表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
259/922

肥大していく自意識のような手紙のような詩

 手紙の代わりに

 詩を書きました

 とてもとても暗い詩です

 あまりに暗いので

 あなたには見せられません

 でも正直に綴りました

 だからやっぱりあなたには見せられません

 そんな心配はしなくても

 どうせ届くこともないでしょう

 あなたにはもう

 ぼくの声は伝わりません

 二度と関わることもないでしょう

 月よりも遠くに感じます

 でも月のように

 こころの暗闇にいつも浮かんでいます

 たぶんあなたは

 ぼくのことを思い浮かべもしないだろうし

 顔もなにもかも忘れたかもしれませんが

 ぼくはあなたの言葉さえ

 一言一句きざまれているくらいだし

 この落差は

 たしかに月と人間のようです

 だって月は

 人間なんて気にしないでしょうから

 どれだけ人間が

 月に焦がれて関心を注いで

 夜毎に見つめ

 憧れて

 ついには宇宙船でたどりついて

 偉大な一歩を踏みしめても

 月は

 太陽よりもはるかにちっぽけな人間のことなんて

 気づくことすら難しいでしょう

 しかしこれではまるであなたを人非人扱いですね

 月のように懐かしく慕わしいと

 そう言いたかったはずなのに

 月のように隔たっていると

 そんなことしか言えないとは

 ぼくの詩はいつもこうなのです

 最初の想いはすっかりダメになってしまって

 急に現れた暗雲に乗っ取られるのです

 ぼくとあなたのあいだに暗雲が立ちこめたのは

 いつからでしょうか

 雲に覆われた月は

 なぜあんなにも魅惑的に輝くのでしょうか

 これではいつまでも埒があきませんね

 筆を置くことにします

 手紙を終えるように

 命も終えられたらいいのに


 P.S.

 自殺をほのめかしているわけではありません

 いや実はほのめかしました

 でもあなたにほのめかしたわけではなくて

 自分へのメッセージなのです

 どうせこれはあなたに届かない手紙代わりの詩なので

 やはり最後は自己との対話になるのです

 ぼくがぼくに言いたいことは

 早く死ねばの一言につきるのですが

 なぜだかまわりくどく迂回して

 愚痴っぽい詩をつくってしまうのです

 詩を断ち切るように

 命も断ち切れたらいいのに


 P.P.S.

 念押しですが自殺をほのめかしているわけではありません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ