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風呂上り

 風呂上り、キッチンに行って牛乳をもらって一気に飲み干す。

 冷蔵庫は魔法技術で作成された物があるため、足の速い飲食物もこうして保管が可能だ。


「ふぃー」


「ひげ」


 牛乳を飲みほして一息ついていると後ろから声がかかった。

 振り返ると誰もいない、という冗談をしたらコッペリアに腹を殴られた。

 小さくて見えなかったのは事実なんだが、そんなに思いっきり殴る事はないじゃないか。


「それで、どうしたよ」


「お嬢様がのぼせたんで早々にあがってきた。

何か飲み物」


「ふむ」


 ひとまず果物をいくつか取り出して、絞る。

 それを水で割ってコッペリアに差し出した。


「ありがとう」


 果実汁水割りを受け取ったコッペリアはそのままとてててと走り去ってしまったが、転ばないか心配になった。

 俺は残った果物にかじりついて、口の中に残った牛乳の生臭さを消す。


「さて、と」


 そうして残骸を捨ててコップを洗い、寄宿舎に戻った。

 夜は執事の仕事はない。

 正確に言うなら執事の仕事は交代制で働いている。

 ついでにボディガードも兼業なため危険手当があるからだ。


「給料か……」


 今までは日雇い符合性だったため、月額払いの給料というのは受け取ったことがない。

 そう考えると、初任給の使い道には困ってしまった。


 必要な物、欲しい物がない。

 そう考えてところで昼間のことを思い出す。

 お嬢様と先輩と出かけた時だ。


 たしかあの時先輩は腰から剣、あれはレイピアだろうか。

 華奢な作りの物を吊るしていた。


「武器」


 言葉にしながら鍛冶屋でもらった豪華なナイフを手に取る。

 宝石などの使用は最低限に、職人の技のみで芸術性を高めた逸品だ。


「剣とかあった方がいいよな」


 武器を携帯するというのは一種のアピールだ。

 私は戦闘力を有している、私の役目は戦う事だ、という意思表示であり武器を持っていない、もしくは見えないというのは非常に危うい。

 今後護衛としての仕事も増えてくるだろうから、何か持っていてもいいだろう。


「剣……いや、刀だな。

どうせなら男の子のあこがれの日本刀、それを二本だ。

宮本武蔵みたいでいいな」


 夜中のテンション故か、少々おかしくなっているかもしれない。

 それもいいだろう。


 だけど日本刀か、作り方は知らんし……何より使いこなせるかが問題だ。

 この世界主流の剣は力と重量で斬るような物体だから、力任せに使っても何とかなっていたが、日本刀はわざと切れ味を追求している。

 それをすぐに会得できるとは思えない。

 でも欲しい。


 無限ループに陥りつつも、結局作成依頼だけはしてしまおうと心に決めてその日は部屋で眠りについた。

 

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