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人生に意味がないとして
客観的に見ると
人生に意味はない
内側から見ると
どうだろう
どうなのだろう
人生は
自分の人生を意味あるものとは思えない
ただ
だれかの人生が
無意味な生涯だったと断じられたときの
ふつふつとわいてくる怒りは
まだ人生を
意味あるものと思っていた頃の名残りか
意味づけはときに暴力的だ
無惨に死んだ人間を
大義のために殉じたなどと意味づける言説は
全力で軽蔑すべきだと信じてきた
いまもそれは変わらない
死者を無視した死者への意味づけは
許しがたい冒瀆としか思えない
そこで語られる必然性の
寒気がするほどの欺瞞と嫌らしさ
無意味だけれど
笑いあおう
優しくしよう
愛しあおう
楽しく遊ぼう
そして死のう
無意味だけれど
与えられた生を慈しみ
死んでしまった者を葬り
無意味のままに
哀しみ、悼み、忘れずにいよう
そんなふうに語るのは結局のところ
人生には意味があると
生はなにごとか稀なるものであると
語っているのと同じことか