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剥がれる自分
自分が自分から剥がれ落ちるようなこの感覚は
ふとしたときに訪れる
昼間でも夜でも
他人といてもひとりきりでも
話していても黙っていても
綱渡りの最中に足運びをしくじってしまったような
舞台上で演技を忘れてしまったような
存在がただの棒になる瞬間
生い立ち・来歴・氏素性
自分のすべてに疑問符がつく
自分はなぜここにいるのか
自分はなぜこの共同体に属しているのか
自分の記憶はなぜこんなにもよそよそしいのか
自分の名前は思い出せるが
それが意味したものとはなんなのか
剥がれた自分が眺める自分の
内側からの遠さはなんなのか