのはイランの情報組織というのが定説となっている。
アラブの春以前からサウダイ王家の王政に不満を抱いていた民主化勢力(自由サウジアラビア)はイランからの資金提供を受けて2011年4月に大規模な抗議集会を開催した。
金曜礼拝後に数千名の抗議者がサウジ各地の多くの都市で街路に繰り出した。
これに対して治安部隊が発砲し、各地で多数の死傷者を出すことになった。
追い詰められた抗議者達は各地のモスクに立て籠もり、イスラムの守護者を自認するサウダイ国王がモスク攻撃を躊躇したことから、事態は膠着状態となった。
最終的に民主化勢力とサウジ政府の交渉により、部分的な民主化を条件に抗議者達はモスクから退去することになった。
これにはアメリカの強い外交圧力が背景にあり、油田地帯の混乱を望まないアメリカの意向にサウダイ国王が折れた形だった。
こうして危機は去ったかのように思われたが、結局、民主化の約束は履行されなかった。
それどころか治安部隊が各地で抗議者達を襲撃するなど、サウジ政府がだまし討ちに走ったため、ついにサウジ内戦が勃発することになる。
当初、西側諸国はサウジ政府の民衆弾圧に非難し、武器の売却を拒むなど、自由サウジアラビアに好意的だった。
しかし、内戦が拡大して石油輸出がストップし、油価が暴騰するとサウジ政府支持に回った。
しかし、一度戦火が広がった後の手のひら返しなど、完全に後の祭りであった。
安いサウジアラビア産の石油に依存していた西側諸国は、油価の暴騰によってリーマン・ショックに匹敵する大打撃を受けることになった。
アメリカでは株式が暴落し、第3次オイルショックによって経済がマイナス成長に突入することになる。
ヨーロッパ諸国も同様であり、バクー油田の生産を拡大していたソ連の一人勝ちとなった。
当初、西側諸国がある意味で楽観的な態度をとっていたのは、西側最新鋭の武器で固めたサウジアラビア軍が雑多な小火器しか持たない反政府軍に負けることなどあえりないという予想があった。
また、イザというときはアメリカ軍の介入によって反政府軍を早期に鎮圧できるという目算があった。
しかし、大方の予想に反してアメリカの介入は空母艦載機の空爆にとどまり、地上軍の派遣は行われなかった。
アメリカのオバマ政権は、イラク戦争の二の舞を避けるために表面上の態度とは裏腹に軍事介入には消極的で、地上軍の派遣は絶対回避する方針だった。
2012年8月のオタワでの米ソ首脳会談でオバマ大統領は異様に尊大な態度をとり、プーチン大老が鼻白む一幕もあったが、実態としては小手先介入ぐらいしかできないことを悟らせないためのブラフだった。
それに対してプーチン大老はスペツナズ派遣のみならず航空戦力の大規模派遣に踏切り、自由サウジ軍を強力に支援した。
もちろん、サウジのライバルだったイランも最大の支援を行っており、アメリカのブラフは空振りに終わることになった。
アメリカの大規模介入はないと読みきったプーチン大老の勝利だと言えるだろう。
ソ連やイランの支援を受けて粘り強く戦う自由サウジ軍はソ連製の最新鋭対空ミサイルの供給を受けると制空権を失ったサウジ政府軍は連戦連敗することになる。
自由サウジ軍への武器供与ははもっぱらイランから空輸や船舶輸送によって行われたので、ペルシャ湾情勢は極めて緊張したものとなり、油価の暴騰に拍車がかかった。
2015年にはペルシャ湾上でイラン空軍のDo217がアメリカ海軍のF/A-18を撃墜するアメリカ海軍機撃墜事件が発生し、イランとアメリカの緊張は頂点に達した。
この事件は双方が自衛を主張しているが、ソ連空軍では自由サウジに武器を空輸するイラン空軍の輸送機にアメリカ海軍機が襲撃行動を取り、護衛のイラン軍機によって返り討ちにあったというのが定説となっている。
アメリカはイランに対して経済制裁を発動したが、報復爆撃は見送った。
断固たる行動に出られないオバマ政権の弱腰が白日に晒され、中東におけるアメリカのプレゼンスは地に堕ちることになった。
サウジ内戦はドローンが広く使用された最初の戦争で、政府軍、反政府軍問わず民生用ドローンが偵察や爆撃誘導、砲撃誘導に使用された。
ドローンの軍事利用はソ連軍でも研究が進んでいたが、現実が軍部の研究を追い越してしまうことになる。
また、インターネットによって戦場の動画がリアルタイムでアップロードされ、ネット時代の戦争のあり方を示すことになった。
ほとんどの動画はプロパガンダにまみれたものであったが、双方が同じ戦場を同時に撮影し、双方の視点から見た現実の戦闘がネット上で誰でも視聴できるなど、それまでの戦争では考えられないことであった。
なお、ソ連軍のネットリテラシーのレベルは、残念ながらこの時点では低いと言わざるえなかった。
極秘作戦中の特殊部隊が、あろうことか自らサウジでの活動風景をスマートフォンで撮影してSNSにアップロードするなど、機密保持もへったくれもない醜態を晒している。
本人は機密を暴露したという意識はなく、珍しい写真をSNSに投稿しただけと証言しているが、ソ連軍のスペツナズ以外何者でもない人物がせっせと位置情報を晒しながら自撮り写真を投稿しているのだから自爆以外の何者でもない。
ソ連軍はイズムィコ政権時代の予算削減で、軍事情報革命が遅れており、ネットリテラシーについて低いレベルにあったため起きた珍事といえる。
サウジ内戦への米ソの介入は、新冷戦の始まりと解釈されるのが一般的である。
しかし、過去の冷戦と異なり、現在の米ソにアルマゲドンの用意があるわけではなく、経済関係はサウジ内戦後も継続して拡大しているため、冷戦とは言えないという指摘もある。
サウジ内戦では対立する米ソであっても、反テロリズムという点では協力関係にあり、2つの超大国は対立しつつも共存共栄する関係であると言える。
2020年時点でもサウジでは各地で戦闘が継続中であり、サウジアラビアの産油量は内戦前の200分の1まで低下している。
サウジの産油能力の壊滅で、イランが中東最大の産油国となっており、中東の政治勢力図は完全にイラン主導に置き換わっている。
ちなみにイラン産原油の最大輸入国は、南中国である。
南中国は冷戦終結の恩恵を受けた最大の国で、2010年代の南中国経済の拡大は冷戦終結なしには考えられない。
何しろ、東アジアにおいては資本主義国家は南中国しかなく、全周囲が敵国というアラモ砦も真っ青な状況だった。
そのため、南中国は60年代に包囲網打破を狙ってビルマ内戦に介入し、ビルマ戦争を引き起こしたがソ連との戦いに敗れると完全に孤立することになった。
70年代から80年代の南中国は最悪の状況で、ヒステリー状態の政府が野放図な軍拡と国境の全周囲を要塞化するという暴挙に出て、国家財政が破綻寸前になった。
南中国が破綻せずに済んだのは、アメリカからの膨大な財政支援のおかげで、それがなければ経済崩壊で内戦に突入していたと考えられている。
南中国の転機は、冷戦終結後の米ソ間の緊張緩和と経済交流の再開であり、南中国の豊富な安い労働力を武器に外国企業の誘致を盛んに行った。
ソ連企業も多数が南中国に進出し、90年代、00年代の目覚ましい南中国の発展を演出することになった。
近年では北中国との往来も拡大しており、独自に宇宙開発や海軍拡張など、南中国の勢力拡大は目覚ましい。
2020年にはGDPがアメリカに次ぐ世界第3位に拡大している。
しかしながら、2020年に世界中に蔓延した新型コロナウイルス感染症において情報隠しに走るなど、不透明な統治体制には世界各国から批判が殺到している。
南中国は光明党の一党独裁体制であり、ソ連は経済発展で政治のソビエト化が進むと期待していたが、その徴候はまるで見られない。
近年ではAIや情報技術を駆使して国民の監視体制を強化するなど、独裁体制の維持に腐心している。
こうした南中国の対応は政治のソビエト化を求めるソ連世論から強い反感を買うことになり、南中国とソ連の関係は曲がり角を迎えつつある。
また、ソ連構成国のジュンガルの(中国名称新疆省)ウイグル人の間では南中国内のウイグル人への不当な弾圧に対してフラストレーションが高まっていることも見逃せないだろう。
中央アジア国境においては、過去にも国境を越えて移動するウイグル人を南中国軍が銃撃したことで、ソ連軍と南中国軍が衝突したことがあり、現在でも国境摩擦を抱えている。
ジュンガルでは歴史的にラマ教が信じられており、南中国のチベットへの干渉にも反発が強く、ソ連との関係は経済面の成功で誤魔化されてきた面が大きい。
また、アメリカとも不公正な貿易や知的財産権の侵害で対立し、資本主義陣営内でも外交面での孤立が目立っている。
近年になって貿易赤字是正や関係改善のためにアメリカからイージス艦やF-35といった軍事兵器の輸入を拡大しているが、抜本的な関係改善には程遠い。
また、アメリカからの武器購入は軍部の機嫌を取るという意味が大きいと考えられている。
経済発展を優先する南中国政府と信仰心を優先する創華学会との路線対立は近年、深刻なものとなっており、双方がいざというときに備えて軍部の支持を必要とする状況である。
国家主席の周近平は、創華学会代表の成太作と不仲という報道もあり、成太作の健康状態によっては大規模な内紛は避けられないと見られている。
また、一部の情報筋は既に創華学会代表の成太作は死亡しており、周近平が用意した替え玉という説もあり、南中国の政治情勢は混沌としている。
サウジの産油能力壊滅を受けて、アメリカではオイルシェールを増産し、石油輸入国から輸出国に転じたが、ソ連ほどの増産には至らなかった。
アメリカのオバマ政権は、経済後退に対して小手先の改革を繰り返すばかりで、2010年代のアメリカは暗黒時代と記憶されることになる。
その暗黒から飛び出してきたのが、ボナロソ・トランプ大統領という怪物なのだが、それは後述する。
オバマ政権の経済対策が失敗したのは、過激自由主義への過剰な傾倒が原因という説がソ連経済界では支配的である。
政府の役割を大幅に縮小し、市場に経済を委ねることを基本とする過激自由主義は、リーマン・ショックという市場の失敗で大きな批判に晒されたが、2020年現在でもアメリカの政治経済思想のメインストリームであり続けている。
ソ連では考えられないことだが、アメリカの大手スーパーマーケットでは従業員が賃金だけでは家賃を払うことができず、スーパーの駐車場で車中泊をして職場に通うという狂気がまかり通っている。
弱者に手を差し伸べるべき政府は、財政再建のために極端な歳出削減や増税を繰り返して、自己責任論を振り回して福祉を削減しつづけているのである。
特に国民皆保険制度を目指したオバマ・ケアは高額の社会保険料を全国民から徴収するというもので、税外増税以外の何者でもないと厳しく批判されている。
それでも応益負担の原則を取り下げなかったのだから、オバマ大統領はソ連では一種の狂人の類を見られている。
応益負担が原則であれば、福祉に依存度が高い赤子や障害者、老人は膨大な社会保険料を支払わねばならず、そんなことが不可能なことは馬鹿でも分かる話である。
社会保険料や税は応能負担が原則であり、金余りの富裕層や大企業が負担するのがソ連では常識である。
自国民に対する経済虐待としか思えない過激自由主義政策は、アメリカ以外の西側諸国でも行われており、ソ連の西方拡大の道義的な根拠にさえなっている。
既に限界に達した資本主義から解放することが、道徳的であるという論理である。
ちなみに、労働者の賃金低下はソ連においても見られる現象で、その原因はもっぱら生産力拡大(ロボット化、IT化)による労働力の供給過剰であると考えられている。
ソ連では労働者保護のために、最低所得保障制度を整備し、毎月10万円前後の生活費を全国民に供給している。
特に日本地方では、産業の空洞化から一部の先端技術産業を除けば、観光と飲食業と公務員ぐらいしか雇用がなくなりつつあり、最低所得保障制度がいち早く導入された。
生産過剰による世界的な物価の下落に対応するには、幕府が最低所得を保障して、労働者に直接給付をするしかないというのがソ連の結論である。
労働者の国で労働者に幕府が生活費を給付するなど20世紀の常識では考えれないことである。
しかし、ソ連共産党や社会党では、来たるべき共産主義社会(資本主義を超克した高次元社会)は、ロボット化、AI化社会とベーシック・インカムであるという認識が一般的である。
すべての労働がロボット化され、AIによって管理される社会では、人間の労働者は不要であり、ロボットが生産した生産物はAIによって完全に平等に配分され、本当の意味でも平等な社会が訪れると考えられている。
話が逸れたが、アメリカはソ連のような最低所得保障制度は完全否定しており、今後も資本主義と過激自由主義政策を続けることを公言している。
2017年にアメリカ大統領に就任したトランプはオバマ・ケアを廃止し、大幅な減税を実施することで一時的に経済を上向かせたが、最低所得保障には否定的であり、
「国民を甘やかすことになり、怠け者を量産するだけの狂気の沙汰だ」
と公言してはばからない。
しかし、2019年から2020年において全世界に広がった新型コロナウイルス感染症において、最低所得保障は毎月最大40万円まで拡大されるなど、コロナ禍による経済後退に対する防壁として機能し、ソ連以外の国でも導入が真剣に検討されるようになった。
ソ連でも新型コロナウイルス感染症との戦いは続いているが、都市封鎖を徹底し、その間の最低所得保障を充実させることで感染拡大の封じ込めと経済の両立に成功している。
特に先行事例として台湾の感染症対策は特筆に値すると言えるだろう。
新型コロナウイルス感染症をただの風邪だと軽視したアメリカや西欧諸国の壊滅的な惨状を考えれば、ソ連式対策の成功は社会主義が資本主義に勝ることを実証していると言えるだろう。
2020年末時点で、毎日1,000人以上が新型コロナウイルスで死亡しているアメリカと50人以下に抑え込んでいるソ連を見比べれば、どちらが正しいかは子供にも分かる話である。
アメリカの総人口が約3億2千万人に対して、ソ連の総人口が5億人であることを考えれば、人口比でも圧倒的な大差がついている。
欧米の資本主義は、新型コロナウイルスに正しく対応ができず、ソ連型社会主義に敗北したと言えるだろう。
なお、ソ連では2020年12月に世界最初のワクチン接種が始まり、2021年3月までに1億人分のワクチンが供給される予定である。
幕府は2020年の江戸オリンピックを2021年に延期して開催することを予定しており、ワクチン接種は日本地方が優先して行われている。
プーチン大老は江戸オリンピックを新型コロナウイルスに対する勝利の式典と位置づけており、開催に向けて万全の体制で臨む意向を示してる。
オリンピックに備えて江戸は大規模な都市再開発が行われており、高架式であった江戸高速の完全地中化が進められている。これによって日本橋が数十年ぶりに青空の下に復帰し、全面的な補修も施されて面目を一新している。
江戸の中心である江戸城も天守閣や本丸御殿が完全木造復元された。
江戸城の木造復元は伝統工法の保存という意味もあったが、製造業の流出で観光ぐらいしか雇用がない日本地方の観光資源開発という側面も大きいとされる。
残念ながら、江戸城の木造復元は、新型コロナウイルス感染症によってその集客力は全力を発揮することはできていない。
しかし、2020年に間に合った日本リニア全線開通によって、ソ連首都の札幌から将軍のお膝元の江戸まで1時間半にまで短縮されており、今後の集客が期待される。
幕府は国家事業として、西比利亜リニア(第3シベリア鉄道)を2035年までに全線開通させるため、西比利亜で工事を進めている。
西比利亜リニアが全線開通すれば、モスクワから江戸がリニア(約12,000km)で結ばれ、最短では2日で行き来することが可能となる。
距離の壁はまだあるものの、西比利亜やヨーロッパがもはや遠い場所ではない時代がそこまで来ていると言えるだろう。
さらにソ連では、リニアを天に伸ばす計画が進められている。
天と地を結ぶ架け橋となることを願ってヒサゴプランの名を贈られたリニア・マスドライバー計画である。
現在、琉球地方の辺野古でソ連や同盟諸国の国際協力体制で建造が進む円環式リニア加速射出装置は、完成の暁には全長25km全高3kmという人類史上最大の人工建造物となる予定である。
富士山を人工的に作るといえばわかりやすいだろうか。
完成の暁には、辺野古宇宙基地と呼ばれることになるだろう。
ちなみに辺野古に建設中のマスドライバーは、電磁石の力で投射物を撃ち出す装置であり、電磁気力を利用するレールガンとは全く別原理のものである。
レールガンは原子力巡洋戦艦「比叡」用に15センチ65口径電磁投射砲として既に実用化されているが、加速度が高くなりすぎるためマスドライバーには不向きなものである。
比叡の15センチ電磁投射砲はソ連海軍の威信をかけて開発されたもので、最大射程はロケット誘導砲弾を使用した場合、200kmに達すると言われている。
下手な対艦ミサイルや戦術弾道弾を上回る射程距離であり、原子力巡洋戦艦の発電力なしには実現不可能な武装である。
レールガンは基本的には対地攻撃用だと考えられているが、仰角90度での砲撃が可能であり、一部の軍事マニアの間では将来的に対宙砲撃や弾道弾迎撃にも使用する計画があると噂されている。
話をソ連の宇宙開発に戻すと、ソ連の宇宙開発計画は、基本的に宇宙移民を目的としたものである。
この点はアメリカの宇宙開発との明確な差異であり、ソ連の宇宙開発奉行所ではアメリカの宇宙開発を、宇宙利用計画と表現する場合がある。
宇宙を生活空間とするために開発するソ連と、地上での生活の便益を図るために宇宙空間を利用するアメリカは目指すところが異なるというわけである。
ソ連の宇宙開発は革命の精神的な根拠となった慈恩主義や氷土宗を思想的な背景に、米ソ全面核戦争から生き延びるという実際的な目標が加わったことで、強力に推進されてきた。
冷戦終結は、ソ連の宇宙開発には大きな影響を及ぼしていない。
なぜならば、既にソ連にとって宇宙開発とは国家を統合する重要なイデオロギーとなっていたからである。
絶対真空への挑戦と克服を通じた人類の真の覚醒を目指す立場は、氷土宗や慈恩主義を背景として、現在では新慈恩主義と呼ばれている。
幕府の歳出削減を推進したイズムィコ政権も、宇宙予算には手を付けなかったほどで、新慈恩主義は共産主義に並ぶソ連の2大イデオロギーとなっている。
共産主義が資本主義を超克した高次元社会を目指すものであるならば、新慈恩主義はそれに適応した人類の精神的な変革を目指すものと言えるだろう。
これにソ連の基本的な道徳である国家社会主義神道を加えたものがソ連の精神といえる。
プーチン大老は共産主義よりも新慈恩主義を重視していると言われている。
また、
「宇宙とサイバー空間が次の戦争の主戦場」
として、現実政治の立場からも宇宙開発を強力に推進している。
選挙のための人気取りという側面はあるものの、プーチン大老は国家指導者として初めてブラン・オービタルに搭乗して宇宙空間を体験している。
これは完全自動飛行のブランだから実現できたことであり、アメリカのスペースシャトルでは不可能である。
ソ連の宇宙開発は基本的に一般市民でも宇宙に行ける時代をつくることを目的としており、ブランやその他の宇宙機も例外なく完全自動飛行が可能である。
さらに00年代におきたロシア内戦で流出した戦術核兵器を使用した一連の核テロは、テロリズムによる核攻撃が可能性の存在ではなく、実際に起こり得ることを証明した。
皮肉な話であるが、一連の核テロはソ連の宇宙開発にとってはプラスに作用した。
核戦争による人類滅亡から逃れるために、依然として宇宙開発(地球脱出)の重要性が再認識されたのである。
地球脱出など考えたこともないアメリカのオバマ大統領は、テロリズムによる核攻撃やそれを発端とした全面核戦争を回避するために、核なき世界を掲げて、核兵器廃絶を推進した。
ニューヨークを核テロで吹き飛ばされたアメリカは、テロリズムと核兵器が結びつくことを極度に警戒しており、2011年に結ばれた新戦略兵器削減条約では戦略核を1,500発まで削減している。
しかし、それでも米ソで3,000発以上の戦略核兵器が残ることになり、世界を破滅させるには十分な量と言える。
米ソが交渉中の次期戦略兵器削減条約は、サウジ内戦後の米ソ間の政治対立によって暗礁に乗り上げており、当面は核の均衡が続く見込みである。
また、昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大も、宇宙移民推進の理論的な根拠となりえると考えられている。
地上が未知の病原菌で全滅しても、宇宙に脱出することで人類存続が可能であるからである。
地球温暖化対策もソ連においては宇宙移民に結びつけて論じられることが多い。
究極の地球環境保全とは、全ての人間を宇宙にあげてしまうことであるからである。地球上での経済活動が停止すれば、自動的にすべての環境問題は解決する。
また、2011年3月に日本地方を襲った巨大地震と津波による壊滅的な被害は、地球が安全な場所ではないことを端的に示すことになった。
日本地方の東北部を襲った津波は25m以上の高さに達して、沿岸部の工業地帯や人口密集地を襲うことになった。
東北部は昔から津波の被害を受けていた地域であり、防波堤建設など十分な対応策が構築されていたはずだった。
それにもかかわらず、津波で壊滅的な打撃を受けたことは幕府首脳部に地球脱出の必要性を再認識させたと言われている。
この地震では被災した沿岸部の火力発電所で爆発事故がおきている。
一時期、同じ場所に原子力発電所を建設する計画があり、地震に対応できないとして沙汰止みになったことが後に明らかとなり、一部の原子力事業関係者が冷や汗を流すことになった。
ちなみにソ連の原子力発電所は地盤が安定した西比利亜にあり、地震による原発事故とは無縁である。
さらに余談だが、この大地震においてプーチン大老は軍の大規模動員を実施し、常備兵力の半数にあたる70万人を被災地へ災害派遣している。
大半は日本出身者だが、西比利亜やソ連に加盟したばかりのロシアやウクライナからの派遣兵士も多かった。
この災害派遣で、初めてアジアを経験したロシア人は数多く、ソ連故地の長閑な風景にカルチャーショックを受ける人間も多かったとされる。
未だにロシア人がウラル山脈の遥か彼方にある日本列島こそ、小悪鬼の住処であると固く信じこんでいたためである。
確かに政治的な重心として日本はソ連構成国として大きな発言力を有するが、人口の点では少子高齢化によってフィリピンの後塵を拝しており、東アジアの大国としての姿は失われつつあるのが現状である。
話をソ連の宇宙開発に戻すと、ソ連の宇宙開発を司る宇宙開発奉行所は、20世紀末には従来型の化学燃焼式ロケットはコストの問題に突き当たり、大規模なブレイクスルーなしでは宇宙移民は実現不可能という結論に達していた。
化学燃焼式のロケットは、ペイロードが10~15%が限界であり、物資輸送の手段としては非効率的なためである。
そこで化学燃焼式ロケットに代わる運搬手段として、人員輸送に特化した宇宙往還機と物資輸送に特化したマス・ドライバーの2系統に分かれる開発計画が立案された。
宇宙往還機のテストタイプが、ブラン・フリートであり、2020年現在でもエネルギア・ロケットとセットで国際宇宙ステーションへの人員輸送に使用されている。
一方のマス・ドライバーはヒサゴプランとして結実し、琉球の辺野古に2018年から建設が始まり、2033年には実用化される予定である。
マス・ドライバーの建設には250兆円が投入されており、イニシャルコストは化学燃焼式ロケットの比ではないが、ランニングコストは18分の1以下まで軽減され、およそ100年で償却される見込みである。
宇宙開発奉行所はマスドライバーの豊富な物資投射能力を最大限活用し、今後半世紀以内に衛星軌道上に宇宙都市を建設し、人類初の宇宙移民を実行すると発表しているが、その前途は多難であるという意見が多い。
関係者の間では、宇宙移民元年=宇宙世紀開闢は22世紀というのが定説である。
もちろん、その頃にはこの記事を読んでいる人間の誰も生きてはいないだろう。
しかし、ついに宇宙に手が届くところまできた星への道は遥か太陽系を超えて、銀河の果てまでソビエトの精神を伝えてくれると確信するものである。




