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ep.0 プロローグ
砂混じりの風は、痛いくらい乾いていた。
「おい! 待ってくれ!」
無精ひげの村人の声で、旅人の足は止まった。灰色のフードが風にあおられている。
旅人は村人に振り返ることなく、依然、視線を遠く前方の山に向けたままだ。
「今は山に人を入れるなと言われている!」
旅人は聞いてこそいるが、そのまま歩き出そうとしている。
「賢者さまがドラゴンを退治なさるんだ! だから、今は山に入っちゃいけない!」
旅人はようやく半分ほど村人を振り返った。その顔はフードの奥に隠れたままだ。
「私はその賢者の唯一の弟子なんだ。だから、いいだろ」
「ど、どういう理屈だよ……」
「ともかく、私はこんなところで足止めを食う気はないし、誰がなんと言っても山へ行く。邪魔するなら、電撃でも食らわして失神させてやるからな」
冗談や安い脅しではない。本気の言葉だ。
村人が怯んだのを見て、旅人は言葉どおり山へ向かって歩き出した。
「師匠……なんで私を置いて行っちゃったんだ……」




