僕と吉田さんの奇妙な出会い(4)
強い衝撃の後に強い痛みが襲ってきて吐いてしまいそうになる。
左のこめかみから温かくドロリとした液体が頬を伝う。
「は……?なんで……」
触ってみるとそれは紛れもない血だった。
普通ならばこめかみを撃ち抜かれたら即死するはずだ。
なのに僕は生きている。
あり得ない。こんな事。
まるで僕が人間じゃないみたいじゃないか。
「マジかよ……」
男は化け物を見るような目でこちらを見ながら後ず去っていく。
さっきの調子の良い表情は見る影もなくなっていた。
そんな目で見るなよ。
この状況は想定外だったのだろう、男は急いで何処かへ電話を掛けている。
逆に想定している訳無いよな、普通は死ぬもんな。
頭がかち割れそうな痛みと、気持ち悪さと、体から血が失われていく感覚。
やっぱりな、頭を撃ち抜かれて、こんなに血が流れていれば生きていられない。
血に染まり段々と黒くなっていくズボンを見ながら、意識が段々と遠のいていく。
その感覚にどこかホッとしてしまった。
「やっぱし、死なないはずないねん」
少し調子を取り戻してきた男の声を聞いたのを最後に意識が途切れた。
ビリッと電流が走るような感覚で意識を取り戻す。
重たい瞼を開けると、綺麗な琥珀色の瞳が目の前にあった。
「うわっ」
自分の叫びが頭に響く。
忘れていた酷い痛みがぶり返す。
何故か結束バンドは外れていた。
思い出したように痛みの元であるこめかみを左手で押さえ掌を見る。どのくらい血が出ているか確認するためだった。
だが、目に映った掌にはなにも付いていなかった。
もう一回こめかみを触るが、撃ち抜かれた筈の部分は何事もなかったように皮膚が再生して元通りになっていた。
「弾はちゃんと取り出しましたよ」
その声の主である男は、さっき目が合った琥珀色の瞳の持ち主だった。
その男は少し距離を保ちながらそう言い、掌をこちらに見せてきた。
その掌の中には血と少しの肉片が着いた弾丸があった。
「さっき、僕を殺し損ねたから、また殺しに来たのか」
離れた場所からこちらの様子を静かに見ている男に問いかける。
今更だが、先程まで軟禁されていた建物の中ではなく、僕は今、森の開けた場所に横たわっている様だ。
さっきの建物は何だったんだろうか。
不思議なことが起こりすぎて、誰かに夢だと言ってもらった方が楽なのに。
「違うよ、俺はアンタを護りに来た。今は混乱しているだろう、落ち着いてから詳しく話そう。着いてこい」
今は誰を信じれば良いのか分からない。
頼れるのはこの人しか居ない。
体を起こし、少し違和感が残る体で男に着いていこうとする。
「吉田さん」
口から勝手に言葉が出た。




