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ページ18 仲間を探して

「うぅー…」


気持ち悪い。


この船独特の揺れが私を酔わす。


「顔色かなり悪いな」


「ごめん…酔ったみたい…」


「はい、これ。

氷舐めてると船酔いに効くよ。

着くのはまだまだ先だから」


「ありがとう……」


東京国、3日目の昼下がり。


私は船酔いで、死んでいた。


―――遡る事、6時間前。


「お祖父様、言って参ります」


「2人共、気をつけてゆけ。

城の事は気にせんでよい。

おぬし達の使命を全うするんじゃぞ」


「壱斗様、お気をつけて」


龍庵さんとヨリヒトさんを筆頭に従者達が見送りに玄関に並ぶ。


その中には春さんもいる。


「本当に、供を1人も付けないのですか?」


従者の1人が言った。


「ああ、今回は俺と妃波で行く。

お会いする方はかなり人見知りをされるようだから、

大勢で押し掛けるのはな…」


王子様が例え国内でも、どこかへ出向くには理由がいる。


さすがに精霊探しますなんて言えないから。


表向きは南の地方に住む方と対談、巡遊という事になっている。


(急に作ったでたらめな公務なのに、誰も疑わないのが凄い)


龍庵さんは言わなくても気付いているみたいだけど。


「さようですか…」


渋々納得して、従者は一歩下がった。


1人でも巻き込む人は少ない方がいい。


壱斗くんはそう思ったんだろう。


船内にいるのも、船を動かすのに必要不可欠と判断された人達のみ。


逆に少なくて良かったのかも。


…こんなにバカンスしてるひよこ、もとい精霊がいるんだから。


「リッシュってば…」


「お前は死にかけの顔だな」


「初めての船なんだから、仕方ないでしょ…うっ……」


「ったく…ほらよっ!」


リッシュは小さな木の実みたいな物を私に向かって投げた。


「?何これ…」


「アズリの実だ。食ってみろ」


「え…」


そのアズリの実のフォルムがなんか怖いんですけど。


ポイズン?


じゃないよね?


仕方なく口に入れてみた。


「…これ、ミント?」


「お前らの世界でいう、ミントキャンディーみたいなもんだ」


「確かにそんな感じ…

ちょっと楽になったかも」


たまにはいい事してくれるじゃん。


口は悪いけど…


って、んん?


何これ!!


「んーっ!にっがーい!!」


「…アズリの実は後味苦いんだよな〜、

俺様でも火を吐きたくなるくらい」


「もーっ!リッシュのバカーッ!!」


前言撤回。


やっぱり口も性格も悪い!


―――「そろそろ港に着くぞ」


「やっと港だねー」


「長かっただろ?」


「そうでもないよ。

夕焼けの海なんて早々見れないもんね」


アズリの実のおかげで、船酔いは簡単に治った。


しばらく口の中が気持ち悪かったけど。


約19時間の船旅も終わり、港に着いたのは深夜だった。


ホテルは港から徒歩3分と本当に近くで。


すぐに部屋に通された…んだけど。


「何で相部屋!?

スウィート!?」


「我慢してくれ。

空き部屋が無かったらしい。」


まぁね、突然の事だし、王子様だもんね…。


「俺ソファ使うから、妃波はベッド使えよ」


「あ、うん…ありがとう」


ふっかふかのベッドはダブルより大きい。


夜中なのが残念なオーシャンビュー。


さすがスウィートルーム。


「明日に備えて早く寝ろよ」


「お、おやすみなさい!」


壱斗くんはソファをベッドに直すと、すぐに毛布をかけて寝転んだ。


10分後にはすうすうと寝息を立て始めた。


…私はというと。


ドキドキして眠れない!!


だって…好きな人と一緒の部屋で寝るんだよ!?


ドキドキして当たり前じゃん!!


…寝よう。


明日は何が起こるかわからない世界にいるんだもんね。


「おやすみ、壱斗くん…」


私は独り言のように言って、布団を深く被った。


―――「おーいっ!起ーきーろー!」


「は、はいぃっ!!」


壱斗くんの大声に飛び起きると、

もう朝だった。


「準備が出来たら言って。

食堂に案内するから」


「ごめん、急いで準備するね」


すぐに着替えを持って、バスルームに駆け込んだ。


いつもの倍以上のスピードで支度を終えた私は、

外で待ってくれてる壱斗くんの元へと急いだ。


「お待たせ…っ!」


「…早かったな」


「朝ご飯、食べに行こうよ!

お腹空いた~」


「俺も。」


食堂は、ホテルの1階の一番奥の大きなフロアだった。


入ると、既に沢山の宿泊客が美味しいモーニングを満喫していた。


「なんか…修学旅行思い出すかも」


中学の時の修学旅行で泊ったホテルでの朝食がビュッフェだった。


「不思議な世界だよな…ここって」


「いきなりどうしたの?」


「いや…なんでもない」


「…言いたい事はわかるよ?

私達が16年いた世界と一緒じゃんって、思う時あるもん」


全く違う世界なのに、似ていることだらけ。


そして私達はここでは救世主。


ただの高校生なのに。


不思議な力を持ってて、戦う。


「考えてても仕方ないけどね。

答えは絶対に出ない。

俺達は、ここで生きてて戦わなければならない。

それだけが今分かること。

さ、食べよう。」


「そうだね!」


「さっき妃波待ってる間にリッシュ達と話したんだ。

ここから更に南の『カルエンド』って島があるんだけど、

そこに2人がいるらしい。

ヘリで30分くらいかな。」


「今度はヘリなんだ」


「こことカルエンドの間の海域は、

別名『デス・ライン』って呼ばれてて…」


ありきたり過ぎて笑えるけど、すぐわかるね。


「船だと無事ではいられないって訳ね」


「そういう事。」


この世界は本当、色んな初めてを経験させてくれる…らしい。


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