第二十六話
一瞬の出来事に脳が追いつかない。一体何が起きてどうなったのか。
「もう終わりか?」
目の前で声が聞こえ、不自然に息が止まる。
恐怖から顔を上げれないのか、もしくは顔を上げてしまえば終わってしまうと思ってなのか翔は動くことができなかった。
どうする、この状況を打破するにはどうしたらいい、何の能力を使えばいい、それに体の痛みもどうにかしないと。
「の、能力、ぐっ!」
能力を発動しようとした翔の喉元にイスピナードの右手が押さえつけられた。
「ライオネットからどんな能力かは聞いている。そう簡単に使わせはしない」
イスピナードはそのまま持ち上げ翔の足が宙に浮く。
「っ……!」
イスピナードの右手を振りほどこうとするも、まるで鉄の塊に掴まれているかのようにビクともしない。それに言葉にしないと能力が発動できないことも知らなかった。辛うじて呼吸はできるが喋るための息が通らない。
「さて、後はどうしたものか。ライオネットに連絡しようにも方法がないな」
能力も使えず、この状況を脱することもできない。いくら考えても方法など思いつくはずも無く、まさに絶体絶命の状態である。
絶望が翔を襲う中、視界の端に赤い光が映る。
「……ん? 何だ」
イスピナードも気づいたのか首を捻り背後に向く。
翔も目線だけをイスピナードの背後に向けると、そこには倒れたままの少女を中心に赤い魔法陣が展開されていた。
「感覚は全て失っているはずだが……」
訝しむイスピナードだが翔も同様であった。
感覚は失っても発動できるということなのだろうが感覚がない以上、闇雲に発動するしかない。
と考えた次の瞬間、少女を中心に轟音と共に爆発が起きた。
「くっ!」
「っつ!」
当然、近くにいたイスピナードと翔は爆風に巻き込まれ飛ばされてしまう。
だがそのおかげと言うべきかイスピナードの手が翔の喉から離れた。
「ってぇ……」
翔は地面に投げ出されるも、転がりながらどうにか体勢を立て直す。
「あいつとイスピナードは……?」
顔を上げ状況を確認する。
爆発が起きたところに視線を向けるがそこには少女はおらず、イスピナードは少し離れた位置で今まさに立ち上がろうとしていた。
翔よりもイスピナードの方が爆発した位置に近く、イスピナードが盾のようになったおかげで翔の方が被害が小さかったのだろう。それでもイスピナードにとってはかすり傷なのかもしれないが。
しかし翔にとっては望んでいたチャンスである。ここで能力を使わなければ本当に終わってしまう。
「の、『能力」
口を開こうとしたと同時に、イスピナードの眼光が翔に向けられた。
「させんっ!」
「創造』っ!」
瞬時に翔を覆うように右手が迫る。
が、翔は両手で防ぎ受け止めることができた。
「どうにか……、間に合った」
必死に堪えながらも翔はイスピナードの右手を捕らえることができた。




