入浴
「ふぃ……」
二人の頭を洗ってから、俺も体と頭を洗い湯船につかる。
今日一日の疲れが湯に溶けていくような錯覚さえ感じる。
「お湯加減は? 」
「ちょうどいいわ」
一応仕事中という扱いになっているので、お嬢様に声をかけて確認を取る。
それなりに熱い湯だけれど、問題なさそうだ。
「私ちょっと熱い」
「そうか、サラマンダーよりは熱くないから頑張れ」
コッペリアは顔を真っ赤にしているが、まだ大丈夫だろう。
「それにしても……年頃の女性二人が野郎と一緒に風呂って」
「ぐ……」
「半分は私の責任ですけど、お嬢様も大概ですよね。
コッペリアへの対抗心と、引くに引けず押し切った感じが」
「う、うるしゃい! 」
「でもまあ俺としては役得ですけどね」
ゆでだこのようになっているお嬢様だったが、暑さのせいではないだろう。
もうね、許されるなら抱きしめたい。
そのくらいに可愛い。
「……タオルとらないんですね」
「にゃ! にゃにを! 」
「いや、ふと思ったんですよ。
タオル巻いたままだとお湯で体に張り付いて気持ち悪いんじゃないかなと」
尚、俺はタオルは頭の上に載せている。
要するに隠していない。
ついでにお湯も濁り湯ではないので、お嬢様達には丸見えだろう。
というかさっきからちらちらとみられてる。
コッペリアに至ってはガン見している。
「見るな」
「前にも見た」
コッペリアの淡白な返しに、思わず言葉が詰まる。
確かに前にも見た。
ついでに言えば今現在さらしているコッペリアの裸でさえすでに何度も見ている。
この状況、お嬢様だけがアウェイである。
「カップルでもあるまいし平然としているのも変な話だよな」
「……ひどい私とは遊びだったのねー」
「そんな人形みたいな表情で言われてもなぁ」
無表情で伝統的なセリフを吐くコッペリアの頭を一発はたく。
お嬢様も嘘だと理解しているのか、特に表情に変化はない。
面倒なことにならずに済んだが、酷い事を言ってしまうとッペリアの相手がすでに面倒くさい。
「二人とも少しは隠しなさいよ……」
若干あきれた様子のお嬢様だが、俺は別にみられてもかまわない。
コッペリアは赤面しているが、恥ずかしいわけではなく熱いだけだろう。
「サツキ、のぼせそう」
「あがれよ」
少々目つきの怪しくなったコッペリアがふらふらと寄ってくる。
「だっこ」
「裸同士でそれは流石にまずいから却下」
そんな場面を見られてはどんな噂が立つかもわからない。
ただ、間違いなく俺はロリコンというレッテルを張られるだろう。
「誰かいませんか」
「はい、御呼びでしょうか」
声を上げてメイドさんに呼びかける。
一応、待機はしていたらしい。
「コッペリアがのぼせそうなので、手伝ってやってください」
「かしこまりました」
そう言って浴室に入ってきたメイドさんは、コッペリアを抱きかかえて出て行った。
残されたのは俺とお嬢様のみ。
「……二人だけだと広く感じますね」
「そうね」
「…………」
お嬢様が目を合わせてくれない。
ちらちらとこちらの様子をうかがっているのはわかるが、どういう対応をすればいいのかわからないのだろう。
俺だってわからんさそんなもん。
「サツキは、さ」
「はい」
「コッペリアと仲良いわよね」
「そうですね、なんだかんだでパーティ組んでいた期間はいちばん長かったですから」
「そうなの?
なんで解散したのか、聞いてもいいかしら」
「あーあれは一年位前の事です」
思い出話、というには少々荒々しい。
けれど俺の中では大切な記憶だ。
それを一つ一つ思い出す。




