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偏頗な患者

 ぼくの病名は間違いだけど

 医師たちを責めはしないでおこう

 偏頗な患者だと

 いじめられては困るから

 窓の格子は隣人から聞いたとおり

 すり抜ける手段が四つある

 そのうちの三つは命に関わる

 隣人は冬の来ないうちに死んだ

 新しい隣人は

 唇が三つあるのにしゃべらない

 ぼくは耳が二つもあるのに

 彼の言葉を聞き取れない

 掌をみておどろいた

 指が

 指が何本も生えている

 五つ以上は耳鳴りによって数えられない

 指はいっぱい

 それ以上は考えない

 医師が扉の向うから呼んでいる

 なぜ顔を出さないのだろう

 もしかして医師は

 ぼくの知っている罪人の顔の皮をかぶっていて

 だから恥ずかしいのかもしれない

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