第二十四話
「えっ」
不自然に声を上げたのは翔の目の前にいる少女であった。
「どこよ……、ここ」
少女が困惑するのは当然である。
何故なら翔と少女だけが一瞬にして、木々に囲まれた別の場所に飛んだからだ。
少女は首を振りながら辺りの木々を確認する。もちろんこの場にライオネットはいない。
「……また、あなたがしたの!」
すると少女は勢いよく翔の方へ向いた。
翔は能力を使った。当然同じ能力は使えないため移動する能力は使っていない。
翔が使ったのは翔と少女を移動させる能力ではなく、世界ごと動かす能力を使ったのだ。
つまり発想の逆転である。翔自身が移動できないのならば世界を動かす能力を使えば問題ない。そうすることで、あの場所から一番遠い場所まで来ることができた。
だが少女にとってはどのように移動したかなど関係なかった。
「なんであなたは……、何度も私を助けるような真似をするのよ! あなたが何をしても私はこの世界を壊す、それは変わらないのよ!」
前回と同じように少女は言ってきた。
「……やっぱり、俺にはお前がこの世界を壊そうとしているとは思えない。無理をしているようにしか」
「何を根拠に言っているのよ」
無理矢理、少女は言葉を挟んできた。
「それは……あの時、助けてって言ったから……」
翔にとっては一度救ってくれたこと、どこか無理をして嘘をついているように感じたこと、そして何よりも一度だけ言った助けてという言葉、それがありどうしても世界を壊すということが信じられなかった。
「あの時もう一つ私は言ったはずよ。この世界を壊して、って。そうしないと私を助けることなんてできないわよ」
「だ、だったら俺は、この世界を壊さずにお前も助ける!」
その一言で少女は苛立ちを露わにする。
「馬鹿なこと言わないでっ! そんなことできるわけないでしょ! 理想ばかり並べて希望だけ持たせて、それで最後は…………独りに、なってしまうんじゃない……!」
独りになってしまう、という言葉に翔は違和感を覚えてしまった。
いや、そもそも違和感というのも今に始まったわけではない。初めて少女と会話した時も同じような感覚を覚えた。
「お前、もしかして……」
「何よ」
それはまるで経験したことあるような言い回しであった。
「…………前の世界でも同じようなことがあったのか?」
「っ!」
少女は唇を強く噛み締めた。
それは自ら無理矢理言葉を塞いでいるかのように。
「前の世界でも、独りで戦ってたのか……?」
「意味がわからない! それに、あなたが考えているほど簡単なことじゃないわ!」
「じゃあそれを教えてくれよ。話さなきゃ何も分からないだろ」
「だから! いつ私が助けてって言ったの! 誰も頼んでないじゃない!」
「それは俺が」
と、翔が言いかけた言葉に重なるように、
「話しているところ悪いが、これは一体どういう状況だ?」
一切の気配を感じることなく、前触れもないように声が聞こえ翔は慌てて首を向ける。
「イスピ、ナード……」
そこには狼顔の男、イスピナードがいた。




