第二十六話 一回休む。双六では最悪だけど、それ以外は重要なことで云々。
何もない回です。
俺こと吉田英斗は悲しいことに異世界転生を果たし、何でも屋ヴァンヴォリックに仕返しを果たせたのだった、まる。
鬼町との戦いの後、俺がしばいた鬼町の部下たちは闇医者が営む病院擬きで元気にやっているらしい。
そして、破壊しまくったヴァンヴォリックの本部の修繕費を少しは持ってくれという事で二千万ルーカスを支払わなければいけないという事になった。
俺としては念のためとコツコツ貯めていた八千万ルーカスがるため、直ぐ払うことができたのだが、二千万ルーカス、それだけの大金が一気に飛ぶとなかなか痛いわけで俺は絶賛、すねていた。
「ご主人様、落ち込まないでください・・・」
べッドの隅で小さくなってすねる俺の背中を優しくさすりながら、イフは慰めていた。
「でも、命狙われてたのに、ひどくない?」
「うっ」
だが、俺の真っ当な一言にイフは何も言い返せなくなる。
しかし、それでもイフはあきらめなかった。
「ご主人様、こんな世界に飛ばされて、辛いことがこれまでたくさんありました。ですが、ご主人様はご自分の力で乗り超えてきたのです。気を長く、頑張れば倍になって戻ってきますよ」
そう言って、俺の頭をまるで子供をあやすかのように撫でた。
そして、俺は思った。
俺、情けないね。
従者に母性だして慰められるとか、ホント、情けないね。
マジ、情けなし。
そして、俺は思ったことが続くと、冒険がどうのこうのなんて言えないという結論に至り、
「俺、頑張るよ」
そう言って、ベッドから降り、立ち上がって宣言した。
「もっと稼いで、倍を取り戻すぞ!!」
その宣言にイフは拍手と共に「その調子です!」とか「さすが、ご主人様!」とか、いろいろと囃し立ててくれた。
そして、俺の部屋を何かの用で訪れたサワムラはそんな光景を見て一言。
「何やってんっすか」
ごもっともだった。
ヴァンヴォリックとの戦いから数日たった今。
ヴァンヴォリック壊滅まではいかなかったものの、現在、ヴァンヴォリックは復旧のための休止という状況に追いやることができた。
ギルドの方からはそれとなくお咎めを受けたが、王国側から報酬をいただいた。
どうやら、俺が元居た世界で言う国指定の危ない人達と似た扱いをしていたらしく、この世界で逮捕ではなく、討伐という形をとると結構な大金がもらえるらしい。
らしいが、まだ報酬をいただくという契約を下だけであり報酬自体は届いてはいない。
一応、報酬をもらうという手続きだけはしているため、実質的には頂いたともいえよう。
そして、サワムラハルコはどうやら長いモノに巻かれる性格らしく、かつてのボスを倒した僕に忠誠を一方的に誓い出した。
いろんな意味で怖かったが、仲間が増え、食卓も騒がしくなった。
ヒエラルキーが僕を頂点に、イフ、最下層にサワムラという状況が続いているのがなんとも言えないところだが。
そして、今日、メンタル復活を果たした俺は何もしない日を設けることにした。
サワムラについても、いろいろ聞きたいことがある。
という事で、現在、俺たちはバーズさんとの修行で訪れた崖の上に広がる草原にいた。
俺は修行中、ここで崖を背にクラスタベアと対決させられたそれなりにキツイ場所なのだが、修行ではない今、この場所は静かで見晴らしの良いだけの存在になっていた。
イフはさまざまな草はなに興味を持っているらしく、口にしてみたり、焼いてみたり、子供の様な興味津々さで、人間離れの実験をしていた。
俺とサワムラは隣り合って、草原に座り、いろいろと質問の続きをしていた。
「サワムラ、大分、俺たちに馴染んだな」
「吉田さん、アタシ、馴染んだんじゃなくて、イフ様に馴染まされてるんすよ」
「仕方ないだろ、初対面があれなんだ」
「そうっすよね、申し訳ないです」
そう言ってサワムラは申し訳なさそうに謝って、こんな質問をした。
「で、でも、アタシを仲間に入れて、良かったんですか?」
「は?」
「いや、アタシ、吉田さんを殺そうとしていたわけですし…」
「いや、良かったも何もイフが仲間に入れるって言った時点でもう受け止めるしかねぇなって」
その答えにサワムラは砕けたような笑いを見せ、
「なんか、出会いはあれっすけど、アタシ、吉田さんの仲間になったことって運命なのかなって」
なんとも言えないことを口にした。
いままで、彼女がどんな生き方をして来たかわからない、というか、訊く気もない。
だが、肩を並べる相手が出来たのは何となくわかった。
だからあえて、俺は言う。
「運命って、お前、気持ちわりぃな」
読んでいただきありがとうございます。
予告しておきましょう、次回、主人公組、出ません。
では、次回もお楽しみに!




