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8. 甘くて苦いとある朝

久しぶりの更新でございます

おまたせしました

  俺は秋傘隼人、ただの喫茶の店員だ。

ここは本当に色んな人が来る。

街のご老人、帰り際の高校生、休憩中のサラリーマンなど、大通りをそれた人目につきにくい店にしては多いのではないだろうか。

常連の方々の座る席は基本一緒で、こちらとしては都合がいい。

そんな優しくて儚い日常は、まだ夜も開けてない時間に鳴るお気に入りの音楽を元に始まってゆく。


◆◯◆◯◆◯◆◯◆


先日の大雨でびしょ濡れになった誰もいないいつもの道を歩き、ビルへ向かう。

「結局、あの後は普通に営業できてよかったけど、あんなのが続けて起こると大変だなぁ。」

午前はとてつもない大雨だったが、昼につ近づくに連れ止んでいき、午後からは客も入ってきて平常運転できた。

停電なんて起きようものなら冷蔵庫の中身が全滅してしまう。前回は短時間で済んだのと周りが涼しかったから無事だったのであって、そう何回もあってもらっちゃやっていけない。

そのため、今日は一日中曇りだが、気を抜けないのである。

「今日は何が売れるのだろうか。」

そんな事をつぶやきながら歩いていると、一つのビルが見えてくる。

そのビルの階段を登り、手慣れた動作で2つの鍵を開ける。

奥へ入り、いつものエプロンを着る。玄関マットを敷き直し、傘立てを置く。

それを済ませた後に。やっと仕込みが始まる。

いつも通りの仕込みを済ませ、看板を「open」の向きに変える。

これで、客は店が空いていることを知り、店のある二階へと階段を登ってゆく。

(さてと、今日はどんな人が来るかな?)


◆◯◆◯◆◯◆◯◆


カラーン

ドアから人が来たことを知らせるベルの音が聞こえる。いつもと同じように案内する。

「いらっしゃいませ。お好きなお席へどうぞ。」

うん?いつも通りではないじゃないかって?そんなのどうでもいいだろ。

(それにしても見たことないな。新規さんか?)

そんな事を考えていると、20代前後と思われるその男性は少しだけびっくりしたかのように

「あ、はい。わかりました」

と返事をして窓際へ向かって行く。

そのそばに行き

「ご注文がお決まりでしたらお気軽にお申し付けください。」

と、伝えておく。呼び出し機が置けるほど金はないのだ。

伝え終わると俺はカウンターへ戻り、売上や在庫などを確認しながら待つ。

そんなことをしながら待っていると

「すみません」

「はい、ただいま伺います。」

呼ばれた。おそらく注文だろう。

何?俺の口調がいつもと違うって?別に変わったっていいだろ!

俺が彼の席へ向かうと

「えぇっと...このフルーツサンドってやつと...えーと...アフォガート...を願いします。」

なんか途切れ途切れだな。

「かしこまりました。フルーツサンドとアフォガートですね?」

「あっはいそれでお願いします。」

朝からアフォガートだと?罪深い...

俺はエスプレッソを淹れている間にフルーツサンドとバニラアイスを用意する。本当はエスプレッソは直火式を使いたかったのだが、室内で使ったら危険だし、提供にも時間がかかるという理由で別の方式を使っている。

完成したエスプレッソと共にフルーツサンドとバニラアイスを持っていく。

「おまたせしました。フルーツサンドとアフォガートでございます。」

「あ、ありごとうございます。」

無事届けられたためカウンターへ戻る。

そしてカウンターから観察していると、フルーツサンドを美味しそうに頬張っている。その姿は先程までとは別人なのではないかと思うほどの変わりようだ。

しかし、フルーツサンドを食べ終わり、アフォガートを食べ始めようとした瞬間

フリーズした。

無理もないだろう。自ら熱いコーヒーを冷たいアイスにかけるなど、初めてで躊躇無くかけられる人間など存在しないだろう。一度聞いたことがあったりしたらともかく今ここで初めてアフォガートと出会ったりしたのならなおさらである。

「すみませ〜ん」

やっぱりこうなる。

「どうかされましたか?」

「これってどうやって食べるんですか...?」

聞かれると思って事前にgo-gle先生に聞いといてよかった。

「そのコーヒーをこのアイスにかけて召し上がってください。」

「え?」

やっぱりそーなるよねー。

「アイスの一番美味しいタイミングはどこだと思いますか?」

「えっと...溶けかけの時間?...ですかね」

おっ。わかってるじゃん。

「それを意図的に作り出すんですよ。」

「へー...そうなんですか...やってみます。」

「ぜひやってみてください。」

覚悟も決まったようだし、俺は邪魔をしないようにカウンターへ戻る。

カウンターから観察していると、意を決した顔で彼がアイスにエスプレッソをかけている。

そして、それを口に運んだ瞬間

「!?」

彼の顔は一気に笑顔になっていった。

(うまいだろ?)

がっつかずに一口一口を堪能しているようで、その食べている姿はある意味優雅に見えた。


◆◯◆◯◆◯◆◯◆


その後はアイスが溶けて来たようで、食べる速度が少し早くなった。

そして会計の後に

「色々ありがとうございました...また来ます...!」

と言ってくれた。

「いつでも待ってますよ。」

とだけ返して店から出ていく背中を見送った。

また来てくれるかはわからないが、そう言ってもらえたことがとりあえず嬉しかった。

(また来てくれるといいな)

なんて思いながら昼の仕込みを始めるのだった。

色々キャラが曖昧になってたりある場所は知らせてくれると幸いです。

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