肥大していく自意識のような手紙のような詩
手紙の代わりに
詩を書きました
とてもとても暗い詩です
あまりに暗いので
あなたには見せられません
でも正直に綴りました
だからやっぱりあなたには見せられません
そんな心配はしなくても
どうせ届くこともないでしょう
あなたにはもう
ぼくの声は伝わりません
二度と関わることもないでしょう
月よりも遠くに感じます
でも月のように
こころの暗闇にいつも浮かんでいます
たぶんあなたは
ぼくのことを思い浮かべもしないだろうし
顔もなにもかも忘れたかもしれませんが
ぼくはあなたの言葉さえ
一言一句きざまれているくらいだし
この落差は
たしかに月と人間のようです
だって月は
人間なんて気にしないでしょうから
どれだけ人間が
月に焦がれて関心を注いで
夜毎に見つめ
憧れて
ついには宇宙船でたどりついて
偉大な一歩を踏みしめても
月は
太陽よりもはるかにちっぽけな人間のことなんて
気づくことすら難しいでしょう
しかしこれではまるであなたを人非人扱いですね
月のように懐かしく慕わしいと
そう言いたかったはずなのに
月のように隔たっていると
そんなことしか言えないとは
ぼくの詩はいつもこうなのです
最初の想いはすっかりダメになってしまって
急に現れた暗雲に乗っ取られるのです
ぼくとあなたのあいだに暗雲が立ちこめたのは
いつからでしょうか
雲に覆われた月は
なぜあんなにも魅惑的に輝くのでしょうか
これではいつまでも埒があきませんね
筆を置くことにします
手紙を終えるように
命も終えられたらいいのに
P.S.
自殺をほのめかしているわけではありません
いや実はほのめかしました
でもあなたにほのめかしたわけではなくて
自分へのメッセージなのです
どうせこれはあなたに届かない手紙代わりの詩なので
やはり最後は自己との対話になるのです
ぼくがぼくに言いたいことは
早く死ねばの一言につきるのですが
なぜだかまわりくどく迂回して
愚痴っぽい詩をつくってしまうのです
詩を断ち切るように
命も断ち切れたらいいのに
P.P.S.
念押しですが自殺をほのめかしているわけではありません




