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俺はマコト!!異世界転生者だ!!①

「ついに魔王を倒し、世界を救うことが出来たぞ!!」


 魔王の死体を背に勝利宣言をする俺ことマコトは異世界転生者だ。


 俺はひょんなことから異世界に転生することになった。


 どうやら、神様の不手際で本来死ぬ予定のなかった俺が死んでしまったらしい。


 そのお詫びということで記憶を保持したまま異世界に行くことになった。


 だけど、そのまま異世界転生させるのは神様の世界ではルール違反らしい。


 そのせいで、神様も罰を受けてしまうことになる。


 だから、神様は条件として転生する世界を魔王から救うということが条件だった。


 それだけでなく、神様はお詫びとして俺にチート能力までも与えてくれた。


 他の人よりもレベルが上がりやすく、その上限値もないのに加え、魔力量も規格外!


 他にも全属性の魔術も扱え、武術の才能までも俺に与えてくれた。


 それだけでも異世界生活はイージーになるってのに神様はこれでもかと神様の加護までくれた。


 この加護があると、寿命の概念も消え、ほぼ不死身になるそうだ!


 やったな!これで異世界生活も楽だぜ!


 そんな神様とのやりとりがあった後、俺は異世界に転生した。


 転生先は貴族の家であったこともあり、裕福な暮らしもできたし、12歳で迎える選定の儀式で正式に自分が勇者であると公表された。


 それで、俺は魔王を倒す旅に出たのだが、その先でいろんな仲間もでき、恋人も何人かできた。


 俺の生活は順風満帆だ!


 俺は魔王を倒した後、婚約者である姫と結婚し、その国の王となった。


 かつての仲間とも仲がいいし、中には側室として迎えた仲間もいる。


 俺は勝ち組と言っても過言ではなかった。


 だけど、俺はこれだけでは満足できなかった。


 俺は神から与えられた強大な力がある。


 この世界ではもう相手になる奴なんて一人もいない。


 いや、もしかしたら他の世界でも俺に敵う奴はいないのかもしれないな。


 今なら神だって超えられるかもしれない。


 いや!俺なら超えられる!


 そうやって、思い立った俺はすぐに行動に移した。


 日々の鍛錬を増やし、魔術の研究にも没頭した。


 時には残酷だと言われるような実験も行った。


 その成果もあり、俺はついに別の世界へ移動する次元間移動の魔術を編み出した!!


 やっぱり俺は天才だ!!


 俺はこのまま他の世界に移動し、その世界も支配してやると思った。


 いや、このまま全ての世界を支配してやる。


 俺はそう考えていた。


 そして、この時の俺は本気でこんなことが出来ると思っていたんだ。


 本当に愚かだよな。


 所詮は借り物の力だ。


 それに俺は神という存在を甘く見すぎていた。


 俺がよく読んでいたライトノベルの主人公たちは神すらも超えた力を手に入れていた。


 だから、俺もあいつらみたいに出来ると思ったんだ。


 だけど、現実は創作物とは違う。


 根本的に神という存在は人間とは隔絶された存在だったんだ。


 俺はずっと、心の中を読まれ、計画も読まれていた。


 本当に馬鹿だよな。


 欲張らずにこのままこの世界で穏やかに暮らしておけば、何も起こらなかったのに。


 俺が次元間移動の魔術を生み出した夜、俺はたまたまトイレに行きたくなり、一人で城の廊下を歩いていた。


 普段なら、こんな危険な真似なんて絶対にしない。


 だけど、この時はなぜか、一人でトイレに向かってしまったんだ。


 きっと神によって運命が定められてしまったんだろう。


 俺がトイレに向かっている最中、いきなり胸の辺りに激痛が走る。


 俺はあまりに急な事態に驚きながらゆっくりと視線を下ろしていく。


 そこには血塗られた剣の刃先が俺の体から飛び出していたんだ。


 俺はあまりに急な事態に思考が追いつかない。


 俺はパニックになるあまり、剣の刃先を手で持ち、引き抜こうとした。


 だが、抜けない。


 かつてない痛みに直面した俺はパニックに陥っていたこともあり、今の自分の状況を理解できていなかった。


 仕方ないだろ。


 今までたくさんの戦場を駆け抜けたが、こんな痛い思いをするのは初めてだったんだ。


 俺は神様の加護で不死身だったから何度も致命傷を受けたことがある。


 他にもたくさんの傷を受けたが、神様の加護の効果でその全てに痛みがなかったんだ。


 俺は初めて感じる感覚にパニックになっていると、後方から声が聞こえてくる。


「はい、お疲れ〜」


 俺は恐る恐る後方へ視線を向けると、そこには一人の人物が立っている。


 全身黒ずくめで夜であることもあり、どんな服を着ているのかすらも詳しく分からない。


 顔には何かが描かれている仮面を被っており、とても不気味だった。


 そして、その人物の手には俺を貫く剣が握られていたんだ。


 俺が後ろを振り向くと、そいつはまた語りだす。


「お前のお陰で世界のバランスはまた保たれたよ。やったね!君は英雄だ!」


 その者は飄々とした感じで俺のことを褒め称える。


 それは本心からくる言葉じゃなくて馬鹿にするための言葉だって俺でも分かった。


 俺は自分のことを馬鹿にされたことに激情し、俺が編み出した魔術の中でも最高威力のグングニルを放つ。


 至近距離で放たれたグングニルは後ろに立つ人物に直撃する。


 俺はこの一撃で仕留めたと確信した。


 だけど、


「もう死ぬってのに元気な奴だな〜君は。最後ぐらい大人しく死んでくれないかな?マジで不快なんだよな」


 そいつは無傷の状態で立ってたんだ。


 俺は確かにこいつに直撃させた。


 絶対に魔法防壁なんかで防がれたなんてことはない。


 だけど、こいつは無傷なんだ。


 俺の全力の攻撃を喰らっても無傷でピンピンしてやがる。


 俺はここで完全に心が折れた。


 明らかにこいつは俺との実力差がありすぎる。


 絶対に勝つことなんてない。


 俺がそのことに絶望していると、こいつは俺から剣を抜いた。


 俺はその場にそのまま倒れ込む。


 なんでか知らないけど体に力が入らないんだ。


 俺は倒れた後、ありとあらゆる力を振り絞り、必死に逃げようともがいた。


 ここから逃げ切れさえすれば、神様の加護で傷を回復させることが出来る。


 その後ならいくらでもやりようがある。


 俺はそう思いながら必死に足掻く。


 その様子がこいつにとってはさぞおかしかったのだろう。


 腹が立つような声で話しかけてくる。


「いやいや、君は本当に愚かだね。ここから逃げ切れさえすれば、立て直すことが出来ると思っているよね?本当に君は愚かだ」


 こいつは俺のことを心底見下したように語りかけてくる。


 俺ははらわたが煮え繰り返る感覚に襲われながらも我慢してもがき続ける。


 その様子をこいつは最初こそ愚かだと笑っていた。


 だが、すぐに飽きてしまったみたいだ。


 心底つまらなそうにこいつは語りかけてくる。


「ここから逃げても君の死は確定しているよ。だって、君に与えられた不死身の加護は発動しないからね。まあ、辺境の世界を担当している神程度の加護なんてたかが知れてるからね。これはドンマイとしか言いようがない」


 俺はこいつの言葉を聞いた時、耳を疑った。


 不死身の加護が効かないだと?


 それなら俺はこれからどうなるっていうんだ。


 俺は迫り来る死を自覚した瞬間、恐怖が込み上げてくる。


 俺はその恐怖に押し潰されそうになりながら、


「い、嫌だ…まだ死にたくない…」


 俺は情けない声で助けを求めた。


 い、嫌だ!


 俺はまだやり残したことがある!


 今月には子供も生まれるんだ!


 こ、こんなところで!!


 こんなところで死にたくない!!


 これからもっと幸せになるはずだったんだ!!


 い、嫌だ…


「死にたくない…助けて…お母さん…」


 情けなく助けを求める俺にこいつは容赦のない言葉を浴びせる。


「残念、君はどれだけ願ったとしても今ここで死ぬんだ。母親に助けを求めても無意味だよ?だから、さっさと死のう?そっちの方が楽だよ?」


 こいつは俺にとっとと死ねと言ってくる。


 それでも俺は生きようと足掻く。


 だが、タイムリミットが迫ってくる。


 既に体のほとんどの感覚がない。


 視界も掠れ、意識も朦朧としている。


 そんな時、俺は目にしてしまったんだ。


 部屋の方からこちらにかけてくる妻の姿が。


 ダメだ!!こっちに来るな!!


 俺はそう叫ぼうとするも声が出ない。


 そして、俺の意識は完全に途絶えた。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 マコトが息絶えたところを見届けた覆面はその場を立ち去ろうとする。


 既に任務は完了した。


 さっさと家に帰って映画の続きを見たい。


 覆面はそう思いながら踵を返した時、目の前から走ってきた女性と目が合う。


 その女性はこの国の現女王であり、今殺したマコトの妻だ。


 彼女のお腹は膨らんでおり、子を身ごもっていることが分かった。


 覆面はため息を吐く。


 これはキツイ仕事になりそうだと。


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