俺はマコト!!異世界転生者だ!!②
夫が部屋から出て行ったことに妻であり、女王であるメイナは気づいていた。
トイレにでも行ったのだと彼女も最初は思っていた。
だが、トイレなら帰ってきてもいいはずなのに帰ってこない。
お腹でも壊したのかと最初は思っていた。
だが、激しい胸騒ぎが全く治まらない。
マコトの身に何かが起きている。
メイナはそう判断すると、近くにあった蝋燭立てを持つと、ゆっくりと夜の城を歩き出した。
夜の城は人気も少ない。
ほとんどの従者が眠りについているためだ。
だが、今夜は何か違う。
人の気配が全くと言っていいほど感じられない。
本来ならいるはずの見張りの兵士も何故か今日はいない。
メイナの胸騒ぎがさらに激しくなる。
何かが起きている。
この先に進むのは危険だとメイナの本能が告げている。
それでもメイナは進み続けた。
大切な夫の身を案じているのだから。
メイナはゆっくりと慎重に城の中を歩いていく。
そして、メイナは人影を見つける。
その人影をマコトだと思ったメイナは安心したように顔を緩ませながら近づいていく。
だが、メイナの顔は人影に近づくにつれ、歪んでいく。
そして、メイナが人影との距離が近くなった時、メイナは手に持っていた蝋燭を地面に落とす。
メイナは蝋燭を落としたすぐ後、彼女自身も地面に崩れ落ちる。
彼女は無惨にも殺されてしまったマコトの遺体を見てしまったのだ。
メイナはあまりの事態に理解が追いつかない。
あの最強のマコトが最も容易くやられた?
マコトが殺された?
なんで?
なんでマコトが殺されたの?
どうして?
そんなことありえるの?
私のマコトが?
メイナの頭の中は目の前の事態に処理が追いつかず、パニックを起こし、過呼吸になる。
覆面はパニックを起こし、過呼吸になっているメイナから一瞬、視線を逸らした。
そして、これから自分が行わなければならないことを思い浮かべる。
本当にやらなければならないのか?
ここで見逃しても問題ないのではないのか?
彼女は妊婦だ。
見逃したって許されるはずだ。
覆面の心は揺れ動く。
だけど、先輩たちや主人は許してくれるだろうか?
いや、彼らなら罪悪感に押しつぶされることになろうがやるだろう。
彼らは世界の平和のために無実の人でも手にかけることを厭わない。
それが妊婦が相手だったとしても。
剣を持つ右手が震えている。
体に寒気が走る。
唇も震え、上手く口を閉じられない。
マコトの時はなんとか上手く出来たのに。
どうして、今回は上手く出来ないの。
覆面は心の中でそう呟く。
だが、心を決めなければならない。
覆面は震える右手を左手で無理矢理抑える。
そして、その場にへたりこんで泣いているメイナに近づいていく。
メイナも覆面が自分に近づいていることに気づく。
メイナはへたり込みながら後方へとのけぞっていく。
何とか覆面から逃げようとして。
だが、覆面も逃げるメイナを追いかける。
その足取りはどこか重く、歩いているにしては遅い。
それでも妊婦のメイナに比べれば、歩く速度は早い。
覆面はすぐにメイナに追いつく。
追いつかれたメイナは涙を流しながら訴える。
「お、お願いです!!見逃してください!!私のお腹には赤ちゃんがいるんです!!もうすぐうまれてくるんです!!どうかそれまでは待ってくれませんか!!」
メイナはめちゃくちゃなことを言っている自覚はある。
メイナは必死なのだ。
お腹の中の赤ちゃんを守るためにも。
ここで自分は殺されるわけにはいかない。
自分がここで殺されたらお腹にいる赤ちゃんも死んでしまうことになる。
そんなの絶対にダメだ。
だから、メイナは必死に訴えかける。
メイナの必死の訴えに覆面の手も一瞬止まる。
だが、剣を両手に持ち直り、目を逸らしながら覆面は剣を振り下ろした。
振り下ろされた剣は見事にメイナを捉え、メイナの体は斜めに両断される。
そして、お腹の中にいた生まれるはずだった赤子の命もメイナと共に散ったのだった。
メイナを殺した覆面はその場にへたり込む。
そして、マコトを見ながら呟く。
「お前が余計なことをしなければ、誰も死なずに済んだのに…私が手を加える必要もなかったのに…どうして、こんなに幸せだったのに満足できなかったの…?」
そう呟く彼女の画面の隙間から水滴が溢れ出す。
そして、彼女は両手で顔を覆い、啜り泣く。
自分の行ったことへの罪悪感を抱きながら。
彼女が泣いてからどれくらいの時間が経ったのだろうか?
いい加減泣き止まないといけないと思った彼女は心を落ち着かせると、その場に立ち上がる。
そして、深呼吸をしていると、後方に誰かがやってきたことに気づく。
それと同時に、
「そっちのターゲットは始末できたようだな」
後方に立つ男から声をかけられる。
この者も彼女と同じ覆面に同じ服装をしている。
男から声をかけられた彼女は答える。
「はい、先輩抜きでも一人で何とかターゲットの処理はできました」
マコトを殺すことができたと。
彼女からの知らせを聞いた先輩と呼ばれる男はふと、メイナが視界に入る。
「やっぱりお前は優秀だな。まさか、メイナの処理までやってくれるとは。こいつはあのマコトとかいう極悪人の子供を身ごもっていたらしいからな。処理しなければならないと思っていたが、代わりにおまえがやってくれたおかげで楽ができたよ。ありがとう」
先輩はメイナを殺した彼女のことを褒め称える。
その言葉は本来喜ぶべきなのに彼女は喜ぶことが出来ない。
「これで、俺たちの任務は終わりだ。さっさと戻ってボスに報告するぞ。俺はもう疲れたから家に帰って寝たいしな」
先輩はそう彼女に声をかけると、何かの魔術でどこかへと消えて行った。
彼女もそれに続くように魔術を使ってこの場から立ち去る。
そして、この場には仲の良かった夫婦の死体のみが残った。
彼女たちの正体は転生者管理局の執行官。
強大な力を手に入れ、暴走する転生者を処理する処刑人だ。
彼女たちの仕事は世界の均衡を保つ上でも重要な仕事であり、誰でもなれるわけではない職業だ。
それに、彼女たちはどんな人間であろうと指定された人物を殺さなければならない。
それがどれだけ辛いことなのか。
だが、彼女たちの苦痛は多くの国民は知らない。
何故なら、転生者管理局は秘匿されている組織であり、国家機密であるからだ。
彼女たちは人知れず世界を危機から救い続ける。
そして、執行官である彼女は今日もターゲットの暗殺を行っている。
わざと狂人を演じ、心を守りながら。
アヴァロンの世界ではこういう組織があるんだよって紹介するためのお話ですね。詳しい説明とかは今後本編に登場するか、設定資料集にでも載せると思います。まあ、新作まではなろうに復帰したいなと考えていますので、待っていてください




