第二十二話
「いいか、その場の感情を優先するな。先を見据えて行動しろ」
最後に言うとライオネットは力強く一歩踏み出し、少女のいる屋上へ飛んだ。
そしてそのまま少女の目の前に重く着地すると狙いを定めるように顔を向けた。
「前回はちょっとした邪魔が入ったが、二度はねえからな」
「そうね、確かに二度はないわ。私を捕まえるチャンスはね」
「相変わらず口だけは達者だな……」
グッと、ライオネットは足を踏み込み一気に少女との間合いを詰める。
「はあっ!」
ライオネットは大剣を振りかぶり、少女は左手に青の魔法陣を展開する。そしてそのまま魔法陣で受け止めると、無音の衝撃が走りライオネットの大剣は静止した。
「それは私に効かないわよ」
「だからどうした」
ライオネットは素早く二撃目を振り抜き大剣を叩きつけにいく。少女はその場から下がるように避けると、叩きつけられた大剣はあたりに瓦礫を飛ばしながら地面に激しくぶつかった。
ライオネットは土煙の中から下がった少女を再度狙いを定め大剣を肩におく。
「効かないっていってもその変なので防いだ場合だけだろ。だったらそれよりも早く攻撃すりゃいいだけの話だ」
「でも私に当たってないわ」
「強がんなよ、結構ギリギリで避けてたじゃねえか。それもいつまで持つかだ」
続けてライオネットは攻撃を仕掛けにいき少女も防いだ。
そんな屋上で繰り広げられている戦いをただ翔は見ることしかできないでいた。
ライオネットの言ったことは正しい。別に今すぐ説得する必要はなく、可能性がある内は捕らえておき、それからでも問題はない。
頭では分かっている。分かっているからこそ一歩を踏み出せないでいるのだ。
ライオネットと少女の戦闘を眺めることしかできない自分に拳を強く握ってしまう。
と、眺めていた翔は少女の行動に違和感を覚えた。
それはライオネットに対して一切の反撃をしていないことである。
全て防ぐか避けるかで対処しており何故か攻撃に転じず、その行動に疑問を感じる。
だが翔は昨晩のジギルノヴァとの会話を思い出した。
確かジギルノヴァも逃げるばかりで戦おうとはしないと言っていた。だとすると、少女はわざと攻撃しないのか。
翔の中の疑問が次第に確信へと変わっていく。
「まさか、あいつ……」
顔を上げて改めて戦いを見ると、少女が段々と追い詰められていた。
そしてライオネットの攻撃についていくことができなくなった少女は遂に一撃をもらってしまう。
「きゃっ!」
屋上から少女は翔の元まで飛ばされ、近くの壁に鈍い音と共に衝突する。
「だ、大丈夫か!」
翔は考えるよりも先に土煙の中の少女の元へ走り出した。
小さな身体があれだけの勢いで壁にぶつかっては怪我だけで済むはずもない。
生きているのかどうかも不安になりながら目の前まで来ると、少女は瓦礫の中から平然と立ち上がった。
「平気、なのか……?」
まるで何事もなかったかのように立ち上がった少女が不思議である。壁とぶつかる時に魔法陣を展開した素振りはなかったように見えたが怪我一つない。
「何であなたが私の心配をするのよ。私はあなたの敵よ」
「それは……」
翔自身、少女のことを敵だとは思っていない。
しかし今の翔はライオネット達と共に行動している。少女からしたら敵そのものだ。
「勇気もないくせに私の邪魔をしないで」
少女の右手に魔法陣が浮かび上がったと同時に、翔の背後でドスンと音が鳴った。




