表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/127

帝国騎士バルドス

 バルドスは、西の大国ソルディア帝国に仕える近衛騎士だった。

 その武勇は国中に轟き、帝国最強の剣士の一人と呼ばれていた。

 彼にとって剣とは誇りであり、帝国と民を護るために振るうものであった。


 だが――ある時、帝国を揺るがす反乱が勃発する。

 その鎮圧命令を受けたバルドスは戦場に赴いたが、彼の前に立ちはだかったのは罪なき民を巻き込んだ“粛清”の命令だった。


 王命と良心の板挟み。

 彼は苦悩の末、王命に背き、民を庇った。


 その代償は重かった。

 忠義を尽くしたはずの帝国から「反逆者」として追放され、剣も地位もすべて奪われた。


「……これが、俺の忠義に返す答えか」


 誇り高き帝国騎士は、その日を境に“裏切られた騎士”へと堕ちた。


 絶望に彷徨う彼に、氷冥王ヴァル=ノクトが手を差し伸べる。

 「おまえの剣に居場所を与えよう。帝国に捨てられた忠義を、我が理想に捧げるのだ」


 バルドスは迷わなかった。

 氷冥王の理想にこそ価値を見いだし、彼に忠誠を誓った。


 その身に与えられたのは異形の大剣――《碧刃》。

 灼熱と氷結という相反する理を宿した剣は、炎を凍らせ、氷を燃やすという矛盾を現実に変える。

 振るうたびに大地は凍りつき、同時に灼熱の裂け目を刻み、いかなる防御も無意味にする。


 その姿に、人々は畏怖を込めてこう呼ぶ。

 ――黒羽の幹部「碧刃」バルドス、と。


 寡黙で冷徹。

 彼は帝国に裏切られた憎悪を胸に秘めながらも、それを表に出すことはない。

 ただ氷冥王の理想のために、全てを斬り伏せる剣として生きる。


 だが――彼の過去を知る者はまだ生きていた。

 かつて同じ帝国騎士団で剣を交え、互いに腕を認め合った戦友。

 その名はガルド。


 帝国に背を向けた二人の道は、やがて敵として再び交わることになる。

 それは、バルドスにとっても、ガルドにとっても、避けられぬ宿命だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ