表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
688/923

雑想

 音楽を聴きながら詩を書いていて

 それはすべてに失礼な気がした

 音楽にも

 言葉にも


 自分の沈黙に耐えられないのは

 記憶の発作に襲われるから


 こんなにひとりの人間について考えるのは

 常軌を逸しているとしか思えない

 執着に終わりがない

 記憶がいつまでも患部に突き刺さる


 三人の人間の音楽が救い

 ひとりは生きている

 ひとりは数年前に死んだ

 ひとりは数百年前に死んで

 二人の演奏者によって知り

 その演奏者もひとりは生きていて

 ひとりは生まれる前に死んだ

 ところで三人の音楽の共通点は

 余白の優しさ


 だれかの救いになるような言葉を

 自分が書くこともあるのだろうか

 それは能力ではなく

 契機の問題だから


 詩は空にある

 詩のなかにはない

 そう言った詩人もいた

 きっと言葉が嫌になったのだ

 空に比べると

 言葉は人を救わない

 そんな日もある

 うつむいたまま


 ひとりの人間の言葉が救い

 人間だったかはわからない

 少し曖昧

 あらゆる善なる言葉の後ろに

 その存在の言葉が透けて視える

 と

 頑迷な信者なら言うだろう

 眼を閉じながら


 いまも音楽がそこに

 やがて死ぬ身の消えゆく夜に

 いまも音楽がそこに

 震える空気に言葉が追いつかないまま

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ