魂はビー玉
なにも欲しくないという状態は
信仰の瀰漫する共同体においては見込みがあっても
われらが消費社会の成員においては
落ちこぼれを意味する
然ん候
見事に落ちこぼれました
なんにも欲しくありません
自分の魂すら投げ捨てたい気分です
魂はビー玉
魂は透明な球体
生まれおちた時に優しい指先に押され
坂道をころころと転げはじめた
その慣性によってここまで生きてきたが
いまや道はまっさらな平場になり
どこへも続いておらず
転がりつづけてきた魂も
どうやら静止する寸前だ
魂はビー玉
震えがちな子どもの玩具
その手に握りしめて
死ぬまで離さないと幼く誓った
久方ぶりに掌を開いてみると
あんなにも綺麗だった球体は
手垢と汗と血で薄汚れていた
それでも捨てられなかった
明日は捨てられるだろうか
魂はビー玉
天の遊び場で死んだ子どもたちに弾かれる小球
賽の河原の石積みよりは
いくぶんか愉快げな
いくぶんか儚げな
無聊を慰める永遠の遊び
遊び場には石楠花が咲いている
死んだ子どもたちは魂と同じくらいに透けている
淡彩の存在苦を背負っている
魂はビー玉
玻璃にくるまれた宇宙
凍りついた涙
砕けない哀しみ