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訓練三〇分 2

 しばらくして、少年がシミュレーター小屋に現れた。その際に、マック相手に脈がないと判断して一時撤退を始めたモリーとすれ違った。

「あれ、薪割り終わったの?」

「終ったよ」

 短い会話を交わすと、少年は明るい顔で陰気な小屋で待ち構えていたギャルド・モンドの面々に向き直った。

「覚悟は出来てるな?」

「みんなを殺された時から、とっくにできてる」

「なら、シミュレーターに入れ」

 マックが指差したシミュレーターが一体どのようなものなのか、少年には理解できなかったが、椅子のようなベッドのようなものの上で横になった。

「手の形に光ってる場所がわかるな? そこに手を置くんだ」

 それは少年でもすぐにわかった。視覚情報に従って両手を置くと、続いてアームが伸びて首に押し当てられた。

「今からお前には仮想(VR)世界での試験及び訓練を受けてもらう」

「仮想世界?」

「そうだな。この世であり、この世でない……説明が面倒だ、習うより慣れろだ。やればわかる。それよりも、これから投与する薬に関して説明する」

「薬がいるの?」

「普通のVRなら必要ない。だが、これからお前にはJail-30と呼ばれる一〇分が三〇日に感じる薬が投与される」

 凄い薬ではないか。時間の細かい概念を学んでいない少年は断片的ながらも理解すると、素直に感心した。しかしマックの表情からして、そういいものでもないらしい。

「こいつは本来懲役刑に用いられるものだ。現状致命的な副作用は確認されていないが、お前の体質によっては発症するかもしれない」

 なるほど、薬にとって効能と副作用は一心同体。自分のことを心配してくれているのか。少年にとってその気遣いはありがたかったが、同時に迷惑でもあった。

「ねえ、その薬を使えば強くなれるの?」

「必ずしもそうとは限らん。お前に才能がなければ時間の無駄になるだろう。その無駄を減らすためのものだ」

「……僕を強くできるものなら、何だって使って」

 マックはそう言い切った少年の瞳を見つめた。そしてしばらくすると、ため息を吐いた。

「わかった。先に宣言しておくが、俺もお前と同じ薬を投与して教官を務める。条件は対等だ」

「早く始めてほしい」

 一秒でも早く強くなって、ダギーズを殺す。親の仇を取る。少年の脳内にはそれしかなかった。

「このせっかちめ。いいだろう、教授」

「おし。初めてのJailとVRはあとでゲーゲーするかもしらんが、頑張れよ」

 装置が降りてくると、少年の頭をすっぽり覆った。すると、首に押し当てられたアームの先端から違和感。

「Jail-30投与完了。幸運を祈る」

 その教授の言葉が聞こえると、少年の意識はあっという間に電子の世界へと溶けていった。

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