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些末な嫌悪
テレビが嫌いになって
ずいぶん経つ
その音も映像も耐えがたいものがある
ただ、寝たきりの人がテレビを慰めとしているのを見て
そこに楽しみがあってよかったと
ほっとするような気持ちにもなった
自分の嫌いなんて、だれかのこころの救いに比べたら
些末な問題でしかない
でも、些末な嫌悪にこだわりたい
人は嫌悪からもかたちづくられる
美的感覚とは嫌悪の集積である、とだれかも言っていた
あの人の楽しみに、水を差すものがありませんように
心底そう願っている
そして、こころをつぶすような音や映像や言葉は
どうか滅びてくれますようにと
変わらず嫌いつづける所存




