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ジャカルタ事変 2014   作者: 相鵜 絵緒
9/61

9


 将生を先頭に、Pフロアに着くと、レセプションから出たすぐのところに車が停まっているのが見えた。

 瑛斗が、車から出てきた人のところに走っていく。


「知り合い?」


 怪訝な顔で、まみはあゆみの顔を伺うと、


「あ、昨日の運転手さん。」


 あゆみはにっこり笑って、瑛斗の後ろをついていく。

 そういえば、昨日の夜、あゆみと瑛斗は、将生の専用の車でリマウナレジデンスまでやってきたことを思いだす。


「昨夜、瑛斗に優しく話しかけてくれたり、ドラえもんの歌を歌ってくれたり、寝ている瑛斗を運んだりしてくれたの。」


 とあゆみがまみに教えてくれる。


「ドラえもんってインドネシアでも有名なんだ・・・。」


 変なところに感動しているまみをおいて、あゆみも瑛斗も運転手さんに笑顔で挨拶する。

将生専用の車を運転するアリさんというおじいちゃんに、さっそく瑛斗は懐いたようだ。

 将生もアリさんに近づいていくと、今日行く場所などをインドネシア語で話し出した。

 そして、まみに振り向くと、


「この車、僕が毎日使っている車です。乗ってください。」


 と言った。

 車種などに疎いまみは、何の車だか全くわからなかったが、アリさんが運転してきた白くて大きな車の最後列に、とりあえず晴斗を抱きかかえたまま乗り込んだ。

 駐車場に出てきてすぐに、将生の車が準備されていて、なおかつ待ち伏せ?されているなんて、なんだか自分がビップな客になったようだ。

 まみが乗り込んだ後、あゆみと瑛斗は真ん中の座席に、将生はアリさんの隣の助手席に座った。


「今日は、この近くのカンダリアシティというデパートへ行ってみます。日用品や子供服などがあるかと思います。地下にロッテマートという、現地の方が好む食料品も扱うスーパーも入っています。が、その後にマンゴーという日本人専用のスーパーへも寄るつもりですから、生鮮食品などはマンゴーで買うようにしてください。」


 車がスタートすると、助手席から将生が振り返って説明する。

 まみ達を乗せた車は、地下の駐車場から、太陽が感じられる地上へ出ていく。駐車場内も暗くはなかったが、やっぱり外の方がずっと明るい。レジデンスから車道へ出ていくときは、守衛さんがこちらを見て敬礼してくれ、通行止め用の太いバーが上げられる。その様子を見て


(ああやっぱりここは日本じゃないんだなぁ。)


 まみは改めて感じた。


 夜の暗かった時に見た景色とは全く違って、人々が歩いている様子やバイクに乗って移動している様子を見ると、またまた異国情緒を感じる。

 朝、少し窓から見えたが、今は人々の生活が自分の目の高さで飛び込んでくる。


 まず、バイクの数がものすごく多い。大型のものではなく、スクーターと呼ばれる類のものだ。

 次に、バイクに乗っている人数がおかしい。お母さんと思われる人が、後ろに子供を乗せつつ、抱っこひもで赤ちゃんを抱えながら、もう一人足を乗せる平らな前部分に子供を立たせている。

 お父さんが運転し、後ろにお母さん、その間に子どもが挟まれて座っている、というスクーターもあった。

 インドネシア人にとって、スクーターは日本人でいうところのマイカーみたいなものなのかもしれない。車を持てるのは、よほどの高級取りくらいで、手ごろな価格のスクーターが、家族の足代わりのようだ。

 ヘルメットをしている人もいれば、帽子だったり、はては何もかぶっていない人もいる。


 二人乗りが基本なのだろうか。一人で乗っている人が少ないように見える。

 後で知ったが、タクシー代わりのバイク便が多く、ゴジェットと呼ばれるそれは、立派な職業の1つらしい。日本人でそれに乗ったことがある人は、とても稀で、まみが知っている限り(今後出会うママ友たちの中では、けっこう奔放な性格で知られる人)一人だけだ。大抵の日本人は、マイカーとマイ運転手をもっているので、ゴジェットのお世話になることはほとんどない。

 また、ゴジェットはおつかいのようなこともしてくれるので、ちょっとした買い物を頼んだり、病院から薬を届けてもらう時などに利用したりする人はいるようだ。


 また、不思議なことに、先頭で信号待ちしていたはずなのに、バイクが後ろのほうからいつの間にか前に来て先頭を陣取っている。しかもそれは一台にとどまらず、大量のバイクが、バイクレースかと思われるくらいの勢いで整列していくのだ。

 もちろん対向車線でも、バイクが多数並んでいるのが見えるし、交差している車線でも、青信号になった途端にバイクが走り出す光景が毎回みられる。

 そういう交通ルールなのだろうか…


 そんな信号での様子を何回か繰り返し見た頃、またまた信号でまみ達の乗った車が停車した。


「あの・・・車間距離、近すぎじゃないですか?」


 アリさんの運転に不満があるわけではないが、気になってまみは将生に声をかける。

 車同士の車間距離が近すぎて、運転免許は持っているが、まったくのペーパードライバーであるまみには、とてもじゃないができない間隔である。


「ああ・・・。ジャカルタでは渋滞が多くて、ちょっとでも車間距離が開いていると、すぐ横入りされるんですよ。だから、本当にギリギリの車間距離をとっている車が多いですね。」


 将生が苦笑しながらまみにこたえる。

 確かに、バイクの量も多いが、車の量も多い。気づけば信号待ちの間に、脇道からすっと車が入ってきて、なかなか車が前に進まない感じがする。


 すると、道の中央にある路側帯にいた人達が、停まっているまみ達の車に寄ってきた。

 そして、カレンダーやティッシュ、子どもが好きそうなおもちゃなどを見せつけてくる。それはこの車に限ったことではなく、前の車や、二車線道路であるために並んでいる、すぐ隣の車にも同じように寄って行っている。


「基本的に、このようなところで売っているものは、購入しない方が良いですよ。もっと安くて、新鮮なものが、お店で売っていますから。」


 ジュース売りの少年が、瑛斗たちの乗っている座席に近い窓をコンコンと叩く。その音に気付いた将生が、あゆみに忠告したのである。


「無視・・・というと言葉は悪いですが、反応しないでいると、彼らは諦めて離れていきます。」


 将生がジュース売りの少年の方を向いて、「要らない」というように手を振る。この車はUV対策のためか、少し暗めのウィンドウなので、きっと外から中は見えない。将生のジェスチャーは伝わらないだろう。

 それに気づいたアリさんが、運転手側の窓を少し下げて、「要らない」というようなインドネシア語と、手を振り払うしぐさを少年にむける。少年は心得ているようで、すぐに車から離れ、次の車へ移っていく。


 まみにとっては衝撃的な出来事だった。



 この後も、初めて見るジャカルタの街は、まみにとってとても刺激的で、自分が日本ではないところにいるのだなぁ、と思わずにはいられなかった。今まで生きてきた「普通」って何だろう。なんて哲学的な考えに陥ってしまうくらい、まさにカルチャーショックを受けていた。



 時間にして15分くらい、車に乗っていただろうか。

 まみ達の車はとある建物に入って行くことになる。ただ、建物に入るまでに時間がかかるというか、回り道が多いというか、途中でやっぱり警備員が立っている小屋があり、太いバーが行く手を阻んでいる。

 そこで車は止められて、簡単なチェックが入る。アリさんが、警備員と話をし、後ろのトランクを開けさせられる。そして、「GO」サインが出ると、太いバーが上がり、車はやっとデパートのエントランスに進むことができた。


 てっきり駐車場で降りるのかと思っていたら、デパートのエントランスの真ん前で車が停まり、そこに居たドアマンが車のドアを開けてくれた。


「アリさんは車ごと駐車場で待っていてくれます。買い物が終わった時に、またここに呼びますので、みなさん降りてください。」


 助手席から先に降り立った将生が、言いながら瑛斗の脇の下に手を入れ、降りるのを手伝う。あゆみも降り立った後、将生はシートを倒し、最後列に乗っていたまみが降りやすいようにしてくれた。

 まみは晴斗を抱えているので、ちょっと中腰のまま、車を降りようとする。そこへ、将生が手を差し出す。まみは右手で晴斗の頭を押さえながら、左手を将生に支えてもらい、

「よっ・・・っと。」

と掛け声をかけながら車から降りた。


「ありがとうございます。」


 まみはふわりと将生にむかって微笑む。

 将生はまみの手をつかんだまま、


「どういたしまして。」


と微笑み返す。

 思った以上に、自分の手に馴染むまみの手を


(離したくないな)


と直感的に思う。

 でも、それを悟られないうちに将生はサッと手を離した。

 何も気付かないまみは、初めての場所にワクワクした表情をしながら、嬉しそうにあゆみの方へ歩いていく。

 気付かれなくてホッとしつつ、気付かれなくてちょっと…残念なような…。



 瑛斗はほぼ毎日、保育園に通う時はすぐベビーカーに乗りたがる。今日はベビーカーを持ってきてなかったな、と心配していたまみだったが、意外にもよく歩いてくれた。

 昨日まで飛行機や車に乗っていて、なかなか歩く機会がなかったからだろうか。嬉しそうにあゆみの手を握って歩く瑛斗に、まみも自然と笑顔になる。

 晴斗は、抱っこされていれば満足なようで、まみの二の腕を触りながら、泣き喚くでもなく、良い子にしている。

 とても広い売り場には、見たこともない名前のお店がたくさん並んでいるが、日本企業も頑張っているようで、名の通った日本のブランド店もいくつかあった。

 その中でも、○ニクロがかなり大きな売り場面積を占めていてくれたことは、とても安心できることだった。いつも購入しているものが、ほぼ日本と同じ金額で手に入ると知ると、大きな安心に繋がる。

 ただし、子ども服の品揃えが少しイマイチで、特に、赤ちゃんでもなく、子どものSサイズには少し小さい瑛斗に、ちょうど良いものが見つからなかった。


「瑛斗用の服は、他の子ども服売り場で見つけようか」


とあゆみがまみに話しかける。

 ここに来るまでに、いくつか子ども服売り場を通ってきたから、きっとそこにあるだろう。と思ったのだ。

 しかし、


「多少サイズが大きくても、日本製の物が良いですよ」


と将生がアドバイスする。


 日本で売られている服の多くが『カンボジア製』とか『インドネシア製』、『中国製』と表記されている。けれど、日本で売るための基準を通ったそれらと、『インドネシアで売られるインドネシア製』には、大きな隔たりがあるように思う。

 インドネシアで暮らしていくうちに、将生が感じたことなのだが、縫製や品質が、やっぱり日本で売られている物のほうが高いように思えるのだ。


「襟首がすぐに伸びなかったり、服の細かなラインがきれいだったり、あとは縫製とか、やっぱり日本製はすごいなって感じるんですよ」


 タオル一つとっても、吸水性とか肌触りとか、日本製に慣れていることもあって、将生は日本製を推したくなる。


「もちろん、サイズも大切だと思うので、ケースバイケースですが」


 そう締めくくってから


「すみません、矢野さん。晴斗の着替えや服を選んでもらっても良いでしょうか。」


 とまみにお願いする。

 晴斗の服は、とりあえず持ってはきたものの、多ければ多いほど、将生にとっては安心だ。

 朝、オシッコをかけられた将生には、赤ちゃんがどれだけ服を汚し、たくさんの着替えが必要なのかをなんとなく肌で感じたのだ。


 まみは、


「良いですよ。夏は着替えがたくさんいりますもんね。それに、このくらいの子は、すぐおっきくなっちゃいますから、それこそ大きめの服を用意しましょう」


 と快諾した。そして、晴斗の着ている服の背中のタグを器用な手つきで見て、だいたいの服のサイズを確認し、赤ちゃん用品の売り場に行くと、パパパっと見繕う。


 将生は慌てて買い物カゴを取りに行くと、駆け足でまみのそばにくっ付き、まみが選んだ物をカゴに入れていく。


 一方のあゆみも、夏物の服が欲しかったので、いくつか見つけて試着に行く。瑛斗は、あゆみにくっついて嬉しそうに試着室に入っていくのだった。



 それぞれに満足のいく買い物をした後、お昼ご飯を食べることになった。


「イタリアンに中華、タイの麺類やパンケーキ、バーガーや、もちろんインドネシア料理の店もあるんですが…今日はまず、うどんにしませんか?」


 将生が提案したのは、日本でもよくあるうどんのチェーン店だ。


「このデパートに来ると、たいていそこに行くんです。この後いくらでもいろんな料理を食べる機会があると思うので、今日は僕のわがままを聞いてもらっても良いでしょうか?」


 うどんなら、瑛斗も慣れているだろうという気遣いはもちろんのこと、純粋に将生はうどんが食べたかった。インドネシアに来てしばらく経つと、もう珍しい食べ物より、食べ慣れた和食を好むようになる。

 今は、食べ慣れたうどん食べて、落ち着きたい、というのが将生の気持ちだ。


「せっかく伊藤さんといるのだから、美味しいインドネシア料理を紹介してもらおうと思っていたけれど、お腹空いてるし、子連れだし、うどんって聞いたら安心した。良いですね、行きましょう!」


とあゆみが真っ先に賛成する。

 まみにも反対する理由はなく、すんなりとお昼ご飯のメニューが決まった。


「ありがとうございます。では、案内しますね。」


 将生は嬉々として、2階にあるうどん屋さんへ向かう。2階は食事処が多く、本当に多種多様なお店が並んでいた。


 そして、たくさんお店がある中でも、日本のうどんチェーン店は人気らしく、かなりな列ができているのが見える。インドネシア人もたくさん並んでいるので、日本のうどんは好評なんだなぁ、とまみは少し誇らしい気持ちになった。


「矢野さん、晴斗が重いですよね。もし食べたい物が決まっているなら、先に座っていて下さい。買って持っていきますよ。」


 自分でお盆を持ちながら、店員に食べたい物を注文し、できたてを自分で運んだ後、会計をするスタイルのうどん屋だ。そうなると確かに晴斗を抱っこしているのは大変だ。


「ありがとうございます。では、あったかいきつねうどんと、梅のおにぎりをお願いします。」


 まみは厚意に甘えることにして、先に席をとってとくことにした。


 片側に3人が座れる、6人用のテーブル席を見つけたまみは、その端の席に座ってみた。座った途端、自分がとても疲れていたことに気付く。瑛斗が赤ちゃんの時には、よくこうして抱っこし続けていたけれど、思った以上に久しぶりの連続抱っこは、まみの身体にかなり負担をかけているらしい。


「体力落ちちゃったかな…」


 独り言をつぶやきながら、晴斗をぎゅっと抱きしめる。赤ちゃんの温かくて柔らかい感触に、まみは幸せな気持ちになる。疲れもふっとぶような気もする。


(女の子の方が柔らかいって聞くけれど、男の子がこれだけ柔らかいのだから、女の子はどんな感じなんだろう。)


 いつか、自分が女の子を産んだりしたら、その違いがわかるのだろうか。

 …まだまだ未知の話で、あゆみが次の子を産む方が早いかもしれない。



 晴斗のお昼ご飯として、ミルクを飲ませてあげた方が良いのかもしれないけれど、うどんだったら、細かくすれば、きっと食べられるだろう。

 ずっと抱っこのままだと疲れるのは、赤ちゃんも同じだろうか。少し抱っこ紐から出して、自由にさせてあげたいな、と思い、晴斗に話しかけながら抱っこ紐を外す。


「床に下ろしてあげることはできないけど、私の膝の上に座ってみてね〜」


 晴斗は、まみに向いていた方向を変えられ、テーブルに手をついた。まだポヨポヨしている柔らかな髪の毛は、後頭部が特に薄い。寝返りするからだろうか。まだ出会って2日しか経っていないけれど、赤ちゃんとは、誰にでも愛おしさを抱かせる生き物なのだろう。まみはすっかり虜になってしまっている。


(お母さんは入院中なんだっけ…。早く元気になって、この子を思い切り抱きしめたいだろうなぁ。)


 まだ知らぬ晴斗の母親。そして、将生の妻でもある女性。まみは、机の上に、危ない物がないか確認しつつ、どんな女性なのかと思いを馳せた。


 まだ本当に2日しか経っていないが、晴斗が愛されて育ってきた様子と、将生が一生懸命に育てていることはよくわかる。きっと素敵な両親であり、夫婦なのだろう。そのことに、少しだけ羨ましさを感じる。

 それは、運命の出会いで結ばれたことへの羨ましさなのか、可愛い赤ちゃんに恵まれたことへの羨ましさなのか、果ては将生に愛される女性への羨ましさなのか…自分でもよくわからない。


(でもきっと、晴斗くんのこの顔の可愛さからいって、奥さんも美人さんだよね)


 2日間でメロメロにされた、という贔屓の目を引いても、晴斗はとても可愛い赤ちゃんだと思う。目はクリクリしているし、鼻筋も通っている。そのへん?のオムツのCMに出てくる赤ちゃん達にも引けをとらないはずだ。将生だって、よくよく見れば整った顔をしているが、片親だけではこの可愛さは生まれてこないはずだ。(という、まみの勝手な偏見)きっと、とても美しい人が奥さんに違いない。

 そして、美しいだけでなく、きっと大人な女性なのだろう。(これも勝手な偏見)


 そう考えると、将生は大人で美しい女性が好みなのだろうか。


 その時、うどんを配膳される列に並ぶ、将生とあゆみと瑛斗の様子が目に入った。遠目に見て、その3人は『両親と子どものセット』以外の何者でもない。しかも、将生とあゆみは、とてもお似合いの仲良し夫婦に見えるのだ。

 まみにとって、あゆみはとても頼りになる、大人な女性の代表格と言っても過言ではない。周りにもよくシスコンだと言われるが、まみ本人はその自覚はない。


(えっ⁉︎ちょっと!おねーちゃん、大丈夫かな?)


 お互いに単身赴任な2人。あゆみが旦那さんと仲良しなことはよく知っているけれど、美人で大人な女性が好みの将生が、あゆみを好きになったりしないだろうか。そして、略奪愛の末、瑛斗と晴斗が泣き喚く事態に…


 そんな妄想をしていたまみを、もそもそテーブルに上りかけている晴斗が、現実に引き戻す。


(いけない!今は目の前の晴斗くんに集中しないと!)


 食事時は、赤ちゃんにとって危険がたくさんだ。しかも、衛生面に不安ののこるインドネシアにての外食ならなおさら。食事処での、不衛生さから、A型肝炎にかかることも多いそうだ。

 だが、実は5歳以下ならA型肝炎にかかっても、風邪の症状くらいで治るらしい。今の80代以上の高齢者は、小さい時に不衛生な環境で育ったため、A型肝炎の予防接種はしなくても、耐性がついているそうだ。現代の清潔すぎる日本の生活で育った日本人は、A型肝炎にかかると大変なので予防接種を受けてからアジア圏に行くことが多い。一応、瑛斗も予防接種は受けてきたが、清潔すぎる環境の日本は、長所も短所もあるようだ。


 なんでも口に入れたい時期の晴斗の目の前から、爪楊枝入れや醤油入れなどをよけつつ、先程浮かんだ妄想を思い出す。


(そんなことにならないように、私がなんとか阻止しなきゃ!)


 まみは、そんな誓いを胸に抱いていた。




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