夕飯
それからは屋敷に戻って夕飯を食べる事になった。
お嬢様はケーキをあれだけ食べて、そしてコッペリアは20人前以上の料理を食べてどこに入っているのかわからないほどに食べていた。
お嬢様普段小食なのに珍しいと思ったらコッペリアに対抗していたらしい。
蟻がドラゴンに対抗するようなものだ。
「ぐ、ぐるじい……」
「はいはい、コルセット緩めるから後ろ向いてください」
今にも死にそうな声を出しているお嬢様に、メイドの一人が手を差し伸べる。
ただそれは男がいる前でやってよい行為ではないだろう。
「はい、少しはましになったかと」
「うぅ……ありがとう」
「お嬢様お風呂の準備が整ったとのことです。
お背中流しましょうか」
今しがたメイドから耳打ちされた言葉をお嬢様に伝える。
背中を流す、というのは俺が勝手に付け加えたことだが。
「……お願いしようかしら」
お嬢様の予想外な返しを受けて、てにもっっていたワインを取り落としそうになる。
ついでに旦那様と奥様とコッペリアが目を見開いている。
というか旦那様に至っては俺の胸ぐらをつかむために立ち上がって、奥様に襟をつかまれている。
「この人を雇うと決めたのはあなたでしょう。
娘の恋心も知っているでしょう。
なら野暮なことはしてはいけませんよ」
奥様、貴方素敵です。
「私もご一緒したい」
そう言ったのはコッペリア。
なるほどなるほど、対極の二人に挟まれて息もつかない入浴。
絶対嫌だ。
というか用もないのに誰かと一緒に風呂に入るというのがまずいやだ。
風呂は一人でゆったりとつかるから、疲れも取れるという物だ。
「……雇い主命令、一緒にお風呂に入りなさい。
コッペリアさん、お客様なのでご遠慮くださいと言いたいところですが……そうですね。
三人でお話ししたいのでどうぞ」
俺の嫌そうな顔を見てだろう。
お嬢様は絶対に逆らえないように命令という形で俺に指示を出してきやがった。
貧相な体を見ても楽しくないのだが、この際だ。
体の隅々まで洗ってやろう。




