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臨終ヘッドホン
いつも幸せそうに見えると
人から言われた
自己認識とのあまりの乖離に
笑ってしまう
幸せな人間が死にたがる詩を書くだろうか?
書くのかもしれない
たしかに音楽を聴いているときは幸福だし
頭のなかではいつもなにかしら音楽が流れているわけだから
憂鬱であろうが死にかけていようが
いつも幸せなのかもしれない
臨終のときは
ヘッドホンが入り用だな
血を吐こうが胸をかきむしろうが
ヘッドホンさえあてがっておけば
おとなしくなる末期患者
ヘビメタと演歌は
できればやめてくれ
死ぬ前に好きな音楽を聴けるなら
願ってもない終油の秘蹟だ