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初めての危機と連続ジョブ偽装

ショーンが街の東にある王国兵駐屯地に辿り着き辺りを見回わすと、7mを超えるゴーレムが破壊と殺戮を繰り返していた。彼がその場に到着した時には既に大半の兵隊が殺されていた。襟章に星の付いた指揮官が多く目に付いた。軍の星付きなら大抵ジョブ持ちである。これ程の兵隊を容易く殺せると言うのは、普通ではない。しかも指揮官を優先して攻撃した様に感じられた。ショーンは人間がゴーレムを操ってテロを起こしているのではないかと考えた。

王国軍に対して直接攻撃を仕掛ける者が誰なのか?ショーンには見当が付かなかったが、本職の兵隊しかもジョブ持ちの指揮官が容易く殺されている事を思うと、ショーン自身も安全とは言えない。

 

 ショーンはゴーレムに対して素早さで有利に闘う為に『詐欺師』のジョブのままタガーを使って挑んだ。『盗賊』の上位ジョブである『詐欺師』は『盗賊』の能力全てを継承している。さほど素早く無いゴーレムの攻撃をかわし、ゴーレムの足にタガーを突き刺した。しかしタガーの刃は少しも通らない。

 素早さを利用して助走を付けてタガーを突き刺してみるが、やはりタガーの刃は通らない。何度繰り返しても一切のダメージを与えられ無かった。

 ショーンは諦めてタガーをロングソードに持ち替えて、『戦士』のジョブに偽装する。本物の戦士の30%の能力と言っても相当の戦闘力の筈だ。やや素早さが衰えたがゴーレム相手ならば問題無い。

 手当たり次第にゴーレムに斬り付けるが表面に傷を付けるだけで、ダメージを与えられ無い。

[斬撃強化]のスキルを使い、渾身の力でゴーレムの胴体へ横薙ぎに斬り付ける。ダメージが少し入るが、この攻撃を繰り返していたら、ロングソードが先に砕ける事は必至だ。

 考える時間を作る為にショーンはゴーレムから距離を取った。その時生き残っていた兵隊の一人が爆裂の呪文でゴーレム攻撃した。どうやら『魔術師』のジョブ持ちが1人残っていた様だ。

 ゴーレムの足の一部が爆音と共に崩れゴーレムが膝を着いた。ショーンは直ぐに『魔術師』のジョブに偽装し爆裂呪文を膝を着いたゴーレムの頭目掛けて放った。

 一瞬のけぞったゴーレムだったが、威力70%減の爆裂呪文ではダメージは微量で何事も無かった様に強烈な拳を繰り出した。『魔術師』のジョブに偽装していたショーンは素早さと防御力がかなり低下している。このまま拳を受けたら即死も考えられた。

 避けるのを諦めて咄嗟に『重騎士』のジョブに偽装して腕を身体の前でクロスさせて、ゴーレムの拳を受け止めた。もし本物の重騎士ならば受け止められたかも知れないが、ショーンの防御力では歯が立たない。彼は30m程殴り飛ばされて地面に転がった。

 その姿を見て即死したと思った爆裂呪文を放った兵隊は、ショーンがフラフラしながらも立ち上がるのを見て驚愕した。ショーンが爆裂呪文を使ったのを見て魔術師系のジョブ持ちで防御力が薄いと思っていたからだ。

 ショーンは立ち上がったものの、相当なダメージを受け口からは血を流していて、息も荒い。『治癒師』のジョブを偽装し治癒魔法を使ってみるが、当然3割しか回復しない。

 何とか闘える程度に回復したショーンだったが、打開策が浮かばなかった。攻撃力を重視するなら重騎士に偽装する事が有効だが、素早さがまるで足りていないし、武器の耐久性も足りない。魔法職のジョブに偽装して遠距離から攻撃すれば、多少はダメージを与えられそうだが、きっと魔力が無くなるだろう。元々『盗賊』のジョブの彼は魔力量も少なく、扱いにもなれていない。

 

 有効な攻撃手段を見つけられぬまま、ショーンはじりじりと追い詰められて後退をして行く。熾烈な攻撃を逃げ回るが、其れだけでも体力が奪われ、素早さが鈍ったショーンが再びゴーレムの拳を食らう。

 『重騎士』で防御『治癒師』で治癒魔法を繰り返したが、更に回復は少なくダメージが残った。ゴーレムはショーンを先に始末してしまおうとしていた。闘いぶりから見ても、今、生き残っている者の中では一番の曲者である事は誰の目からみても明らかだ。

 執拗にショーンを狙うゴーレムに余裕が出来た他の兵隊が攻撃を仕掛ける。一般兵の剣はまるで歯が立たないが、魔術師の爆裂呪文と時間差で同じ場所に一般兵の斬撃がたまたま重なった、その時初めて一般兵の剣がゴーレムに少なくないダメージを与えた。しかし直後、怒り狂ったゴーレムに足で踏みつぶされて、その兵は肉片になって即死する。

 

 ショーンはやっと攻略の糸口を見つけた。呪文と斬撃の2重攻撃、これ以外にゴーレムに届く攻撃は無い。

攻撃の場面事に最適なジョブへ連続して偽装して、スキルや呪文を使う、これしか打つ手は無かった。


ショーンはゴーレムとの間合いを測り、決意を固めて基本能力で素早く近づき跳躍する、そうして跳躍の途中で『魔術師』のジョブに偽装して直ぐに爆裂呪文を放つ、放つと同時に『重騎士』に偽装[重圧斬り][斬撃強化][武器強化]のスキルをスキル偽装で3段掛けしてゴーレムの体が爆発するとほぼ同時にロングソードを叩き込む。充分な手応えの後、爆発と斬撃の反動でショーンはゴーレムから吹き飛ばされる。

地面に叩き付けられ転がりながらも、身体を立て直し、またゴーレムと間合いを測る。

連続した偽装攻撃は有効だが、精神力 体力、魔力など全てが削られる。

同じ攻撃は後2回が限界だと彼は考えた。


もう一度、『基本能力』『魔術師』『重騎士』と連続で偽装して呪文と斬撃を深い傷の出来たゴーレムの脇腹に叩き込む。また、反動で飛ばされ、転がり、立ち上がる。


ゴーレムは満身創痍だったが、それはショーンも同じだった。後1度の攻撃でゴーレムを倒せなければ敗北するのはショーンに違い無かった。


終に心を決めて、基本能力で素早く近づき跳躍する、最後の跳躍の中で『魔術師』のジョブに偽装して直ぐに爆裂呪文を放つ、放つと同時に『重騎士』に偽装[重圧斬り][斬撃強化][武器強化]のスキルをスキル偽装で3段掛けしてゴーレムの体が爆発するとほぼ同時にロングソードを叩き込む。


ゴーレムが上半身と下半身に切り離される。下半身が崩れ去りゴーレムの上半身が大きな音と共に落下した。しかし胸のコアが無事だったゴーレムは上半身だけの身体でショーンに向けて拳を振り下ろした。

ショーンはもう動く力も尽きていた。


ショーンが死を覚悟した瞬間、眩い閃光を発して、ゴーレムが無数の岩の塊へと崩れ落ちた。

「遅くなって済まないね、ショーン。」

アレックスが何時もの顔でショーンを見下ろしていた。

「間に合って良かった。」

「アレックス、助かったよ。」

ショーンは何とかゴーレムを倒せた事に安堵した、同時にアレックスの次元の異なる実力に言葉を無くし、意識を失った。


ショーンが意識を取り戻すと、25歳位に見える女性が心配そうな顔で彼を覗き込んでいた。更に意識がしっかりして来ると、孤児院のシスターだと気が付いた。

「良かった、気が付いたんすね。」

良く見るとアレックスが後にいた。

「ショーン、少し心配したよ。」

「酷いな、少しだけなのか?」

「君は意外と頑丈だからね。」

「何故、シスターが居るんだ?」

「此処が孤児院だからだよ。シスターの治癒魔法で君を治療して貰ったけど、2日間、意識が戻らなかった訳さ。」

アレックスは重傷を負ったショーンを連れて教会に付属する、治癒院に駆け込んだ。既に治癒院は魔獣に襲われた人で溢れていた。

市民の治療の手伝いに来ていた孤児院長がショーンとアレックスに気付き、人で溢れる治癒院から孤児院へと運びシスターが治癒魔法で治療したのだった。

「孤児院長は若かったんですね、今更気が付きました。」

「そうですか、私も年齢は余り気にしていませんから。」

「そうだ、アレックス、魔獣が現れた原因は解ったのか?それに街はもう大丈夫なのか?」

「全く解明は進んでいないね。軍と市の警備、両方同時に壊滅したから保安官関係が中心に冒険者を雇って治安維持を進めているね。」

「何故、保安官の施設だけテロの標的にならなかたんだろう?」

「何故だろうね、いずれ王国から調査団が派遣されて来るから解明されるだろう。」

 現在の状況を理解したショーンは、その後も孤児院で療養した。2日目には元気になり、孤児たちに、せがまれてゴーレムとの戦いを聞かせたり。アレックスが『鍵の書』の中から面白い話を選び聞かせたりして過ごした。


 市長と代官は2人共、頭を抱えている。それぞれが、相手の管轄組織の不手際から危険に陥った市民を自分の管轄組織で救い人気を上げ様としていたのに、市民を救うどころか、自らの管轄組織が壊滅してしまった。数週間以内に王国から調査団が訪れる事は避けようも無い。2人は自己保身の事で頭が一杯だった。




ショーンが初めてピンチに落ち入りました。次回は更にクラスチェンジするかもしれません。

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