表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
695/923

灰色の犬

 幼いとき

 キャンプ場で知り合った

 灰色の犬

 一日だけの友だち

 勝手につけた名前で呼んだ

 その名はもう思い出せない

 キャンプ場を立ち去るとき

 見送っていた犬の顔

 寂しさという感情を

 勝手につけた名前と同じように

 勝手に見出だして胸を痛めた

 寂しかったのはこちらの方か

 過ぎ去った年月からかんがみるに

 あの犬はもう死んでいる

 いまのいままで忘れていた

 なぜ思い出したのかもわからない

 子どもの頃は、野犬に遭遇することが多かったな

 体当たりされて、恐怖で硬直したり

 鎖につながれていると侮ってはやし立てていたら

 先端が切れていて追いまわされたり

 あの犬たちも、もう死んでいる

 知らない場所で

 知らない顔で

 知らない一生と知らない死で

 かつて知り合った人のうち、何人が死んだのだろう

 どれだけの死を知らないのだろう

 あのなついてくれた灰色の犬は

 奇跡的な長命でもないかぎり死んでいる

 それだけは確かで

 それだけを思い出したかった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ