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溺死入門

 溺れ死ぬなんて初めてのことだ

 緊張するな

 でもこれはいい緊張だ

 緊張しているに越したことはない

 その方が溺れやすい

 身体は固く

 思うように動かない

 上手い具合に沈んでいく

 眼も鼻も口も

 地上で酷使していた器官はあっという間に役立たず

 亡き者にしようと水が押し寄せる

 すべてが敵になるこの被害感

 社会よりは陰湿ではない

 とても冷たくはあるが

 狂って溺れ死んだオフェリヤは

 最後に歌を歌っていたっけ

 歌か

 悪くないな

 気泡のように口ずさもう

 手につかむものはなにもない

 もがいてる自分が遠くの夢のよう

 人魚姫は地上で生きる代償に

 声を失った

 溺死者が水中でこんなにも饒舌ならば

 さもありなん

 水の底

 水の底

 そんな書き出しの詩を

 漱石かだれかが書いていなかったっけ

 水底に図書館があるならば

 確かめてみようじゃないか

 ああ水の底

 水の底

 死を飲みながら死んでいく

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