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最後の異世界物語ー剣の姫と雷の英雄ー  作者: 天沢壱成
ー泥犁暗殺篇ー
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『二章』間話 暗闇の中から御挨拶


 ーーそれはアカネたちが港を出た後の、数時間後の話。

 夕暮れ。

 海が燃えるように炎色に変わり、港がその色に染まりかける、ほんの一瞬に思える美しさの、その時間の隙間。

 

 「ったくなんだったんだよあのガキども!」


 ドクロマークに鎖の服を着た金髪の柄の悪い男とその仲間がオレンジ色と濃淡な紺色の混ざった空と陽のが射す細い道を歩いていた。


 ドクロマークの男の隣を歩く細身のピアス男が言う。


 「……まぁでも。なんかさ、あの子の目、俺たちを怒ってたけど、まるで母ちゃんみたいだったよな」


 「……………。まぁ、そうだけどよ……!」


 自分たちを怒っていたのに、けれど自分たちを見捨てないと言っているような、だから変わってやり直せと言っているようなーー言われているような気がする、そう思わせる瞳と言葉の熱さだった。


 例えばそう、この夕暮れのように熱く、目に沁みる、心に伝わる綺麗な声と想い。


 「俺たちも、あぁなれんのかな」


 自分の未来の行く末を知って。親の期待に応えられなくて不貞腐れたおれたちでも。


 「……けっ。なれるかな、じゃねぇ。なるんだよ」


 金髪の男が恥ずかしがるようにそう言うと、ピアスの男は友人が一歩前に踏み出したように見えて笑った。

 あの「黒髪」の少女には感謝をしなくちゃいけないな。それに、あの親子にも悪いことをした。もし会える機会があったなら、謝罪できるチャンスをくれるなら、頭を下げようと二人は思う。


 思う。

 思う、おも、う。

    お、

       も


     う。



 ーーーーーーーーーーーー????




 「ーーぺろぺろ。見てみてお母さん、二段アイス!」


 「ーーあらあら。お行儀が悪いわよテレサちゃん」


 ーーーーーーーーーーーー????



 視界が、おかし、い。

   ゆうじ、んの、あたまが、すぐ

                 したにある。


 「でもこの二段アイス不味そう。あのお兄ちゃんがくれた五段アイスの方が美味しかったなぁ」


 「ふふふ。そうね。ならちゃんとお礼を言わなきゃいけないわね」



 ーーーーーーーーーーーー????


  あ、あ、あ。そう、か。

      おれ、の首の下に。

          あいつの首がくっついて、まるで二段アイスのようになって、いる、のか。


 「うえ。綺麗に切ったと思ったのにぃ。もう『ジュース』が溢れてきちゃったよぉ。ばっちぃからポイ!」


 「ちゃんと手を洗うのよ?」


 ーーーーーーーーーーーー????


 そうか。

 おれは、おれ、た、ちは。首を、きられたことに、きづいていな、くて。死んだ、ことにも、きづいて、いなくーーーーーー………。



 「あ、やっと死んだみたい。このお兄ちゃん。あたしのアイスを台無しにしたからね。同じように台無しにしたいと思ってたんだぁ♪」


 「いい子ねテレサちゃん。ちゃんと『家訓』を守れて。お母さん嬉しいわ」



 夕暮れが終わり、真っ黒な闇を降ろす夜が来る。

 暗がりの中から全てを弄ぶ闇の『家族』が激動の世界に参戦の意を表明する。


 意匠が凝った不気味な杖を持つ紫色髪の女性に、三段アイスを舐める桜色髪の幼い少女。

 それから、船の船長の格好をした太った男に漁師の服を着る髭面の男。


 四人は闇の中で、演劇のように言葉を交わす。


 「予定通り。〈ノア〉とアレス騎士団を一つの船に乗せれました」


 「温泉街招待状でここまで誘い込み、魔力源エンジンをわざと壊して、彼らが関わるように仕向ける。ここまでやってまだ序章にも満たないとはコレから先がタイヘンダナ」


 「でもこの先に甘いご褒美がたくさんあるならあたしは頑張れるなぁ♪」


 「ふふふ。そうねテレサちゃん」


 彼女たちはもう、先程殺した『二段アイス』のことを覚えてもいない。

 四人の『家族』の頭の中には、次に何をるべきなのかという黒く染まった思考しかない。

 

 思い浮かべろ。

 想像しろ。

 馳せて、殺意を抱き、希い、絶頂しろ。


 泥犁ないりとう九泉牢獄パノプティコン

 全ては『家族』のために。


 「それで。「お父様」『たち』はいつ頃到着するの?」


 「一週間後。『罪人選別』当日ですよ」


 「そう。なら私たちも向かいましょうか」


 「ぺろぺろ。楽しみだねー!久しぶりにみんなに会えるよ☆」


 殺意を、殺しの快感を、言葉の音符に乗せて歌うように。

 四人の『家族』はーー暗殺ドロフォノスの狂気の血筋は高らかに、血の匂いを嗅ぎながら喝采する。


 「ーーさぁ。取り返しに行きましょうか。我らの愛しい愛しい、同胞たちを」

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