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救世の地 5

 アンシャンでは既にTF101はバーゲストが率いるブラボーチーム以外にも、複数のチームが活動を開始している。

 もちろん偵察には情報の送受信や人員を待機させるための拠点が必要だ。その為に設営されたのがセーフハウス『アップル』である。

 アップルはアンシャン郊外に建つ半壊した納屋を改造しており、通信の中継や物資の補給が行えるようになっている。

 また、展開している部隊の救援に向かえるよう、常に二チーム待機している。

 現地人の言う親切な冒険者とは、このアップルを拠点としているTF101隊員ということだ。

 バーゲストがアップルの扉を叩く。

《月面》

《トムとシャチ》

 合言葉を確認すると、急ごしらえで取り付けられた電子ロックが解除された。

 扉を開くと、出迎えるのはいつも銃口だ。

「相変わらず物騒な奴め」

「用心に越したことはない」

 リマチームの隊員シェフ(CHEF)はニコリともせずに言うと、Fda五五六Fカービンライフルを下ろした。

「状況に変化は?」

「特になし」

 そう言うと興味なさそうに椅子に腰掛けた。

 バーゲスト達も休憩の為に自分達のスペースへと散っていく。



 ギークはベッドに横たわると体内通信の回線を開いた。個人携行しているCPUを介して暗号化した通信である。

《こちらイナバ・ラビット。皮を見つけた、皮を見つけた》

 暗号を復唱すると、相手が呼び掛けに応じた。

《こちらヤソ。問題ない、報告しろ》

 TF101があらゆる国が人員・資金を出し合って運営している部隊だが、当然現地で見知った全てを共有しているわけではない。

 バーゲスト・モホーク・ソヴォク・コロニー・イェシュアだって、特別有益と感じた情報は部隊内で共有はせずに秘匿回線で直接上司に報告していることだろう。

 国家間の関係に完璧な友好関係は存在しない。隙さえあれば相手に短剣を突き刺し、全ての利益をせしめんとしているのだから。

 無論これはギークとて例外ではない。自衛軍から派遣された彼らは、あらゆる手段の行使を政府から許可されていた。このあらゆる手段とは現地の国家との敵対だけでなく、地球の他の国家との敵対も含まれている。

 もっともこれを判断するのは現地で活動しているギークのような兵士ではなく、三分の二官僚の諜報機関の人間だが。“ヤソ”とは、この手の人種に与えられたコールサインである。

 しかしイナバ(因幡の)ラビット(白兎)ヤソ(八十神)とは、縁起の悪い組み合わせもあったものだ。

 まるで自分が騙されて酷い目に遭わされるみたいだ。上の嫌がらせか? ギークはそう思ったが、「縁起が悪いからコールサインを変えてくれ」などと言うわけにもいかない。

 本心を抑え、報告を続けていく。

《“表”の報告通り、アンシャンの内部への潜入に成功。特筆するべき点はありません。どうぞ》

《ギャルド・モンドの動きは把握しているか?》

 ギャルド・モンド、新自由国家同盟の駒。彼らはこの辺りの管轄ではないはずだった。

《いえ、ありません。どうぞ》

 わざわざ名指しで尋ねるあたり、どうも何かがあったらしい。しかしそれを尋ねるのは閉鎖的かつ階級社会の性質が強い自衛軍の特性上、難しい話だった。

《通常通り任務を継続せよ。オワリ》

 向こうも質問を受け付ける気はないらしく、にべもなく回線は閉ざされた。

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